学ぶ。つながる。発信する。美容の未来を創る場所。
女性が活躍するサロン
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
SAZAE
大阪府松原市
大阪府松原市内に4店舗を展開する「セッション」。社員数34名中、9名がママスタッフで、うち1名が現在第2子の育休中です。そのほとんどが在籍するママ美容師サロン「SAZAE」は、人時生産性が他店舗の約2倍!短い営業時間ながら、10年以上のベテランの技術と意欲が、その好成績を生み出しているようです。「スタッフが生涯美容師を続けられる職場づくりを進めていきたい」と語るオーナーの高嶋さんに、女性活躍の取り組みについて伺いました。
1取り組み
2015年5月に、ママ美容師だけで運営するサロン「SAZAE」をオープン。営業時間は9時30分~17時で、保育園の送り迎えに配慮した設定。休日は家族サービスできるように、日曜定休に。さらに自由シフトで月3日分の休みを保証している。現在は時短勤務のママ美容師6名と、パートのママアシスタント3名が在籍し、そのうち美容師1名が育休中。子どもの病気などによる急な休みで、責任者不在の状況を避けるため、店長という役職は設けていない。美容師は10年以上のベテランスタッフが揃っているので、「全員が責任者」という意識で店を回している。
7名の女性スタッフの結婚・出産が相次いだことがきっかけ。地元へ帰った1名以外はみんな産休後に復帰したが、高嶋さんには、その表情が楽しそうに見えなかったという。「早く帰ったり急に休んだりすることで、他のスタッフに気を使いますよね。その上、産休・育休中に指名のお客さまも減り、新規客は若手に遠慮して担当しづらい。モチベーションは下がっていく一方で、自分だったら辞めるだろうなと思いました」と高嶋さん。
そこでママ美容師だけのサロンをつくったところ、スタッフたちに笑顔が戻った。子育て中のスタッフ同士で、短い営業時間内に協力し合って仕事を進められる。新規のお客さまも担当できるので、接客数が増えて歩合の給料も上がっていく。「しかも人時生産性は3000円前後で、他店舗の倍近くあります。家族のために稼がなくてはいけない人たちだから、意欲が違う。2人目の産休に入るスタッフもいて、その時はその分、店の売上が下がります。でも復帰してくれればまた売上も戻るので、全く問題ありません」(高嶋さん)。
「近いうちに、ママ美容師サロンも一般的になっていくはず」と高嶋さん。周辺に同じ業態の店ができてもお客さまに選んでもらえるように、自分の得意分野をつくることをスタッフに勧めている
2取り組み
毎月の給料計算はスタッフ本人が行って、経理へ提出している。時短勤務の場合は、計算をわかりやすくするために時給制を採用。キャリアや会社への貢献度合いで時給の額は変わり、売上に応じた歩合給が追加される。この他、年2回の賞与もあり。
子どもを育てていくためには、お金が必要だ。「今はまだ子どもたちも小さいから、大した出費はないと思いますが、いずれ教育費が必要になってきます。その時のためにしっかり稼がないといけない。今の時代、一般企業の給料は何年勤めてもほとんど横ばいです。夫がそういう状況にある中、頑張れば頑張るほど稼げる歩合給は、ママ美容師たちのやりがいになっていると感じます」と高嶋さん。スタッフには「100万円を売上ると30万円くらいが所得になる。まずは売上100万円を目安に頑張れ」と伝えている。
「『SAZAE』で精力的に働いて、年収380万円を叶えたママ美容師もいます」と高嶋さん。現在第2子を授かり育休中だが、「もっと頑張らなきゃ」と意欲を燃やしているそう
3取り組み
本来なら年代の異なるスタッフが一緒の店舗で働き、ベテランから新人に、しつけや教育、会社の理念の共有などが行われるもの。しかし、ママ美容師サロンにベテランを集めたため、人材育成が難しくなってしまった。そこで新卒1、2年目のアシスタントスタッフを、各店へローテーションで配置することに。「SAZAE」にも常に1名の新人スタッフが、助っ人として配されている。
「ママ美容師たちには、『どうして産後もこの店で働き続けているのか』を新人に伝えてほしいと言っています。店が好きだからとか、お客さまが大切だからとか、それぞれの理由があるようですが。その理由や会社の歴史、店の今後の計画などの話を通して、ここで働き続けることの価値を伝えてほしい」と高嶋さん。「SAZAE」にアシスタントで入ったスタッフからは、ママ美容師が「かっこいい」という感想も出ている。子育てしながら生き生きと働く先輩美容師の姿を見て、「自分もこうなりたい」と、将来展望が開ける新人スタッフも多いはずだ。
「SAZAE」で活躍するママ美容師の吉村さん。「せっかくこの店をつくってもらったので、若いスタッフがいずれここで働きたいと思ってもらえるような店づくりをしていきたいです」
代表の高嶋潤一さん。奈良、大阪ミナミのサロンに勤務後、30歳で「セッション」を設立。2010年オープンのジュニアスタイリスト育成サロン、2015年のママ美容師サロンなど、現場の課題に合わせて、積極的に新たな取り組みに着手している。その傍らで、現在も金土日はハサミを持ち、長年のお客さまを迎える。
A. 「SAZAE」のキャパシティがいっぱいになったら、増やすことも考えたいです。
ママスタッフが増えて「SAZAE」がいっぱいになってしまったら、店を増やすのもいいかな、と思っています。でも新たにママ美容師を募集してまで、店舗を増やしたいとは思いません。ママ美容師サロンはあくまでも、うちに長く勤めてくれたスタッフたちの受け皿として考えているので。ブランクのある美容師ばかりの店では、高い金額を設定できませんし、安くすればそれが美容業界の価値低下につながりかねません。「SAZAE」にも休眠美容師だったママスタッフが3名いますが、全員パートでアシスタント業務を担当してもらっています。うちでハサミを持つ美容師は、企業理念を理解している生え抜きでなければ。とはいえ、「SAZAE」にはまだ席数で1.5倍のキャパシティがあるので、当面は増やさずにやっていけそうです。
A. 次はママスタッフ以外の、ベテラン美容師たちの労働環境を変えていきたいです。
うちには結婚していない30代以上の女性スタッフや40歳を超えた男性スタッフもいます。この年代の美容師たちの労働環境をよくすることが、これからの課題です。若いスタッフと一緒に22時近くまで働くのは、やはり体力的にきついと思うので。短い時間でがっつり稼げるように考えていきたい。今スタッフたちに提案しているのは、30代以上の独身美容師と40代以上の男性美容師だけのサロンです。ベテランによるマンツーマンの接客で価格を上げて、営業時間は9時~18時くらいと短めにする。18時過ぎに帰ることができれば、プライベートも充実させられるし、長く美容師を続けていけるのではないでしょうか。上の世代がそうやって元気に働けていれば、若手も未来に希望が持てますよね。スタッフたちが生涯美容師を続けられる会社を、これからも目指していきたいです。
Salon Data
新規会員登録を頂くと、メルマガで最新記事や人気記事のお知らせをお届けします。また、セミナー・イベントの申し込みや、動画によるセミナーの視聴も無料で可能になります。