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第3章製品開発、そして美容家としての使命

「製品開発は美容師の新たな収入源のためでもある。
これを資金源に、世界の美容の発展につなげたい。」

柳本さんのヘアケアへのこだわりをつめた、オリジナルのシャンプー、トリートメントが間もなく完成するそうですね。

今年(2017年)の夏~秋には発売できそうです。アシスタント時代から「究極のヘアケア製品を作りたい」という想いがあり、実際に開発に着手してからここまで来るのにも2年半かかりました。僕は肌がとても弱いんですが、ホホバオイルを使うととても調子がよく、助けられていたんですね。それで「僕のように敏感肌の方も安心して使えて、髪質改善にもいい、ホホバオイルをメインにしたシャンプーを作りたい」とずっと考えてきたんです。

でも僕が考えるくらいの高い比率でホホバオイルを配合するのは技術的に難しく、なかなか開発できずにいて。そんなとき、オイルを高配合する技術で特許を取得した工場があると知り合いに教わり、実際に動き出すことができたんです。

2年半もかかっているとは大変ですね。

だいたいの成分が決まっているようなOEM(製造を発注した相手先のブランドで販売される製品を製造すること)なら楽でしょうが、これは成分や配合比率もイチから開発しています。配合比率も0.1%単位で変えて、できた試作品を試して…と何百回となく繰り返していたら、時間がかかってしまって。工場の人にも「普通は試作するといっても4~5回くらいだよ」とすごい嫌がられまして(笑)。通常は試作品を作ってもらうのに料金はかからないんですが、これは有料でやってもらうことに。だから試作品を作るほど開発費がかさんでいます。

こだわりがすごいですね。

単にお金儲けのためだったら妥協していたと思います。でも僕の目的は「究極のヘアケア製品を作ること」であり、「美をもって世界を救うこと」ですから。そのためには妥協できません。

「究極」を目指すなら、ボトルもガラス製が素敵だなと思ってしまったんですよね。ところが、「これがいい」と選んだボトルに合うポンプがなくて。ボトルのサイズに合うものは1プッシュで出る量が少なくて、それでも仕方ないかな…とも思ったんですが、やはり妥協できない。ポンプを最初から開発するよりはまだ費用的にかからないということで、型枠からおこしてオリジナルのガラスボトルを作りました。

どんどん開発費が…。売価も高くなりそうです。

「究極のヘアケア製品なんだから、価格も高くて当然だ」なんて当初は考えていて、2~3万円くらいと思っていました。でも、使ってもらえなきゃ意味がないですからね。ホホバオイル自体の原価も高いのですが、いまは7500円くらいに設定するつもりです。安いシャンプーでは製造原価率は1%くらいと言われていますが、これは60%くらいになっています。

シャンプー、トリートメントのほかに「香料」を5タイプ用意しているとか。

シャンプー自体は無香料で作っておいて、その日の気分で香料を選べて、加える量で香りの強さも変えられるようにしたんです。どのシャンプーもたいてい香りは1種類しか用意されていないけど、それっておかしいと前から思っていて。香りは人によって好みがわかれるものですから、成分はよくても香りが苦手ということもありますよね。それにずっと同じ香りじゃ飽きてしまう…、だったら「気分で選べるようにしよう」と思ったんです。

シャンプーは「Lily」のサロン専売品になるのでしょうか。

とにかく多くの人に使ってもらいたい。なので、「Lily」で販売するほかに他社のサロンと、ネットも販売経路として用意します。ただ、せっかく他社の美容師さんがお客さまにシャンプーを紹介してくれても、次回からお客さまがネットで購入したら美容師さんにとってメリットがなくなるという問題が起きますよね。でもお客さまの利便性を考えると、ネット販売も用意したい。

そのジレンマの解決策を今回のネット販売には導入します。それは他社の美容師さんを通じてこの商品を知ったお客さまがネットから購入した際、その紹介者である美容師に対してバックマージンがあるという仕組みです。初回にLily以外の美容師のAさんから購入したお客さまが2回目以降はネットを利用したとしても、購入するたびにAさんにバックが入るということ。これなら美容師さんはネットをライバル視しなくていいし、お客さまはネットから便利に買えるし、双方ともにメリットがあるでしょう。

それはおもしろい試みですね。

そもそも、この製品開発自体もスタッフから出資を募って進めました。それもサロンワーク以外の収入源にしてもらいたいとの想いがあるからです。美容師の収入アップというと、これまでは独立するのが一般的。でもそれではサロンが増える一方ですし、体を壊して働けなくなったらどうにもならない。それ以外の道をつくりたいと思ったんです。

ヘアケア製品の販売のめどがついた現在、次の目標は?

まずはこのヘアケア製品を成功させること。間もなく発売になるシャンプーに続いて、女性用の薄毛専用製品の開発も去年から始めていますし、今後は縮毛矯正剤やくせ毛が落ち着くようなヘアケア製品も作れたらと思っています。そしてヘアケア製品の事業が成功したら、それを資金にして新たな夢にトライしたい。

店舗展開でしょうか。

店舗展開って普通ですよね。僕らは「Lily」1店舗でいいかな。日本にはすでに、女性がきれいになる手段があふれかえっていますしね。僕が夢に思い描いているのは海外進出です。海外というのは欧米ではなく、アジアです。以前、訪問したバリのようにまだ美容事情が発展途上にある国で、現地の人たちが抱える悩みを解決するのが願いです。

アジアのある国では近年、ペットを飼うのがブームだそう。それほどお金を娯楽に使える余裕が出てきたということですよね。そうした国はこれから美容に対する需要も伸びるでしょうし、僕が手伝えることもあるはずです。

サロンを出すのか教育的なものがいいのか、具体的な部分は固めていません。いずれにせよ日本人美容師を送り込むのではなく、現地の人たちだけで自立してやっていける仕組みを考えたい。それこそが本当に、現地の人たちのためになるから。そして「美をもって世界を救う」という理念を、もっともっと形にしていきたいですね。

  • 間もなく発売予定のオリジナル製品。シャンプー、トリートメントのほかに香料5種類を用意。この香料の裏コンセプトは「エロい女性」。いくつになってもドキドキしたい、きれいでいたいと考える女性たちに向けて「男性が思わず抱きしめたくなる香り」を調合した

  • 一時的・表面的なものではなく美しさが継続するように、髪質から改善していくのが柳本流。美しい「素髪」に個々の髪質にあったカットやパーマを施すことで、お客さまが自分でも再現できるヘアスタイルが完成

いただいた柳本さんの名刺にはサロン名がなく、「美容家」とだけありました。

「美をもって世界を救う」

それは、サロンという枠を飛び越えて。
お客さまだけでなく美容師も。日本だけでなく世界中の人に。
誰かの人生をより美しく、より豊かなものにしたいという決意。
いまどきのイケメンという風貌からは想像がつかなかったほどに、
話を聞けば聞くほど職人気質でひたすらド根性でやってきた柳本さん。
現在32歳、これからがますます楽しみです。

「Lily」には、驚くことに看板もない。柳本さんはカット27,000円、改善トリートメント21,600円、縮毛矯正54,000円という高単価にもかかわらず、リピーターのお客さまがあとを絶たない

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