美容の未来のために、学びと調査・研究を

美容サロン経営を学ぶならホットペッパービューティーアカデミー

2

伝え方どうこうではなく、
自分の使命に立ち返る。

伝え方どうこうではなく、自分の使命に立ち返る。

千葉

先ほどの「成長とは自分との戦い」という考え方は、貴著にあった「いまを一所懸命に生きれば次の課題が見えてくる」という言葉にもつながりますね。ジャパネットはまさにその考え方通り、次々と新しいチャレンジをして成長してきた企業だと思います。ただ、うまくいっていると次の一歩が踏み出せない企業も多いですよね。

髙田

失敗したらどうしよう、と考えるからチャレンジできないのかな?僕もうまくいかないことはありましたが、これまで失敗、苦労したことというのは一つもありません。いくら考えても本当に思いつかない。これは自信過剰なわけではなく、チャレンジするなら「いくらがんばってもうまくいかないことがあって当然」だと思っているから。それは失敗じゃないんですよ。
問題は、そのがんばることを続けられるかどうか。1年後、5年後、20年後、続けていられたら必ず花開きますよ。それを信じてやり続けることが大事。そうして続けて積み上げていけば、次にやるべきことも見えてきます。
だからチャレンジした結果がどうあれ、悔やむ必要はないんですよ。一所懸命やったものは失敗じゃない。その中に、得るものは必ずありますから。

千葉

しかし、うまくいかないと途中で気持ちが折れて、続けられなくなってしまう人も多いと思います。

髙田

それはね、一つの目標にこだわっているからですよ。5回、10回、ずーっとうまくいかないなぁと思いつつやり続けて、目標を変えないからダメなんです。これはもったいない。目標自体が間違っているかもしれませんからね。僕は以前、「目標を持たない経営学」なんて講演もしました。経営者の方からすると「目標がないなんて!」と思うでしょうが、僕は目標というのは絶対なものではなく、変えていっていいんだということを伝えたいんです。
目標を持つことは大事ですよ。でも10代で思ったことと、30代の考えが同じわけではないですよね。経験によって考えは変わりますし、周辺環境だって変わります。だから目標も変わるべきものなんですよ。

千葉

髙田さんの伝える力を実感した例として、2004年の顧客情報流出事件での謝罪会見が浮かびます。本来であればイメージダウンになりかねない事態ですが、会見によって逆に信頼アップに結び付いたまれな例だと思います。心の底から謝罪している気持ち、真摯な対応が、テレビの画面越しにも伝わってきました。

髙田

いや、あれはほめられたものではないです。情報流出という落ち度がこちらにあったわけですから。でもあのときは伝え方どうこうではなく、「企業とは何のためにあるのか」という原点に立ち返って判断しました。
ちょうどテレビショッピング10周年。いつもより商品をたくさん揃えて、タレントさんもいっぱい呼んで番組を制作して、放送枠を何枠も押さえていました。でもとにかく全部中止して、問題解決に取り組もうという決断はすぐにできました。結局、2カ月ほど販売自粛が続いたんじゃないかな。でも「売上がなくなって困ったぞ」という考えが浮かんだのは、しばらくたってから。問題がわかったときは、このまま販売を続けるなんて選択肢はありえませんでした。

千葉

東日本大震災のときの対応(※)にも表れていると思いますが、髙田さんは「企業とは何のためにある」とお考えでしょうか。

※2011年の東日本大震災発生後、ジャパネットたかたでは通常のテレビショッピングを取りやめ、代わりにすべての売上を義援金とするテレビショッピングを放送。結果として1時間で7000万円以上の売上になり、全額を義援金として送った。これとは別に、ジャパネットたかたとしても5億円の義援金を寄付している

髙田

企業とは、人のため、社会のために貢献し、人の幸せに寄与するためにあるものです。だから震災時の対応も、企業のミッション、使命として当然のこと。ただそれだけなんですよ。
これを読んでくださっている理容室、美容室、ネイル、エステ、リラクゼーションサロンで働くみなさんにも、ミッションがあるでしょう?たとえば、人をきれいにするということでしょうか。女性を美しく輝かせ、男性は活力ある姿にする。そして人に生きるエネルギーを与える、素晴らしいですよね。そうしたミッションを突き詰めていけば、髪や体を整える以外にやるべきことが見えてきて、仕事が広がっていくのではないでしょうか。

千葉

素敵なメッセージをありがとうございます。最後に、ジャパネットたかたの経営から退かれた現在、髙田さんが力を入れていることは?

髙田

やはり社長を務めるJリーグチーム「V・ファーレン長崎」を立て直すこと。サッカーを通して長崎を元気にして、ひいては日本を元気にしたい。美容サロンに行ってきれいになるのと同じように、サッカー場で観戦することも次の日のエネルギーになります。そんな空間をつくることがサッカーの使命であり、そのためには勝つことも必要です。勝つために何をしていけばいいのか、ということを日々考えています。
いまはJ2のチームですが、J1に昇格できたら浦和や鹿島のチームも長崎に来てくれるんですよ。そうしたらサッカー場もお客さんでいっぱいになって、長崎の人たちも盛りあがって元気になるでしょう。そんな想像をすると、すごく楽しみですよね。

千葉

僕も小学校からサッカーをやっているサッカーファンなので、髙田さんの手腕にとても期待しています。

髙田

そう?じゃあ僕もキーパーとして、試合でがんばろうかな(笑)。

現在ジャパネットは髙田氏の長男・旭人氏が社長を継いでいる。明氏のリーダーシップに支えられたトップダウン経営から「組織力の強化」に舵を切り、業績も好調。2016年12月期の連結売上高は過去最高を更新した。明氏の引退後、魅力的なMCを大幅に増員したことも戦略の一つ(写真は自社スタジオでのテレビ通販収録の様子)

2017年1月に出版された髙田さんの著書『伝えることから始めよう』(東洋経済新報社)。自身の半生を振り返りつつ、ジャパネットでの最後の1年、社員に伝えてきたことのエッセンスが詰まっている

EDITORIAL NOTE
終始にこやかに話す髙田さんが、インタビュー中、一度だけ厳しい表情を見せました。
「通信販売は、お客さまが目の前にいませんよね。」と聞いた私に、
「質問自体が間違っています。見えないけれど、お客さまはいるんです。」とピシャリ。

商品をとことん熟知し、それを求めているお客さまと結びつける。
買ってもらうことがゴールなのではなく、その先にある、お客さまの幸せを想像する。
これこそが、「ジャパネットたかた」が急成長した理由でしょう。
そしてカリスマ創業者が退陣した今なお、発展し続けている。
事業継承を成功に導いた根幹に、髙田さんの「伝え方」があったことは明白です。

ホットペッパービューティーアカデミー アカデミー長 千葉智之

12
異業種インタビューの記事一覧へ

おすすめの記事

注目の動画

連載記事ARTICLE

  • 新着
  • ランキング

受付中のセミナーSEMINAR

動画ランキングMOVIE

ホットペッパービューティーアカデミーに
会員登録をして、
美容サロン経営に役立つ動画
を見よう!