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女性が活躍するサロン

女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.58産後復帰ゼロから10年間でママ18名に。
週1日勤務も可能な「スペシャリスト制度」とは?

kakimoto arms 六本木ヒルズ店

日本で初めてヘアカラー専門のカラーリストを置くなど、各分野のスペシャリストを養成することで上質なサービスを提供する「kakimoto arms」。2003年オープンの「六本木ヒルズ店」は、都会の中心にありながら木を基調とした癒しの空間が魅力のサロンです。40名余りのスタッフのうち、現在ママスタッフが4名在籍。最先端の流行発信地で無理なく働き続けられる鍵は、枠を設けない会社の柔軟な対応にあるようです。社員のキャリアサポートを務める人事部長の白石麻利子さんに聞きました。

1取り組み

ママスタッフ個々の状況に合わせて働き方を設定。
正社員のままで週1日勤務もOK。

どんな取り組み?

 女性スタッフの妊娠がわかった時点で、産休・育休を取る期間や、職場復帰後の働き方について、スタッフと人事部がミーティング。会社側が枠を設けることなく、それぞれの事情に合わせて個別に対応している。たとえば出産後は産休だけ取って復帰したり、逆に1年以上休むスタッフもいるなどケースバイケース。復帰後の働き方も、フルタイムか時短勤務か、時短であれば何時から何時までにするか、お休みはどうするかなど、本人の希望を優先して決定する。さらに「短時間正社員」にも対応。現在「子どもの預け先が見つかるまで」という条件で、正社員のまま週2日や週1日限定で働いているママもいる。

背景とメリットは?

 ほんの10年前まで、出産を経て職場復帰する女性技術者はいなかった。前例がなかったこともあるが、体力面から、復帰後の働き方に対する不安も大きかった。また、東京都は保育園の待機児童が多いため、希望通りに子どもを預けられないケースも少なくない。そこでどんな事情のスタッフも無理なく仕事を続けられるよう、個別に勤務体制をつくることに。勤務時間が短くてもパート雇用しないのは社員の希望でもあり、会社としてもできるだけ良い条件で長く働いてほしいから。ベテランのママタッフには多くのお客さまがついていて、短時間でもしっかり稼げるため、夫の扶養に入ることを希望する人もいないという。
 7〜8年前から実際に運用を始めた結果、それまで実績ゼロだったのが、現在までに社員390名(約6割が女性)のうち18名が産休を取って仕事に復帰している。

この春、技術者として初めて育児をしながらフルタイム勤務へ復帰したカラーリストの高原紀子さん(中央)。「人事担当として、とてもうれしいニュースでした」(白石さん)

この春、技術者として初めて育児をしながらフルタイム勤務へ復帰したカラーリストの高原紀子さん(中央)。「人事担当として、とてもうれしいニュースでした」(白石さん)

取り組み

スペシャリスト制度により、ひとりの顧客をチームで担当。
ママスタッフの不在はレセプショニストがフォロー。

どんな取り組み?

「kakimoto arms」の特徴の一つとして「スタイリスト」「カラーリスト」「ネイリスト」「レセプショニスト」などと各分野でのスペシャリストを養成し、業務を分担していることがある。それぞれの持ち場で能力を集中的に発揮することで、技術のクオリティと、顧客満足度を高めるのが狙いだ。
 ひとりのお客さまを各専門のスペシャリスト達で担当することにより、ママスタッフが急に休んでも臨機応変に穴を埋めることができる。また、レセプショニストはスタッフのスケジュールを常に把握しているので、予約を別日へ振り替えたり、代わりの技術者を提案するなど適切に対応することができる。

メリットは?

 サロンのクオリティ向上を目的とした仕組みだが、結果的にママスタッフが安心して仕事ができる環境をつくっている。子どもが小さいうちは体調不良による急な欠勤や早退は避けられないが、たとえそうなってもお客さまへかける迷惑が最低限に抑えられる。さらに女性スタッフが育休・産休で長期の休みに入る場合も、専任のレセプショニストがその間の対応をしっかりお客さまに提案するので、引き継ぎがスムーズ。このシステムにより、単純に技術者の産休・育休で失客するケースはほとんどないという。

「もし予定外のことが起きても、お客さまに極力不安を与えないよう対応することができます」(白石さん)

「もし予定外のことが起きても、お客さまに極力不安を与えないよう対応することができます」(白石さん)

3取り組み

女性を積極的に管理職へ。分け隔てのない人事で
全員がイキイキと働ける風土をつくる。

どんな取り組み?

 伝統的に「女性が元気」と言われてきた社風。人事面でも男性・女性を問わず要職へ登用しているので、女性社員にとってもさまざまな形でのキャリアアップが可能になっている。たとえば「kakimoto arms」の技術者の顔ともいえる、カラーリストのトップはママスタッフ。さらに人事労務、人材開発の各責任者、レセプションマネジャーなども女性。今は何人かが産休に入ったため減ってしまったが、最近までは店長の半数が女性だった。

狙いは?

 適性があれば平等にチャンスが与えられる環境は、スタッフの一人ひとりの自主性を重んじ、多様な働き方を自然に受け入れる空気をつくっていく。たとえ勤務時間が短いママスタッフでも、そのために肩身の狭い思いをすることは決してないという。「ですからママになっても、現場で一歩引くような意識になることがないんです」と白石さん。会社として可能な限り労働環境を整えてサポートする代わりに、現場に立てば一技術者として特別扱いはしない。逆にそのことが、ママスタッフのモチベーションを高く保つことにつながっている。

できるだけオフィスを飛び出し、各店舗に足を運んでスタッフの働きぶりを見に行くという白石さん。相談事に対応した後のフォローも大切な仕事だ

できるだけオフィスを飛び出し、各店舗に足を運んでスタッフの働きぶりを見に行くという白石さん。相談事に対応した後のフォローも大切な仕事だ

人事部長インタビュー

現役のスタイリストでもある白石さん。今も週に2日青山店のフロアに立ちながら、400名近い社員の労務の責任者を務めている

Q. ここ数年、女性支援の取り組みに本格的に力を入れた理由は何ですか?

A. 30代・40代以上の経験豊富なスタッフに会社の成長を担ってほしいからです。

 以前は結婚して子どもができると20代でも退社していく技術者が多かったんです。そして30代半ばにもなると、多くの人が独立していきました。でもキャリアのある技術者は多くの良いお客さまを抱えていますし、将来はマネジメントでも力を発揮してほしい。社員の平均年齢が上がっていく中、多様な働き方を提案して、会社に残ってキャリアを積むスタイルを確立する必要がありました。今は30代以上の技術者が多く残ってくれるようになり、着実に成果が上がっています。ただ同時に若いスタッフにも積極的にチャレンジさせることで、若いお客さまの定着も進めていかなければいけませんね。

Q. 今後、ママスタッフ支援のために取り組みたい課題は何ですか?

A. 子どもの進学で新しいステージに移行したときのサポートです。

 現在産休明けで復帰しているスタッフは、元々経験豊富な技術者が多いので、お客さまもスムーズに戻り順調に働けているようです。ただ、将来彼女たちの子どもが小学校に入ると、保育園に預けていたときよりも時間の制約が大きくなります。多くのスタッフにとって、フルタイム勤務への復帰はまだ先になるでしょう。むしろ今までより働ける時間が減ってしまい、モチベーションが下がってしまうかもしれない。そこで仕事を諦めることなく、いろいろな形でキャリアを積める状況を、会社としても今から準備していかなければと思っています。

Salon Data

kakimoto arms 六本木ヒルズ店【カキモトアームズ 六本木ヒルズ店】

アクセス
東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩5分
創業年
1976年
店舗数
12店舗
設備
セット面18 ※六本木ヒルズ店
スタッフ数
42名(スタイリスト18名、カラーリスト8名、ネイリスト4名、アシスタント7名、レセプショニスト5名)※六本木ヒルズ店
URL
http://www.kakimoto-arms.com/
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