女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.59「女性が長く働く」のは特別じゃない。
ママだけの店舗まで作った想いとは?

Plus 稲野店
兵庫県伊丹市
兵庫・大阪を中心に、「CREER」「ALVIVE」の2ブランドのサロンを展開するワンエイジャパン。オーナー・蓑輪さんは「働きたい女性がずっと仕事を続けるのはあたりまえ」と語り、創業当初からママスタイリストたちとともに歩んできました。現在約70名のスタッフ中ママが8名。一昨年にはママスタイリストだけの「Plus 稲野店」をオープン。男女問わず人を大切にする経営方針についてうかがいました。
1取り組み
17:00までの勤務、日曜休日など、ママが働きやすい勤務時間。
どんな取り組み?
子どもが保育園や学校に通園・就学中のママスタッフは、勤務時間を17:00まで、休日を日曜・祝日にできるなど、ライフスタイルに合わせて勤務時間・曜日を選べる。フルタイムのスタッフに比べて時短勤務となるが、社保などの待遇は同じ正社員のままで、勤務時間によって給与を変える体系にしている。
なぜそうした?メリットは?
21年前に蓑輪さんが独立・開業したとき、一緒に開業した奥さまは第一子の妊娠中だった。奥さまはいまも「CREER」でスタイリストとして活躍している。つまり、創業当初からママスタイリストがいる会社で、奥さまが「働くママ」のロールモデルなのだ。どうすればスタッフが長く働けるかを常に考え実行しているので、本人が続けたいと希望した場合ママになって辞めることはほとんどないという。

奥さまとともに開業し、大学3年生の長女を筆頭に、ご夫婦で3人の子育てをしながら経営してきたオーナーの蓑輪さん
2取り組み
ママスタイリストだけのサロン「Plus 稲野店」をオープン。
どんな取り組み?
2014年には、ママスタイリストだけが勤務する店舗「Plus 稲野店」をオープンさせた。店舗の営業時間が9:30〜17:00、定休日が日曜・祝日、予約制でなく、その日に出社しているスタイリストが順次担当するしくみだ。指名できないかわりに、ひとりのお客さまは分業せず、最初から最後までひとりのスタイリストが施術を行う。
背景とメリットは?
取り組み1のように、全店舗でママスタイリストが働きやすい環境をつくっていても、他のスタッフに比べて早帰りすることに「ママスタッフたちが気兼ねしているらしい」と蓑輪さんの耳に入った。それならば、「全員がママスタイリストの店舗をつくれば彼女たちが気を使わずに働ける」と考えたそう。指名や予約ができない店舗となるため、繁華街ではなく郊外に地域密着店と位置づけてオープン。
この店舗ではフルタイムで勤務しても、保育園の子どもの送り迎えが無理なくできる。また、子どもの急な発熱で早退することがあっても、予約制ではないのでお客さまに迷惑をかけずに済む。ママスタイリストたち心の負担なく働けて好評だ。

「Plus 稲野店」の笠さん(右)と樋口さん(左)。笠さんは創業当初から、樋口さんは16年前からのメンバー
3取り組み
年に2回の合宿ミーティングで、「スタッフがどんな人生を歩みたいか」を把握。
どんな取り組み?
ワンエイジャパンではブランドごとに年に2回、全スタッフが集まって合宿ミーティングを行っている。合宿のためにスタッフたちは、「10年後の夢」を設定し、それをかなえるために、5年後、3年後、1年後には何をどうしているかを具体的に考えていく。合宿でそれを全員の前で発表し、それぞれのライフプランの共有と、スタッフ間の懇親を図っている。
きっかけとメリットは?
美容業界は人ありきのため、蓑輪さんは創業時からスタッフを大事に、入社したスタッフにはできるだけ長く続けてもらいたいと考えていた。「人はしあわせになるために働いている」という考え方で、会社の中では「美容師という仕事を通じてどうしあわせになるか」を社員に考えてもらいたかったという。社員の目標や夢を把握することで、それを実現するために経営者として実行すべきことがわかる。「女性スタッフが結婚すれば、いずれは子どもを産むことはすぐに想像できます。そのとき彼女たちがどうしたいのかも、この合宿を通して知ることができます。また、他のスタッフもママたちの事情がわかって、協力しやすくなります」(蓑輪さん)。

メーカーさんからのアドバイスで始めた合宿ミーティング。全員が仕事に対する決意表明をする。スタッフたちの気持ちを知る大事な社内行事だ
オーナーインタビュー

オーナー・蓑輪篤さん。複数店でのサロン勤務を経て、30歳のときに独立。ご自身も3児のパパ
- Q. 「一人ひとりに合わせた働き方」はスタッフには最良ですが、経営としては大変ではありませんか?
-
A. 「会社はファミリーだ」と言っているのですから、スタッフの事情をくむのは当然です。
スタッフたちは縁があって入社してきたのだから、彼らが「ずっと続けていきたい」と思える会社でありたいと思っています。だから例えば「独立するならグループ店として」とか、「美容学校は出たけれどスタイリストは向いてない」と思うなら、「事務系の仕事やまつげエクステを担当してもらう」とか、職種での働き方も選べるようにしています。子どもができれば時間の融通がきくようにしてあげたい。スタッフとその家族を大事にしていきたいです。
- Q. 女性スタッフたちととても意思疎通ができているように見えますが、そのコツは?
-
A. 女性が「補いたい」と力を発揮したくなるように、弱みも見せています。
独立前に複数のサロン勤務の経験がありますが、僕のまわりにはいつもママスタイリストの方々がいました。だから女性がずっとスタイリストを続けることは僕にとっては最初から自然なことでした。もともと女性スタッフとコミュニケーションをとるのも苦手ではないのですが、やはり女性の気持ちは言ってくれないと男性の僕には察することはできません。しかし、女性スタッフは私たち経営者がしっかりと話を聞き、理解しあえると徹底的に信頼してくれ、とても頼りになる存在です。僕は、特に女性スタッフにはかっこつけずに弱いところを見せるし、何でも自分から相談します。そうすると女性は「しっかり支えてあげないと」とか、「私が補ってあげなければ!」と考えてくれるようです。
Salon Data
Plus 稲野店【プリュス イナノテン】
- アクセス
- 阪急伊丹線「稲野駅」から徒歩3分
- 創業年
- 1995年
- 店舗数
- 11店舗(グループ全体)
- 設備
- 4席(Plus 稲野店)
- スタッフ数
- 4名(Plus 稲野店)