新人のときに「学んでおけばよかった」のは、経営スキル⁉サロンスタッフの意外な本音とは?
「美容サロンで働くなら、まずは技術が大事」
そう思っている方も多いかもしれません。たしかに、現場に出たばかりの新人スタッフにとって、技術や接客スキルは欠かせない学びです。
でも、実はそれだけではありません。
「美容サロン就業実態調査2025」では、意外にも「経営の知識」や「売上・数字への意識」を“もっと早く学んでおきたかった”という声が多くあがったのです。
今回は、美容師としての“入り口”でどんな課題や気づきがあるのか、そしてエステやネイルなども含め美容サロンスタッフの新人時代にどんな学びが求められているのかを、最新の調査データをもとにわかりやすく解説していきます。
(ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子)
目次
資格は取るけれど、美容師にならない若者が増加?
美容師勤務【未経験率】(免許のみ保有)
※「過去に美容師として働いた経験がない人」÷「美容師免許保有者」
まずは、美容師のトピックから見ていきましょう。近年、国家資格である美容師免許を取得しながらも、美容師としてのキャリアをスタートしない若者が増加傾向にあります。2021年には18.7%だった「勤務未経験者(免許を持ちながら美容師として働いたことがない人)」は、2025年には21.4%に達しています。
これは、美容専門学校の入学者数は回復傾向にあるという文部科学省の統計(「学校基本調査」)とも対照的な動きです。資格を取る目的が「美容師になること」から、「将来の選択肢の一つ」へと変化してきているのかもしれません。
一方、この中には、もしかすると美容室に応募し、面接を受けたものの「思っていたのと違う」と感じて、美容師になることをやめた若者もいるのかもしれません。美容サロンへの入社後の働き方・待遇への不安もあるのではと考えられます。
だからこそ、採用時においても「なぜ美容師になりたいのか」「どんな将来像を描いているのか」といった動機を深く掘り下げて聞くとともに、入社前からの情報共有や期待値のすり合わせをすることが、ますます重要になってきているでしょう。
初職の就業期間、“3年未満”が依然として多数派
【美容師】初職就業期間は?
美容師免許保有者かつ学校卒業後の初職が美容師の人(n=4,806、単一回答)
美容師免許を持ち、初職として美容師になった人のうち、初職の就業期間が「3年未満」の割合は38.8%と、依然として高い水準にあります。
しかし「初職」というのは、単なるスタート地点ではありません。技術だけではなく、社会人としての基礎力を身につける大切な期間でもあり、その後のキャリア形成にも大きく影響を与えるフェーズです。
この時期に「続けられる環境」「学べる文化」が整っているかどうかが、離職率の改善だけでなく、長く活躍できるスタッフの育成にもつながります。
初職をやめた理由:男女で異なる傾向
【男性美容師】初職を辞めた/転職した理由は?
美容師免許保有者かつ学校卒業後の初職が美容師の人(n=1,320、複数回答)
男性美容師の初職を辞めた理由の1位は「給与への不満(44.0%)」で、他の項目を大きく引き離しています。収入の安定性や昇給の見通しが不透明だと、将来に不安を感じやすい傾向があるようです。
2位は「職場の雰囲気・テイストが合わなかった」(19.5%)、3位は「上司との考え方の違い」(13.2%)。同率で「別の場所でキャリアを積みたかった」もランクインしており、環境や人間関係、成長の見通しに対する不満が、離職の引き金になっていることがわかります。
【女性美容師】初職を辞めた/転職した理由は?
美容師免許保有者かつ学校卒業後の初職が美容師の人(n=3,401、複数回答)
一方、女性美容師の離職理由1位も「給与への不満」(22.6%)ですが、2位に「結婚・妊娠・出産のため」(20.2%)が入っている点が特徴的です。ライフイベントにより初職を辞める人が多いのは、働き続けられる制度や職場環境が整っていないことの表れともいえます。
3位以下には「上司との意見の不一致」(15.3%)、「体調を崩してしまった」(15.2%)、「拘束時間に対する不満」(13.9%)と、働き方そのものへの課題が並びます。
男女で離職理由に違いはあるものの、共通して見えてくるのは「働きやすさ」や「将来の見通し」への不安です。給与面の透明性やキャリアパスの提示に加え、柔軟な働き方やライフステージへの配慮が、定着率向上のカギになるといえそうです。
しかし、せっかく国家資格を持ちながらも、美容師にならない、または美容師として働くことを早期に辞めてしまう、そんな若者が増えている…では、どんな「未来」があれば、若者は美容業界に希望を持ち続けることができるのでしょうか?次にご紹介するのは、新人時代を振り返って「学んでよかった」と思えるスキルについてです。