3割が直近1年で転職。「仕事とプライベートの両立」が新たなカギに?
働き方改革の追い風を受け、美容業界では離職率が低下する一方で、転職市場の拡大という新たな動きも見え始めています。特に直近1年では3割が転職を経験し、働くうえで重視される価値観も大きく変化しています。
ホットペッパービューティーアカデミーの「美容サロン就業実態調査2025年」をもとに、いま採用の現場で求められる「選ばれる条件」とは何か?離職率や転職理由の変化からひも解きます。
(ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子)
目次
美容師の離職率、5年で最も低下。その背景は?
美容師離職率
美容師として一度就職したが離職した人の割合
(美容師免許保有者かつ美容師経験者のうち、現在美容師ではない人)
美容師の離職率は、ここ数年ほぼ48%前後で推移していましたが、2025年調査では45.7%と、5年間で最も低い水準となりました。
背景には、サロンによる福利厚生の充実や早期スタイリストデビュー制度の導入、若手美容師のキャリア設計支援など、働き方改革の取り組みが進んできたことがあると考えられます。また結婚や妊娠、育児、介護等で業界を離れられている「休眠美容師」の方々の復職の増加もうかがえます。
「休日日数」と「プライベートとの両立」志向が高まる
【美容師】働くにあたって重要なこと(TOP7)
現役の美容師、複数回答
美容師が働くうえで重視する項目として、「休日日数」(44.5%)、「仕事とプライベートの両立」(42.0%)がいずれも2年連続で増加しています。特に「休日日数」は前年比で+3.2ポイントの上昇となりました。
従来の「給与」や「立地」といった条件に加え、ライフスタイル重視の働き方が求められていることがわかります。
柔軟なシフト設計や週休2日制の導入などが、いまや採用・定着のカギになっているでしょう。
職種別にみる離職率の違いと、求められるキャリア支援
離職率(美容師以外)
その職業に一度就職したが、現在その職種で働いていない人の割合
美容師以外の「離職率」も見ていきましょう。美容師(45.7%)、理容師(37.7%)と比べると、それ以外の美容職種の離職率は高めですが、国家資格取得による入口の狭さも影響しているでしょう。
職種別の時系列推移を見ると、リラクゼーションセラピストでは、ここ5年で最も低い水準に。エステティシャンやまつげエクステスタッフは大きな変動なく、ほぼ横ばい傾向です
一方、理容師とネイリストは離職率が上昇傾向にあります。
理容師は37.1%と前年より離職率が微増。離職理由の上位からは、「給与・収入に関する不満」や「労働時間への不満」が目立ちました。(「美容サロン就業実態調査2025」P113)
ネイリストは67.9%と前年から離職率が3.8ポイント上昇し、特に30代・40代の離職率の上昇が顕著な結果に。
40代までのネイリストの離職率を抜粋
離職理由には、「給与不満」に加え、「キャリアの将来性への不安」や「成長機会の不足」といった声が多く見られました(「美容サロン就業実態調査2025」P113)
こうした状況をふまえ、近年はネイリストの間で「昇進」や「評価・昇給制度」を働くにあたって重視するニーズが高まっています。キャリアの見通しが持てるような制度設計が、離職抑制のカギとなりそうです。
現役のネイリスト、複数回答(選択肢抜粋)