物価高はサロンの利用にどう影響?
~「美容センサス2025年上期」解説①~

ホットペッパービューティーアカデミー最大規模の調査「美容センサス2025年上期」を公開しました!美容センサスは2011年以降、15年間にわたって男女の美容サロンの利用動向を毎年調査しています。

2025年上期の「美容センサス」では、物価高が続く中でも、美容室をはじめとした美容サロンの市場の成長が明らかに。価格上昇でも通い続けるお客さまがいるのはなぜか。前編では、美容室・アイビューティー・リラクゼーションを中心に、お客さまの動きとサロン経営へのヒントを探ります。

(ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子)

【全体概況】美容サロン市場は2兆6820億円に拡大

出典:「美容センサス2025年上期」(ホットペッパービューティーアカデミー)
※理容室は2025年より女性にも聴取を開始。「理容室」「サロン全体」の前年差は2025年女性分(178億円)を除く

美容センサスのデータ(1年以内のサロン利用率×1回あたり利用金額平均×年間利用回数平均×人口)によって、ホットペッパービューティーアカデミーでは消費者ベースの美容サロン市場規模を毎年算出しています。

2025年の美容サロン市場全体の規模は2兆6820億円(前年比+146億円)と、前年に続き緩やかながらも成長を続けています。
ジャンル別では、美容室(1兆3884億円)が前年差+342億円、アイビューティーサロン(1384億円)が前年差+205億円を筆頭に市場が拡大する一方で、エステ(3360億円)は前年より588億円のマイナスと苦戦しており明暗分かれる結果に。

サロン業界全体としては、“価値あるサービス”への選択的な消費行動が広がっていると考えます。

【美容室】客単価は過去5年で最高額に

出典:「美容センサス2025年上期<美容室編>」(ホットペッパービューティーアカデミー)
※1年以内の美容室利用者が対象

2025年、美容室の市場規模は1兆3884億円と、過去5年で最大に到達。前年比+2.5%と、安定した成長が続いています。注目すべきは1回あたりの利用金額の上昇で、女性は7,668円で過去5年での最高額を更新しました。

1回あたりの利用金額上昇の背景には、物価高の影響ももちろんありますが、それだけで説明することはできません。例えば、コロナ禍前後から定着した「ハイトーンカラー」や「髪質改善」といった高価格帯メニューの需要が引き続き高いことも影響しているでしょう。

出典:「美容センサス2025年上期<美容室編>」(ホットペッパービューティーアカデミー)
※1年以内の美容室利用者が対象

そして、注目したいのは「縮毛矯正」。利用率が年々上昇し、2025年には17.3%と過去最高を記録するなど、ニーズの高まりが数字にも表れています。

出典:「美容センサス2025年上期<美容室編>」(ホットペッパービューティーアカデミー)
※1年以内の美容室利用者が対象

美容室での「まつげメニュー」の利用率も年々上昇しており、髪以外の領域とのクロスセル(セット提案)が広がっています。こうした複合メニューの提案が、1回あたり利用金額の引き上げに寄与していることがうかがえます。

出典:「美容センサス2025年上期<美容室編>」(ホットペッパービューティーアカデミー)
※1年以内の美容室利用者が対象

また男性の1回あたり利用金額も年々上昇しており、1回あたり利用金額は4,879円と、過去最高額を更新しています。近年では「パーマ」や「眉カット」といったメニューの利用率が伸びていることも背景にあります。美容室が提供するサービスが、性のあり方を問わず広がっている証といえるでしょう。

このような単価上昇の傾向は、単なる物価上昇に伴うものではなく、“必要と感じる施術にはしっかり投資する”という意識の広がりを反映していると考えます。