イノベーターが
見ている未来
vol.44
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
株式会社Number9/WOODSTOCK
代表取締役
高嶋英憲さん (age.39)
美容室に加え、ネイル、まつげエクステ…と事業を拡大していくケースは珍しくない。しかし北海道・札幌に美容室2店舗を構えるNumber9 グループは、その範ちゅうに収まらない。保育園や鍼灸整骨院、イタリア料理店にパンケーキ専門店…と美容業にとどまらない多店舗展開を成功させている。美容師だった高嶋さんが多角経営に取り組む想いや、今後の構想に迫りたい。
第1章北海道で美容師としてスタート
「経営のノウハウを学べるなら
収入が減ってもいいと思った。」
今回は多角経営を成功させている高嶋さんからお話をうかがいます。高嶋さんは異業種から美容業に参入されたわけではなく、美容師さんがスタートなんですよね。
北海道の美容学校を卒業してから美容室で1年間ほど働いて、当時の先輩が独立開業したサロンに移って3年半ほど勤めました。その後に面貸しサロンで約1年間、そして26歳のときに自分の美容室をオープンした、という流れです。
僕は小学生のころから「社長になりたい」という夢を持ってたんです。だけど頭がよくないし(笑)、アートやデザインの分野に興味があったから手始めに美容師をやろう、それから会社を始めよう、と思っていました。
そのお話ぶりだと美容師に対するこだわりがあまりなさそうと誤解されそうですが、実際はヘアコンテストでも優勝するほど技術力も高いですよね。
コンテストは20代前半のとき、勤めていたサロンのオーナーから「出てみなよ」と言われたのがきっかけです。最初は興味がなかったんですよ。たとえ優勝しても、独立したときに特に役に立たないように思えて。でもやってもいないくせに「役に立たない」と言うのもなんかカッコ悪いですよね。それでチャレンジすることに。最初に参加した札幌の大会で優勝して、同じ年に全国大会でも優勝できて。
でもその後に挑戦したモデル部門は全然ダメで、自分のサロンを出した年にやっと優勝できました。コンテストにそんなにこだわりはないとはいえ、どうせならと優勝を目指しました。1位以外は人の記憶に残らないですからね。
やるからには、とことんやり抜くタイプなんですね。
勤めていたときは月間売上が100万円以上になっても、月に1万枚くらいのチラシ配りを続けていました。僕は1時間あれば500枚は配れる。自分で配れば「この地域からは、こういうお客さんが来てくれるんだな」ってわかります。そのころはホットペッパービューティーもネットはなく紙媒体しかなかったから、チラシ配りはデータ収集としても役立ちましたね。
店では朝、僕がカギを開けて掃除をして、自分のお客さまのほかにオーナーのお客さまの手伝いもして、チラシ配ったり後輩の教育をしたり、教育マニュアルを作ったり…。手が空いたら常に何かをするタイプです。
すごいモチベーションですね!
将来的に自分の店を出したいと思っていたから、自分がオーナーになったつもりで働いていました。先輩が独立して始めた店についていったのも、オープニングスタッフを経験してみたかったから。最初に勤めた店では、当時アシスタントだったのに「副店長になって」と言われたりして給料もよかったので、先輩の店に移ると5万円くらい給料は下がることになりました。でも月5万円、3年間で180万円を手放したとしても、それでサロン経営のノウハウが現場で勉強できるなら安いものじゃないですか。
先輩のサロンで約3年半勤めた後、フリーランスとして面貸しサロンで働いたんですよね。
札幌では面貸しサロンで働くスタイルが当時から珍しくありませんでした。面貸しサロンには大手サロン出身者も多かったけど、一緒に働いてみて思ったのは、技術力も売上も、仕事への考え方も「案外こんなものなんだな」ってこと。薬剤の知識もあまりなかったり。当初はもう一度どこかのサロンに勤めようかなとも考えていたけど、これなら勤める必要はないかなって感じました。
ホットペッパービューティーも、面貸しサロンのメンバーの中では僕が最初に始めました。ほかの人は、広告の出費は個人だとキツイって考えてるみたいで。でもやればお客さまは来るし、それがたとえ月5人だとしても絶対リピートさせるし、そのお客さまの紹介から広まっていくというのが僕の考え方。まず集客をしないと売上はどんどん下がっていくのに、10年後を考えたらどうするつもりなんだろう?と不思議でした。
その後、サロンをオープンすることにしたのは、開業資金が貯まったからですか?
店を出すために動き出したときの自己資金は、200万円くらいしかありませんでした。お金が貯まったからというよりも、このまま続けるのはよくないなって思ったから。面貸しサロンって自由に働けるから、なかには堕落してしまう人もいる。でも「自分にとって甘い環境の自由」って、ちょっと違うなと感じて。僕にとっての目標は企業をつくることであり、面貸しサロンは通過点に過ぎないんだと改めて考えたので、その次の日から出店に向けて動き始めました。
開業資金は国金(国民生活金融公庫)から借りて、足りない分は親にも貸してもらって。動き始めてから4カ月で美容室「WOODSTOCK」を札幌にオープンしました。
美容室をハブに、保育園・パンケーキ専門店も。
多角経営だからできる次世代型・美容ビジネス。