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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.60

実例編介護ネイル/エステで施設契約15件!SNS活用法とは?

IT系の大手企業の会社員から独立して、介護施設向けにネイル・メイク・エステの訪問サービスを行う「介護美容YN」を設立した箱石志保さん。SNSを効果的に利用し、時代の流れを読んだ戦略で、営業開始からわずか4年で15件と契約施設を広げています。さらに、オンラインでSNSや介護美容の講師を務めるなど、さまざまなことに果敢に挑戦する箱石さんのお仕事に対する考えについてお話を伺いました。

介護美容YN

代表:
箱石志保さん
訪問美容開始:
2020年
訪問施設数:
15施設
施設訪問頻度:
1カ月に1〜3回
訪問個人顧客数:
約10名
個人顧客訪問頻度:
単発
訪問スタッフ:
5名
価格:
施設:ネイル・メイク・エステ・ハンドトリートメント・フットトリートメントから選ぶ30分コースで3,300円〜、個人宅:ネイル・メイク・ハンド&フットトリートメントから選ぶ60分コースで8,800円〜

Q

介護美容の世界に飛び込んだきっかけは?

A

SNSの広告で「介護美容」を知り、天職と思ったことです。

将来は祖父の会社を継ぐと思っていた学生時代。

祖父が経営していた工場を母が引き継いでいた環境で育ちました。だから、学生時代は自分も将来はその会社を継ぐのだろうと漠然と考え、国立大学の大学院で経営について学び、MBA (経営学修士)の資格を取得しました。しかし、会社は親戚が継ぐことになったため、私はIT系の大手企業に就職。その頃は特にやりたいことがあったわけではなく、東京都内の安定した会社で働ければいいくらいの考えでした。でも、組織で働く会社員は自分には合わないと思い始めたのです。そんなとき祖父母が認知症になり、実家で母がひとりで介護をしていたので、私も介護休職を取って実家と行き来するなど、介護が自分ごとになっていました。

SNSで「介護美容」の学校の広告を見て、すぐ学び始めました。

母が経営者として働いていたため、子どものころは祖父母に育ててもらいました。大好きな祖父母が要介護になったことで、当時の私は「介護」についてよく検索していたのだと思います。ある日、SNSの広告で「介護美容」の学校の広告が流れてきました。そのときに、「これが私の天職だ!」と直感で思ったのです。祖父母の友人の高齢者の方々とも交流があり、高齢者の方とコミュニケーションを取ることが得意でしたし、美容はもともと大好き。「好きな高齢者の方と美容を掛け合わせたことが仕事にできるなんて最高!」と。すぐにその学校の資料を取り寄せて説明会に行き、介護美容を学び始めました。週1日、1年間通ってメイク、ネイル、エステをトータルで学ぶ講座です。当初は元の会社に勤務しながら学校に通おうと思っていたのですが、諸事情で退職し、学校に通いながら介護施設で介護士としてパートで働くことにしました。その間に、介護職員初任者研修の資格も取得しました。

  • 大学院でMBAを取得したという、美容業界としては異例の経歴をもつ箱石さん

Q

美容は未経験ながら、最初から独立して始めた理由は?

A

もともと経営にも興味があったからです。

飛び込み、SNSなどコロナ禍にタネをまいた営業が結果に結びついた!

実は介護美容の学校に通い始めた2020年に、コロナ禍がやってきました。そのため介護施設には外部の人間がなかなか入れず、営業が思うように進まなかったのも事実です。それでも、コロナ期はタネまきの時期だと考え、飛び込みで施設に伺ってチラシを置かせてもらうことを続けました。施設は100件以上は行ったと思います。チラシを置いた施設から、コロナ禍が落ち着いたころに2年越しで連絡をいただくこともあり、飛び込みから5〜6件は契約に結びつきました。
また、営業で力を入れたのはInstagram。確実に効果を上げるために、SNSについて学ぶ有料オンラインサロンでInstagramのノウハウを習得。そこで学んだ工夫をして、フォロワー数がある程度増えた段階で、Instagramをやっている介護施設にDMで営業しました。最初は無料体験をさせてもらい契約に結びつくことが多かったです。さらに、Instagramを見てテレビ局から取材依頼をいただき、数回出演したこともあります。ただ、テレビをご覧になった方からの問い合わせは、施設よりも介護美容を職業にしてみたいという人々からの方が多かったですね。

  • 営業に結びついたり介護美容を志す人とのつながりになっている箱石さんのInstagram。実のおばあさまの日常を紹介する動画が人気コンテンツだそう

やりたかった「ビジネス」を「介護美容」で実現。

介護施設でのパート勤務と並行して介護美容の営業をしていたため、介護美容の比率が高くなった段階でパートは辞め、「介護美容YN」として独立起業しました。もともと大学院で経営を学んでいたこともあり、いつかは自分でビジネスをやってみたいという思いもあったのです。そのビジネスが介護美容という天職に結びついたという感じです。元の会社を辞めてこの道を目指したとき、夫にも母にも「安定した企業の仕事を捨てるのか」と大反対されました。母自身も経営者でしたので、その大変さがわかっていたから愛情で反対していたんですね。でも、どうしてもやりたかったので、事業計画書を作成して母にプレゼンして説得しました。夫は、私が「一度決めたら周りが何を言っても聞かない性格」と諦めてくれました(笑)。今ではふたりとも応援してくれています。

  • ネイル、メイクの施術のときに施設訪問で持参する道具。エステのときはスキンケアグッズも追加

  • 訪問範囲は東京23区内。左の道具をトートバッグに入れて携帯している

Q

必要性が低く捉えられがちなネイルやエステで、契約が多く取れている秘訣は?

A

美容以外にもメンタルケアや職員の方の負担軽減の効果があることを訴求。

ご家族や職員の方のメリットをわかりやすく伝える。

営業で工夫したポイントのひとつは、チラシをご家族向けの内容にしたことです。介護美容を受けるか決定するのはご家族です。施設の職員の方がご家族に説明をしなくても、チラシを見せればメリットがわかるようにしました。また、ネイルやエステは、ヘアカットのように必ず必要という美容ではないため、リラックスすることや肌と肌が触れあうことの大切さなどを訴求しています。キレイになることで高齢者の方の活力を生むことだけでなく、施術中に一対一のコミュニケーションをとることでお元気になっていただけることも大事ですね。施設では利用者さまの爪切りが職員の方の負担になっていることが多いのですが、ネイルの際には爪のカットもしますので職員の方々の負担軽減にもつながっています。

  • 営業用のチラシ。介護美容のメリットがわかりやすくまとめられている

営業は力まず、粘り強く。

介護施設に対する営業は、力みすぎると自分も疲れますし、施設側も「営業されている」と身構えてしまいがちです。私は「孫が利用者の祖父母に会いに来た」という雰囲気で気楽に伺うようにしていました。すると職員の方もお話を聞いてくださることが多かったです。一度断られても、施設長が変わると方針が変わるケースも少なくありません。施設のホームページを常にチェックして施設長の名前が変わっていないかを確認していました。

予想以上の喜びと大変さの両方を実感。

介護美容を実際に始めてみて、利用者さまたちに心から喜んでいただけるやりがいだけでなく、高齢者の方々とのコミュニケーションを私自身が楽しませてもらっています。やり始める前以上に、この仕事の必要性や重要性を実感しています。自分が心から必要な仕事だと思うからこそ、それが営業先の施設にも伝わるのかもしれません。逆に予想以上に大変なことももちろんあります。例えば、爪が汚れている利用者さまがいるなど、衛生面で驚くことも少なくありません。でも介護施設で入浴や排泄介助の経験があるから、臨機応変に対応できるのだと思います。

  • 寝たきりの方でもネイルをすると笑顔になったり、メイクでキレイになることで利用者の方々の生活の質が上がっていくと実感

Q

今後はどのように展開していきたいですか?

A

仲間と連携して、介護美容をもっと広めていきたいです。

美容を求めるすべての人のニーズに応えられるよう、果敢にチャレンジしていきたい!

実は私はInstagramで介護美容のPRと営業をしてきた体験をきっかけに、SNSスクールの業務委託でSNS講師の仕事もしています。また、Instagramのフォロワーの方々からの依頼で、介護美容についての有料オンラインサロンもやっていました。オンラインサロンの受講者は全国に100人以上いるのですが、現在、私が契約している施設に受講者の方を派遣しています。契約施設が増えてひとりでは対応しきれなくなったときに、受講者の方々に手伝ってもらい始めたのがきっかけです。オンラインサロンではマンツーマンの面談もやっていたことから、人柄もわかっていて安心だったからです。今後は、受講者の方々の仕事を増やすために私自身は営業活動にシフトしたり、利用者さまのニーズに合わせたサービスを考えたりするなど、経営に重心を置く予定です。現在の契約施設は有料老人ホームが中心ですが、外出できないけれど美容を必要としている方はたくさんいます。高齢者の方だけでなく、障がい者の方々など、美容を求めるすべての人のもとへ行けるよう、さまざまなアプローチで介護美容を広めていくことが目標です。

  • 「介護美容を広めるために自分にできることは何でもやりたい!」と挑戦することを楽しんでいる箱石さん

箱石さんからひとこと

訪問美容をやってみたいと考えているなら、介護施設に営業に行かないと始まりません。知識や情報をインプットすることも大事ですが、インプットしたりセミナーに行くことで「やったつもり」になってしまうのは、努力の方向性が違っていると思います。インプットはそこそこでよいので、まずは施設に行ってみることだと思います。

Salon Data

介護美容YN

創業年
2022年
URL
https://www.kaigobiyou.com
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