イノベーターが
見ている未来
vol.18
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
OCEAN TOKYO
代表取締役
中村トメ吉さん (age.32 ) 高木琢也さん (age.31)
10代・20代を中心とした若い男性から絶大な支持を集める「OCEAN TOKYO」。2013年、中村さんと高木さんが20代で立ち上げ、またたく間に人気・実力ともトップクラスのメンズサロンへと駆け上がり、現在都内に3店舗を展開。若い男性の心をガッチリつかんで離さない魅力とは?インタビューを通して見えてきたのは、華やかな見た目とは裏腹に、ふたりの若き代表の心に燃える、熱く、まっすぐな想いでした。
高木琢也さん●1985年、千葉県生まれ。都内の美容専門学校を卒業後、有名ヘアサロンに就職。スタイリスト2年目で月間売上450万円を達成するなど、順調に人気スタイリストへ。勤務7年目に退職し、中村さんと共に2013年に「OCEAN TOKYO」を立ち上げる。2015年には月間売上1200万円をたたき出し、スタイリストとしても話題を集めた。
http://www.oceantokyo.com/
第1章ライバルから共同経営者へ
「自分ひとりじゃムリでも、コイツとふたりなら。
そう思えたから一緒に店を立ち上げました。」
今回は共同経営者である代表おふたりからお話をうかがいます。まず美容師を目指したきっかけは?高木さんはお母さまが美容師とのことですが、影響はありましたか。
高木●母親の影響もありましたが、昔からなりたかったわけじゃないんですよね。なんか僕はスムーズにいかない人生というか、高校も大学も第一志望は受からず、公務員試験も落ちちゃって。「じゃあ、何すっかな…」と思ったときに思い浮かんだのが美容師。学生時代はサッカーばかりで悪さもしてきたので、どうせなら「生んでよかった」と親から思われる職業になろうと思ったんです。もともとヘアスタイルにこだわったり、おしゃれするのは好きだし、モテそうかなって(笑)。でも親は僕が器用じゃないと知っていたし、もっと安全パイな人生を望んでいたので最初は反対されましたけどね。
そして都内のヘアサロンに勤めた、と。中村さんと高木さんは同じサロンだったわけじゃないんですよね。
中村●一瞬だけ同じサロンにいたんですよ。タク(=高木さん)が入ってすぐ辞めたのでほぼ一緒には働いてないんですけど。僕はその前にも2店舗別の店に勤めて「なんか違うな…」と辞めていて、タクとニアミスしたのは3店舗目。結局そこでも業務に関係ないと思ってしまうような細かい決まりや、「それってお客さんのためになるの?」とか。自分のやりたい方向性とは違う点が気になって…。反発して2カ月くらいで辞めたというか、クビになったみたいなもんかな?今思うと、自分がクソ生意気なだけでしたね(笑)。
お店では交流がなかったのに、どのようにして知り合ったんですか?
高木●店は違っても同じ原宿エリアのサロンに勤めていたので、街頭でモデルハントしてると見かけることがよくあって。そのときにトメ(=中村さん)から「おつかれ~!」程度の声をかけられたのがきっかけかな?ファッション雑誌でトメのことは知っていたから「うわっ、あの人だ!」って最初は驚きましたよ。
中村●そこからコイツ、「いま売上いくらっスか?」って毎回ストレートに聞いてくるようになって。こっちが彼女といる時まで(笑)。
高木●雑誌でトメの作品をかっこいいなって見てて。でも、やっぱり売上が大事だから「トメに数字で勝とう!」と。それで月に250万円と聞いたら、自分は350万円を目指してがんばろうと思った。でも売上を伸ばせても、雑誌では勝てないモヤモヤした気持ちは少しあって。そのころの自分は下っ端だから、なかなか雑誌の仕事をまわしてもらえなかったんです。
高木さんは中村さんをライバル視していたんですね。中村さんにとって高木さんは?
中村●雑誌の作品もそうだけど、一番印象に残っているのは、タクも自分もお互いの店のリーダーとして参加したヘアショー。そのころ店内には同じ目線で戦う相手がいない状況だったけど、タクを見て「一緒に切磋琢磨できるヤツかも」と思ったんですよね。もともと美容師仲間にあんまり興味がないというか、同世代でかっこいいと思えるヤツがいなかったんです。そんななか「おもしろいな」と感じたのがタクでした。
高木●そのヘアショーで、負けたほうが焼肉をおごるって話になっていたんですよ。僕が勝ったんだけど約束が果たされないまま1年くらい過ぎたとき、ふと思い出して。「今日空いてたらおごって」と連絡して。それで初めて一緒にメシを食いに行ったのが、じっくりマジメな話をした最初ですね。出会ってからは6年くらい経っていました。
そのときは、どんな話を?
高木●トメはいつも元気でしたね。店も違うから上下関係が気にならないし、スッゲー話しやすくて。唯一グチをいえる相手でした。焼肉に行ったときは、もっとも自分の想いを話せた感じ。当時いた店ではお客さんに対してタメ口なんて絶対にNGだったけど「美容室って緊張する場所じゃないはずだし、お客さんにとって何でも話せる相手になりたい」って疑問に思っていること、変えたいことなんかを話しました。
中村●それを聞いて、前から気になる相手だったけど「考え方、やってきたこと、目指している方向が一緒なんだな」って思った。美容師同士ではそれまで食事に行くこともなかったんだけど、焼肉のあともタクとはメシに行くようになりました。
高木●その焼肉に行った日、トメがTwitterで「あいつはこんなに、お客さんのことを考えている」って僕のことをイイヤツみたいにつぶやいて。一応ふたりはライバルみたいなもんだし、これを見たトメのお客さんが僕のほうに来ちゃうかもしれないのに素直に人をほめるから、「トメってバカなのかな?」って驚いた(笑)。でも、そのマジメな文章を見て「ただチャラチャラしているだけの人じゃないんだな」って、見方が変わった。
中村●まぁ、思わずつぶやいちゃうくらい「身近にこんなに認められるヤツがいたんだ!」って、そのとき強烈に思ったわけです。それまでは「美容師でおもしろいヤツ」くらいに思っていたから。
お互いを認め合っていたんですね。その頃から一緒に店をやることを意識したんですか?
中村●一緒にやるために店を辞めたというよりも、その前から辞めようとは思っていたんです。28歳で独立するビジョンがあって、26歳くらいから勉強してお金も貯めていました。そんなときにタクも店を辞めるって話を知ったから、タイミングが合った感じですね。
高木●そのころ、自分は店のために一生懸命やっているつもりだけれど、やりたいことができない。そう感じてしまって、トメにそのうっぷんを話したことがありました。結局、この先どうするか決めないまま店を辞めたんですけど、トメと話してるうちに一緒にやる流れに。最初は共同経営なんて危なそうだし、周りからも反対された。「でも自分だけじゃムリでも、このふたりならできるんじゃね?」って。それなら一緒にやってみようとなりました。
中村●自分が店を辞めるとき、「一緒にやりたい」ってついてきてくれる後輩もいました。でも後輩にとっては僕が目標だから、後輩だけに囲まれていては僕自身を高めることにはならない。タクは自分が限界までがんばって出した売上の、さらに上を出している実績がある。どうせ新しい店を始めるなら、新しい世界を見てみたい。そんなところでもタクと一緒にやる魅力を感じていました。
たった3年で、全国から男子が集うカリスマサロンへ。
OCEAN TOKYOはなぜここまで、人々を熱狂させるのか?