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女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.83スタッフ150名中、7割がママ!
時短ママ店長も活躍できる環境づくりとは?

Ai-ney

愛知県

愛知県内の広域に20店舗を展開する、地域密着型サロン「Ai-ney」。最近5年で13店舗をオープンした急成長企業を支えるのは、全スタッフ150名中8割以上を占める女性スタッフ。しかも約7割の100名近くが、ママとして活躍しているというから驚きです。その理由は、週1日からパートで勤められる、働き方の多様性。さらに柔軟な時短制度や土日も休みが取りやすい環境など、社員一人ひとりに対応できる懐の深さにあります。スタッフが働きやすい職場環境をどう実現してるのか、取締役の入山益丈さんに聞きました。

1取り組み

すべての雇用形態で、勤務時間や休日について個別対応。社員が土日を休む契約をすることもできる。

どんな制度?

スタッフ採用のときや産休から復帰するときは、各人の希望に合わせて正社員、準社員、パートを選択。そのうえで、勤務時間や日数も個別に設定している。たとえば、正社員の休日は月6〜8日制で、週休2日にしたり土日を休むことも可能。準社員なら17:00までの勤務もOK。さらにパートには、日数や時間の制限がほぼない。たとえば「午前中3時間」や、「週1日」という働き方も可能だ。

なぜそうした?メリットは?

「Ai-ney」は5年前に本部オフィスを設立し、以来次々と店舗を新規オープン。急速に展開する中、積極的にスタッフを中途採用してきたが、多くが出産後に休職していたママスタイリストだ。多様な働き方を受け入れることで、彼女らの「美容の仕事がしたい」希望に応えられると同時に、経験を積んだ良い人材を活用できる。また、社員が出産したあとも職場復帰しやすい環境になる。ここ2〜3年は出産復帰するスタッフが多く、今も7名のスタッフが産休中。今年中に5名が復帰してくる予定だ。
加えて、こうした体制であれば社員も週末に休みが取りやすい。それによって、プライベートな時間を大切にできることが、社員の離職を防ぐことにもつながる。

「Ai-ney」では、前年に採用されたスタッフの「入社式」を毎年4月に開催。同時に優秀者の表彰式も行っている。このときだけは全員が集まり、ママスタッフは子連れで参加

「Ai-ney」では、前年に採用されたスタッフの「入社式」を毎年4月に開催。同時に優秀者の表彰式も行っている。このときだけは全員が集まり、ママスタッフは子連れで参加

2取り組み

基本的に指名制は取らず、サロン全体でお客さまに対応する。

どんな取り組み?

以前はスタッフの指名予約を優先するシステムだったが、数年前に変更。現在は基本的に指名制度を取らず、予約なしで来店していただけることを、ホームページやチラシに明記している。従って、お客さまの退店時に次回の予約を取ることもしていない。代わりに、新規顧客が使えるクーポンやリタッチ券などのツールを活用して、お客さまの再来店を促している。

なぜそうした?メリットは?

全スタッフの約7割が子育中のママで、多くがパート。もともと勤務時間が短い人も多いうえ、学校行事や子どもの病気で休むこともある。サロンを指名優先にすれば、予約に穴を空けることも考えられるので、ママスタッフにとってもプレッシャーが大きい。そこで「どうしてもこの方に」というお客さまのご指名だけを受けることにした。
「それでも店長クラスになると月に50〜100の指名はあります」(入山さん)というが、それ以外のスタッフは指名がほぼないため、急な休みも取りやすくなる。

3取り組み

人員不足はグループ店同士で助け合い。状況により営業時間の変更も。

どんな取り組み?

シフト編成がうまくいかなかったり、急な欠勤で人手が足りなくなった日は、他のグループ店からスタッフを派遣。互いに人を融通し合うしくみを作っている。豊橋、豊川、蒲郡など近隣エリアごとに店舗展開をしているので、スタッフも店舗間を移動しやすい。
また、全店年中無休・19:00まで営業が基本だが、努力しても十分なスタッフが確保できない時間や曜日がある。そのときは店ごとに営業時間の短縮を行い、お客さまに告知する。

なぜそうした?

「Ai-ney」は全店でママパート率が高いため、学校行事などで複数スタッフが同時に休む日もある。そうした一時的な人員不足に対応するために、店舗を越えてスタッフが協力しあう体制は欠かせない。
それでも、曜日や時間帯により人手が足りない店舗もある。特に大型店で人数が極端に少ない日ができると、ママ以外のスタッフの負担が重くなってしまう。そこでそのスタッフと相談のうえ、営業を1時間短縮したり、新たに定休日を設け、全員が無理なく働けるよう調整してる。

「お客さまありきの商売なので、営業時間の変更は容易ではありません。でも無理をして営業しても良い店づくりはできない。バランス感覚を大切にしています」(入山さん)

「お客さまありきの商売なので、営業時間の変更は容易ではありません。でも無理をして営業しても良い店づくりはできない。バランス感覚を大切にしています」(入山さん)

4取り組み

勤続年数、働き方に関係なく、適任者を幹部に登用。

どんな取り組み?

「Ai-ney」では正社員でなくても、さらに子育て中のママであっても、適任だと認められるスタッフは積極的に店長やマネージャーなどに登用している。現在、マネージャー職にはママが2名。また、17:00まで勤務する準社員として、店長を務めている女性もいる。彼女は、勤務時間は業務に集中し、夜の営業は他のスタッフに任せているという。

なぜそうした?

リーダーとしての資質は長い時間働けることや、美容の技術とは別の問題。本人の意欲を最も重視するのが会社の方針だ。適材適所の役職登用は、組織に活気を与える。また、子育て中で限られた時間しか働けないママスタッフも、ステップアップの道があることでモチベーションも上がる。
役職を与える際は本人と話し合い、納得のうえで、パートから準社員、正社員という雇用形態の見直しも随時行っている。「でも本人の希望、会社の判断、周りのスタッフの信頼の3つがそろえば、パートで役付きになれる可能性もゼロではありません」(入山さん)。

2児の母として入社し、エリアマネージャーにまで昇格した清原佳保里さん(右)。子どもの成長に伴い、パートから準社員、正社員とステップアップしてきた。

2児の母として入社し、エリアマネージャーにまで昇格した清原佳保里さん(右)。子どもの成長に伴い、パートから準社員、正社員とステップアップしてきた。

取締役インタビュー

他社で10年間のスタイリスト経験を積み、本部に入ってスーパーバイザーを務めてきた入山益丈さん。5年前に「Ai-ney」の社長にスカウトされて会社を移り、ブランド化戦略や労働環境の整備に取り組んできた

Q. パートだけでなく社員でも、働き方に幅を持たせている理由は何ですか?

A. 時代が変わる中、それぞれの希望する働き方を叶えたいからです。

「豊かになろう」という会社理念の下、スタッフにとって充実した環境を整えることを大事にしています。もともと地域でパートさんが頑張ってきたサロンなので、互いに協力しあう風土はありました。そこへ時代の変化と共にニーズが多様化した。時間や日数を自分で決めることができれば、働き続けられる美容師はたくさんいるんです。週に数日だけ働きたい人、高い給料が欲しい人、将来独立したい人もいる。さまざまな希望に対応するのは大変ですが、「従業員がどうしたら楽しく長く働き続けられるか」が社長の思いの芯になる部分です。ここがブレるような経営に走ることはないでしょうね。

Q. 働きやすい環境をつくるため、さらに取り組みたいことは何ですか?

A. 今よりもっと柔軟な雇用制度と、託児所づくりを実現したいです。

今はフルタイムの8割以上の勤務時間ないし日数があれば、準社員契約できます。将来的にはもっと広げて、週3日休んでも契約ができるようにしたい。本人が希望すれば、社員でありながら十分にプライベートな時間が持てるような雇用形態をつくりたいです。そのためには、いかにしてスタッフに負担をかけず生産性を上げていくかが課題ですね。
もっと取り組みたいのは、スタッフが子どもを預けられる託児施設づくり。実は、出産して子どもの預け先が見つからず、1年近く週1日のパートで勤めているスタッフもいます。そうしたケースがあると、困難はありますが少しでも早く実現したい思いが強くなります。

Salon Data

Ai-ney【アイニー】

アクセス
JR東海道本線蒲郡駅から徒歩20分 ※バロー蒲郡店
創業年
1988年
店舗数
20店舗 ※グループ全体
設備
セット面5席 ※バロー蒲郡店
スタッフ数
150名 ※グループ全体
URL
http://w-agroup.co.jp/index.html
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