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女性が活躍するサロン

女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.91新卒採用のみで中途採用はナシ。
だから作れた「ママを敬う風土」とは?

ZENKOグループ

東京都・神奈川県・千葉県

国内のサロンワークのみならず、パリやミラノなど世界的コレクションのバックステージでも名を馳せてきた美容室「ZENKO」。モードの現場での華やかな活躍を支えるのは、スタッフ思いの働きやすい待遇です。中途採用を一切しないという美容業界では非常に珍しい体制。生え抜きスタッフ同士の結束は強く、自然に助け合う風土の中で、ママスタッフもイキイキと活躍しています。70歳でなお現役美容師としてハサミを振るう、代表取締役の佐藤全弘さんに、環境づくりの秘訣をうかがいました。

1取り組み

ママも安心して働き続けられるよう、一般企業に負けない休暇や福利厚生を整える。

どんな取り組み?

 休暇は完全週休2日制で、入社後半年から年10日の有給休暇(以後勤務1年ごとに1日増し、最高20日)、正月休暇(1月1日・2日)、慶弔休暇や介護休暇制度もある。出産・育児休暇もすべて法定通りにでき、さらに住宅手当や家族手当も支給。トップスタイリスト以上のスタッフには、退職金制度を完備している。また労務士、弁護士と顧問契約し、面談を通じてスタッフ全員に紹介。勤務形態や仕事上の悩み、トラブルなどがあれば直接相談に行ける体制を整えている。

なぜそうした?メリットは?

 「美容室がサービス業だからという理由で、福利厚生に不備があったり、勤務体系が厳しくてもいいという風潮は間違っていると思います」と、代表の佐藤全弘さん。美容師が十分に稼げて、生涯働くことができる仕事にするために、当たり前のことをしたいという思いがある。
 美容業界の離職率の高さにはさまざまな理由があるが、スタッフが自身の将来に不安を抱くことがそのひとつだ。休暇や給与などの待遇が実際の労働内容にそぐわないと感じ、「このままでは続けられない」と離職する人も多い。福利厚生を整備して全体の労働環境を底上げすれば、女性スタッフが「将来結婚・出産しても仕事を続けやすい」と感じ、離職防止がのぞめる。現在、出産して復帰したママスタッフ3名がサロンで活躍し、産休・育休中のスタッフも3名いる。たとえば、子育て中のママスタッフが子どもの病気で急な休みを取ったときなどは、しっかり有給休暇として消化している。

「経営者は社員の人生を担う責任があります。その人が将来どう成長し、どんな人生を送るかも踏まえた体制づくりが必要です」(佐藤さん)

「経営者は社員の人生を担う責任があります。その人が将来どう成長し、どんな人生を送るかも踏まえた体制づくりが必要です」(佐藤さん)

2取り組み

産休・育休から復帰後も、正社員のままで時短勤務が可能に。

どんな取り組み?

 フルタイム社員は1日8時間の2〜3交代制勤務。一方、出産後に復帰したママスタッフは、保育園のお迎え時間などに合わせて16:00〜17:00ごろまでの時短勤務を選ぶことができる。その際、保険の加入や給与体系はフルタイム社員と同じまま、8時間に満たない分を早退扱いにして給与計算をしている。また、社内規定では土日に休みを取れないことになっているが、ママスタッフは火曜日の定休日に加えて土日のどちらかを休むことができる。

なぜそうした?メリットは?

 他のサロンでは出産後に時短勤務を選ぶと、雇用形態がパートに変わったり、給与が大きく下がったりすることも多い。それに対して「ZENKO」では、時短勤務のスタッフにも十分な給与と社会保障を継続するために、こうした方法を採っている。子育て中の長期にわたる早退が認められるので、ママスタッフは正社員として働きながら、安心して子どものお迎えもできる。また、保育園が休園する日曜日に休めれば、家族との時間も大切にできる。
 ただし夜間に行われるミーティングなどに参加できないため、もともと役職があった人は返上してもらうことになる。それでも役職手当がつかなくなるだけで、その他の待遇は出産前とまったく同じだ。

ふたりの子育てをしながら、吉祥寺店に10:00〜16:00で勤務する福村寛子さん(左)。子どもの成長に合わせて少しずつ働く時間を延ばしたいという

ふたりの子育てをしながら、吉祥寺店に10:00〜16:00で勤務する福村寛子さん(左)。子どもの成長に合わせて少しずつ働く時間を延ばしたいという

3取り組み

中途採用はせず、生え抜きの社員をしっかり育成。助け合いの風土を熟成させる。

どんな取り組み?

 「ZENKO」はスタッフの中途採用を一切せず、毎年30名ほどの新卒だけを採用。一から育てた生え抜きのスタッフのみで組織する体制だ。月1回のテストによる教育システムで、一つひとつの技術をしっかり学び、他のサロンより時間をかけてスタイリストを育成している。

なぜそうした?メリットは?

 「美容師は技術さえ身につければ、腕一本で独り立ちしやすい仕事。だからこそ“自分の力で育った”のではなく、“周りに育ててもらった”という感謝の気持ちが大切です。それが組織の基盤になり、会社の伝統をつくりあげていきます」と佐藤さん。新卒のスタッフだけを採用して一から育て上げることで愛社精神が育まれ、先輩と後輩の絆や仲間意識も強くなる。
 それは出産から復帰したママスタッフの働きやすさにも通じる。勤務時間が短くなったり、役職が外れたとしても、若手にとっては背中を追ってきた先輩であり、それまでの信頼関係は変わらない。時短勤務のママスタッフに技術を教わるために、自主的に朝練習をする若手スタッフも少なくないという。

今年2月に開催された「ZENKO」創業40周年記念のヘアショーで、ウエディングドレスのヘアアレンジを披露する佐藤全弘さん

今年2月に開催された「ZENKO」創業40周年記念のヘアショーで、ウエディングドレスのヘアアレンジを披露する佐藤全弘さん

華々しいヘアショーのフィナーレで、若いスタッフと共に。「スタッフが多方面で活躍しているのは、長い歴史があるからこそです」(佐藤さん)

華々しいヘアショーのフィナーレで、若いスタッフと共に。「スタッフが多方面で活躍しているのは、長い歴史があるからこそです」(佐藤さん)

代表取締役インタビュー

1976年に美容室「ZENKO」第1号店を吉祥寺にオープン。生え抜きのスタッフを定着させてグループを12店舗まで育て上げてきた佐藤全弘さん。サロンワークのかたわら、技術指導やメディアの撮影、ヘアショー、一流コレクションなどで日本はもとより海外にも進出。世界を舞台に活躍してきた

Q. 「女性美容師が長く働ける環境づくり」に力を入れる理由は?

A. お客さまと年が近いスタッフがいた方が、行き届いた接客ができるからです。

 基本的に美容の仕事は女性の方が適していると考えています。事細やかな気配りができますし、ヘッドスパや着付けでも、女性の手で行われた方がお客さまは心地よいのではないでしょうか。また美容師は長時間接客業ですから、お客さまとのコミュニケーションは大事です。相性が良いのは、美容師の年齢±10歳までといわれているので、高齢化に伴い美容師の年齢も上がらなければいけません。若手だけでは対応できないんです。開業した頃、女性は結婚すると会社を辞めるのが慣例になっていましたが、今は時代が変わりましたね。
 

Q. 70歳になられた今でも、サロンワークを続けている理由は?

A. 背中を見せることと、現場を知ることは大切だからです。

 今は月に5回、朝からクローズミーティングまでサロンにいます。今も指名のお客さまは増えていて、1日に15人くらい接客するんですよ!美容師でいることは幸せなこと。働く背中を見せることで、自ずと経営者の考え方がスタッフに反映されると思います。また、実際に現場に出ないと若い人の求めているものは分かりません。足りない設備はないか、労働条件はどうか、新人が不要な雑用をさせられていないか。そうしたことを経営者が知って初めて「この会社なら安心して働ける」という環境作りができるのではないでしょうか。そのようにして改善してきたことはたくさんあります。

Q. 働く環境をより良くするための今後の課題は?

A. 女性幹部を増やすことと、スタッフの評価の適正化です。

 店長をしていた女性の出産などで、現在はたまたま女性店長が不在なのです。やはり女性スタッフの心理が理解できる人が数人いたほうが助かりますし、組織としてバランスが良くなります。今後なるべく積極的に登用していきたいと考えています。
 もうひとつの課題は、年功序列と能力主義のバランスです。中途採用をしない会社なので、年功序列の良い面が機能しやすいのですが、能力面での評価もないと組織が活性化しません。でもあまり細かい評価表をつくっても、ジャッジが偏ります。たとえば「率先して床を掃く」「お客さまを案内する」という良い行動も、評価表にないと点数が付かないことになる。それは問題です。ここをクリアして、さらにスタッフの良さを引き出せるような評価基準を考えて行きたいと思っています。

Salon Data

ZENKO吉祥寺店【ゼンコー キチジョウジテン】

アクセス
JR吉祥寺駅から徒歩1分
創業年
1976年
店舗数
12店舗
設備
セット面9席
スタッフ数
11名(スタイリスト6名、アシスタント5名)
URL
http://www.zenko-hair.com
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