女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.529人のスタッフ全員が女性、5人がママ。
「女性だけ」である意外なメリット、そして工夫とは?
ヘアワークフラックス
茨城県水戸市
“傷んだ髪をきれいにすること”に情熱を傾けている「ヘアワークフラックス」。新しい技術、薬剤を導入する際も、自ら試して納得のいくものだけを提供。そんな硬派な方針が地元の女性から支持を得ています。現在、スタッフ全員が女性であることのメリットは?バランスはどうとっていったのかなど、オーナーの高橋さんに伺いました。
1取り組み
スタッフは全員女性。振り切ったことで多様化した「ロールモデル」
どんな取り組み?
現在のスタッフは全員女性。これは女性が増えることで、自然と女性の就職希望が集まるようになった結果だ。14年前のオープン当初から在籍するスタッフもいるなど、在籍年数の平均はおよそ9年と比較的長い。当然その間に「結婚→出産→復帰」を経験するスタッフも。そこで、社会保険を完備し、産休・育休制度、出産一時金制度などの福利厚生を充実させることで、働く女性にとってより安心できる環境を整備した。
メリットは?
女性が「結婚や出産・育児と並行して働けるか?」と不安になるのは、身近に参考としたいロールモデルが少ないからだ。
「その点、ここには女性スタッフが多い分、さまざまなパターンで働く女性たちがいて参考になります。出産後も正社員として働くスタッフもいれば、働ける時間だけ有効に使って稼ぎたいとパートを選択するスタッフもいて、選択は自由。個別に話し合い、状況に合わせて決めていますから、働き方はいくらでも選べる。だから産休前のあいさつはみんな決まって、”出産したら戻ってきます!”なんだよね(笑)」とオーナーの高橋さん。
2取り組み
子どもが理由の早退や遅刻で負担を感じないよう
パート勤務もできるだけ正社員と同等に扱う
どんな取り組み?
基本的にはパート勤務のスタッフも正社員と同じ扱いにしている。本来、時給計算であるパート勤務の場合も、急な子どもの用事で出勤時間に遅れた場合、賃金を差し引くことはしていない。子育て中に起こるアクシデントを負担ととらえず頑張って欲しい、という思いと一生懸命なスタッフのモチベーションを下げないためだ。遅刻、欠勤などの報告は受付のスタッフが一括してLINEで受け取り、各関係者にすばやく発信するシステムなので、混乱はほとんどない。
他のスタッフの反応は?
とはいえ、スタッフへの負担は少なくない。それでも文句も出ず、万全の協力体制でフォローできるのは、「全員が女性スタッフで、多くのスタッフが既婚者で子どもがいるからでは」と高橋さん。誰にでも、〇〇さんのパターンはいずれ自分も経験すること、という意識がある。
「不思議ですが、男性スタッフがいた頃は、異性間ならではの甘えも見えましたが、同性のみの環境では、女性は女性に甘えない。女性同士だからこその暗黙の了解というべき何かがあって、相手に負担をかけないように心がけているように見えます」(高橋さん)
3取り組み
タオルはリースに切り替え負担を軽減。
現在、ママスタッフへの新たな支援を検討中
どんな取り組み?
スタッフの余計な労力を減らし、技術面を学んで欲しいという思いもあり、タオルはすべてリースに切り替えた。
また、ほとんどが女性スタッフであるが故に、万が一、シングルになったママのための環境整備も必要と考えている。「時間の自由が効いて、通勤しやすいところに、最低でも1面の鏡が設置できるほどの狭小店舗を設置し、自由な時間の中で働ける環境を整えてあげたい。シングルマザーになっても、自分の腕で子どもを立派に育て上げなくてはいけない。『そんな時には応援するから、今は一生懸命技術を身につけて、頑張れ!』と伝えています」と高橋さん。
どんなメリット?
タオル洗いがなくなったことで、夜干して、朝取り込む、という一連の作業が軽減され、スタッフたちの技術向上のための時間が増えた。
一方、より働き方に制約がかかると思われるシングルマザーのための「狭小店舗」の展開に関しても前向きだ。「いつ誰がシングルマザーになってもおかしくない時代ですから」と高橋さん。店舗の運営、予約管理、材料の手配などを中央(ヘアワークフラックス)で行うことで、ママスタッフへの負担が少ないのもメリット。スタッフは自分のペースで思い切り仕事を続けられる一方で、店舗にとって優秀な人材やお客さまを逃さずにすむ。
インタビュー
- Q. 全員女性スタッフの職場をどう思っていますか?
-
A. どんなアクシデントも他人事ではないと思える共感性が高い。
全員女性の集団は、責任感と連帯感が強いように思います。ライフイベントによる影響がほとんどない男性に比べて、女性スタッフが多いとさぞや大変では?と思われがちですが、かえってうまく回っていると思います。特に妊娠や出産に関することは、同性ならではの共感性があるので、自分が今何をすべきなのかを本能的にわかっているのでは、と思うのです。
女性ならではのきめ細かい気遣いや、経験も貴重です。オープン当初、20代だったスタッフが30代に、30代だったスタッフが40代になり、同じようにお客さまも30代、40代と年齢を重ねていきます。結婚、妊娠、出産はスタッフだけでなく、お客さまにも同じように起こるわけですから、彼女たちの経験が生かされる場面も多々あるわけです。
お客さまにとって、いつ行っても昔から知っている顔に出会える今の状況は、心地よいと感じてくださっているはず。今のスタッフが長く安心して働ける環境を作っていくことが、今後の会社の成長にもつながるように思います。
- Q. 女性同士、馴れ合いにならないための施策は?
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A. 産休のフォローに入るスタッフには
「今が顧客を増やす最大のチャンスだ」とアドバイスします。産休の間の失客は皆無ではありません。産休に入るスタッフのヘルプには、早めに次から担当するスタッフを立たせて、お客さまと関係性を強化したり、手紙で復帰の時期を伝えるようにしています。
その一方で、代理となるスタッフには、「人が休んでいる時こそチャンスなんだよ」と伝えています。「今後、あのお客さまが誰を指名するかは、君次第。だからもっとうまくなりなさい」ってね。それを聞いているから、産休に入るスタッフも油断していられない。産休中の勉強や、復帰後の対応、遅れを取り戻す努力などは惜しまない。
馴れ合いにならないようにするには、共感して協力する仲間である以上に、ライバルであるという意識をもってもらうことが大切。競い合うことでお互いの技能がアップすれば、お客さまにとっても、お店にとってもお互いにハッピーだと思うんです。
Salon Data
ヘアワークフラックス
- アクセス
- JR線 水戸駅から車、バスでおよそで15分
- 創業年
- 2002年(会社設立)
- 店舗数
- 1店舗
- 設備
- 12席
- スタッフ数
- 10名(うちスタイリスト7名、アシスタント3名)