｜第１章｜思い通りにならない髪型を変えたくて　ロンドンのサスーンのサロンに

野嶋　MAYUMIさんのお話はいろいろな場でお伺いするので、楽しみにしてまいりました。
今日は、MAYUMIさんの考える大人女性への提案や、また、同じ女性美容師さんへのメッセージなどもお伺いしたいと思っています。

MAYUMI　私などのお話でいいのかしら……という気持ちもあるんですが、光栄です。ありがとうございます。

　大人女性への提案ということですが、私は、師匠らしきものを持たないんですね。なので、独学といいますか、自分で試行錯誤して今のカット技術を身につけてまいりました。

野嶋　もともとは、どのようなきっかけで美容師になられたんですか？

MAYUMI　それは……。私の場合、ちょっと変わっているかもしれません。私、小さい頃からお洋服や髪型にとても興味があったんです。
私たちってバービー世代なんですよね。いろんなお洋服を着せ替えして育った世代です。現実の世界でもファッションに関しては、欲しいものを手に入れ、好きなものを着ることができたんですが、髪型に関してはどうしても思うようにならなかったんです。

　私は典型的な面長です。だからその面長が上手にカバーできるようなスタイルにしてほしかったのですが、どこに行ってもそれがかなわなかった。中学生になってからは、わざわざ東京のサロンにまで通ったんですよ。それでもうまくいかなくて。

　そんなときに、ロンドンに住んでいた叔父がお土産に買ってきてくれた洋書に、ヴィダル・サスーンがデザインしたスタイルが載っていたんですよね。それは日本では全く見たことのない髪型でした。
それで私は「ロンドンに行けば、このスタイルが手に入るかも！」と思ったんです。単純でしょ。
それで大学に入ってすぐに、叔父を頼ってロンドンに行ったんです。

野嶋　サスーンのサロンでカットされたんですね。どうでしたか？

MAYUMI　それはそれは衝撃的な体験でした。今までに全く見たことのないカットでしたから。そして、その場でサスーンのアカデミーの手続きを済ませてしまったんです。

野嶋　それはまたすごい行動力ですね。当時大学生だったんですよね？　そこで美容人生が始まったわけなんですね。

MAYUMI　あ、いえ、違うんです。違うというか、そのときは、美容師になる気は全然なかったんです。だから、サスーンのサロンで素敵なショートボブになって、「このオーダーを伝えられるだけの能力が私にあれば、日本に帰ってもこのスタイルでいれる！」と思ったんですね（笑）。
「今までは私のオーダーが悪かったんだ。青山や原宿の有名店にしか行ってないわけだから、美容師さんの腕が悪いわけじゃないんだ」と。
なので、どちらかというとお稽古ごとという感じでした。

野嶋　それは、おもしろいですね（笑）

MAYUMI　 技術を学びたいという理由ではなく、「自分の髪のオーダー方法を知りたい」という理由でサスーンのアカデミーに通ったのは私くらいじゃないでしょうか（笑）。

　でも、カットって本当に難しいものなんですね。それまでお勉強ばかりして大学に入学した私は、美容師さんの仕事がこんなにも難しいものだなんて思ってもいませんでした。
最初はあまりの難しさに青ざめたんですが、どんどん魅了されていくわけです。カットって何てすごいんだろうって思いましたし、美容師さんがどれだけすごい仕事かということを初めて知ったわけです。
こんなに難しく美しいことを職業にしているんだ、あの人たちは！って。私は単純なので、「尊敬＝好き」ですから。もう、そこからは一直線ですね。