ファンを作るサロ友
ファンを作る「サロ友」とは?
少子高齢化でお客さまが減る中、リピート客獲得がより重要になっています。
そんな中、「顧客同士のつながり」を生み出すことで「サロンのファン」を作る…「サロ友」についてご紹介していきます。
MERICAN BARBERSHOP FUK(福岡県福岡市)
大人の交流を生む、バーバーの隠れ酒場とは?
神戸拠点の人気バーバーが福岡に上陸したのは、2018年7月。「MERICAN BARBERSHOP FUK(メリケン バーバーショップ フクオカ)」は目覚ましいスピードで常連客を増やし続け、まもなく1周年を迎えます。現在、月間約150人の新規客を迎え、その後の再来率は50%以上。既存客を含む定着率は90%を超えるとか。絶好調の背景には、お客さまの気分はもちろん仕事のパフォーマンスをも上げるカットの腕と、秘密めいた社交場の存在が。
ヘアカットのついでに友だちも作れる、異色のバーバーの工夫とこだわりを取材しました。
ヘアカットのついでに友だちも作れる、異色のバーバーの工夫とこだわりを取材しました。
1
「スピークイージー」をコンセプトにした空間づくり。
バーバーショップの奥に、喫茶&バーラウンジが。
店が位置するのはビルの地下1階。通りからは見えづらい柱のかげに入り口があり、扉を開けるとほの暗い階段が弧を描いて階下へ。その先に現れるのが、3台のチェアが並ぶバーバーショップだ。ミステリアスなアプローチにも驚くが、こちらの真骨頂はショップの奥に。ミラーボールや卓球台を備えた喫茶&バーラウンジがゆったりと広がり、お客さまたちの交流の場になっている。「お客さまが来店されたら、まずバーに案内してコーヒーかビールをお出しします。カット後にお酒を飲みながらゆっくりしていかれる方も。店の待合スペースでありながら、独立した飲食店でもあるので、夜になるとバーバーとバー、両方のお客さまで賑わいます」とスタッフの網谷さん。
お客さまへ、コミュニティづくりの場を提供したい。
バーバーのスペースの4倍はあろうかという喫茶&バーラウンジを設けたのは、“たまり場”を作りたかったから。「男性は大人になると、友だちを作れる機会ってあまりないですよね。仕事で誰かとつながりたい時にも、いきなり名刺を持って行って営業をかけたら、相手が身構えちゃうじゃないですか。でもここでお酒を飲み交わして友だちになっていたら、その後の話がスムーズになるんじゃないかと。それでゆっくりお酒を飲める場を店の奥に作りました」と網谷さん。
秘密めいた空間づくりは、禁酒法時代のアメリカで、バーバーや葬儀店の奥に作られていた潜り(もぐり)酒場「スピークイージー」をコンセプトにしている。
2
大人の“たまり場”に必要なものを揃える。
目指したのは、地域のハブだった昔の理容室。
「昔は何か新しい仕事をやるんだったら、その街の理容室に行けと言われてたんです」と語るのは、代表の結野さん。理容室にはさまざまな職業の男性たちが集まっていて、顔をつないでもらえる場所だったという。実際に「MERICAN BARBERSHOP FUK」でも、施術中のお客さまとの会話に仕事の話が頻出する。「僕らがテーマにしているのは、“Look good,feel good,play good”というディオン・サンダースの言葉。カットしてかっこよくなったら、気持ちがよくなって、いい仕事ができる。それで最後に“They pay good”。そこに人はお金を払うと。だから僕らは髪を切るだけじゃなくて、お客さまのプレイも収入もよくしたい。仕事の話ができる“たまり場”が、そこに生きてくるんです」(結野さん)。
大人を満たすクールな設備とストーリーへのこだわり。
ただの待合スペースではなく、ソーシャルなハブとしてのバーラウンジをつくるにあたり、こだわったのは音とアルコールとフード。世界で話題のスピーカーブランド「VOID」のサウンドシステムを導入し、週末にはDJを呼ぶ。アルコールの一押しはアイリッシュウイスキーのジェムソンだ。「ジェムソンは男性がんの啓発運動をサポートしているので、男性のお客さまを盛り上げたいという店の想いとシンクロします。提供しているのは、そういう文脈のあるお酒だけです」と結野さん。ターゲットである35歳以上の世代を意識して、フードにはナポリタンやオムライスなど、「ネオクラシック」をテーマにした昔ながらの喫茶メニューを採用。懐かしさに、思わず会話が弾むという仕掛けだ。
3
イベントで出会いの場を盛り上げる。
お客さま同士の交流を促すイベントを開催。
バーラウンジでのコミュニティづくりを促進するべく、店ではさまざまなイベントを開催している。不定期開催のものには、音楽イベントやカレーイベントなどが。最近では、毎週金曜の19時から、スタンドバースタイルの「メリケンスタンド」を展開。フードはワンスプーンで食べられる特別メニューに変わり、支払いはチケット制になる。1000円でチケット10枚がもらえるシステムで、足りなくなったらチャージも可能。現金ではなくチケットを使うことで、お客さま同士が気軽におごり合うことができるという。
お客さまとの交流から、店にも新規のビジネスチャンスが。
イベントやバーでの会話をきっかけに友だちになり、仕事の関係にも発展するなど、お客さま同士の交流は続々と生まれている。さらにはこの“たまり場”が、店に新たな仕事をもたらすことも。「お客さまからうちの店宛てに、イベントの空間デザインの発注をいただきました」と網谷さん。スタッフのセンスやスキルを結集し、ロゴから内装、小道具まで手がけた仕事は好評を博し、店では新たに制作部署が発足。さらにはヒップホップアーティストのプロモーションデザインという次なるビジネスも、このバーラウンジで呼び込んだ。「店にこういうコミュニティづくりの場所があるおかげで、僕らも気軽にお客さまたちと仕事の話ができる。バーバーでありながら、髪を切ること以外でもお客さまとつながっているという状況が、すごく面白いです」(網谷さん)。
代表インタビュー
Q.バーバーが店内の5分の1程度と大胆な空間使いをされていますが、「スピークイージー」をコンセプトにした理由は?
A.海外で流行中のカルチャーを、僕らのスタイルで日本に持ってきたかったんです。
「スピークイージー」は、海外ではもう流行しているカルチャーです。シンガポールでは、ラーメン店に入ったらその奥に100坪くらいのバーが広がっていたり。そんな秘密めいたセッティングがヤバいでしょ。そのカルチャーを日本に持ってきたいけれど、そのまま真似するのではダサい。そこで、僕らのもう1つのテーマである「ネオクラシック」とかけ合わせてみようと。それは、日常にある馴染み深いものを、僕らの今の感性で再定義するということなんですけど。理容室や喫茶店をかっこよくアップデートしてかけ合わせれば、日本独特の「スピークイージー」カルチャーができると思って、作ったんです。
Q.多彩なイベントを開催されていますが、その狙いは?
A.今、僕らが持っている“新しいこと”を表現するためにやり続けたい。
メリケンブランドのタグラインの1つは、“新しいこと”。その鮮度を高めるためには、定期的に面白いイベントがあってもいいじゃないですか。例えば神戸店の2周年パーティーはホストクラブを貸し切りにしましたし、3周年は神社でヒップホップアーティストを呼んで夏祭りを開催しました。福岡店の1周年はオープンエアのバスで市内を巡る「昼の部」と、有名アパレルブランドとコラボレーションして行う「夜の部」を予定しています。
今、僕らがどんな“新しいこと”を持っているか。その鮮度をアピールして、共感してもらって、仲間になってもらいたいんで、イベントは常にやり続けたいと思っています。
Salon Data
MERICAN BARBERSHOP FUK
- アクセス
- 福岡市営地下鉄空港線赤坂駅から徒歩8分
- 創業年
- 2015年
- 店舗数
- 2店舗
- 設備
- セット面5席 ※MERICAN BARBERSHOP FUK
- スタッフ数
- 7名 ※MERICAN BARBERSHOP FUK