ファンを作るサロ友
ファンを作る「サロ友」とは?
少子高齢化でお客さまが減る中、リピート客獲得がより重要になっています。
そんな中、「顧客同士のつながり」を生み出すことで「サロンのファン」を作る…「サロ友」についてご紹介していきます。
BB.つばめ(東京都清瀬市)
定着率ほぼ100%!全国から鉄道ファンが通う理容室。
西武池袋線清瀬駅から歩くこと10分。住宅地に突如現れる、駅名標のような看板と特急のヘッドマークをデザインした情緒あふれる扉。入口をくぐれば、レトロなボックスシートの待合席が目を奪い、壁には鉄道各線の行き先表示板がずらり。ここ「BB.つばめ」は、まるで鉄道博物館のような理容室です。「“鉄分”豊富」と評される独特の理容空間と時間を求めて全国から鉄道ファンが訪れ、リピート率はほぼ100%だとか!
駅長帽で迎えてくださったオーナーの渡邉和博さんに、店づくりのこだわりとファンを増やす取り組みについて伺いました。
駅長帽で迎えてくださったオーナーの渡邉和博さんに、店づくりのこだわりとファンを増やす取り組みについて伺いました。
1
「鉄道ムードの漂う理容室」が店のコンセプト。
地元住人ではなく、全国の鉄道ファンをターゲットに。
幼少の頃から鉄道が好きで、たくさんの鉄道グッズをコレクションしてきた渡邊さん。理容師としての経験を積み、実家の理容室を継ごうと考えた時、「鉄道ムードが漂う店にしたい」という思いが芽生えました。それを両親に提案したところ、受け入れてもらうことができず、新天地となる清瀬にてひとりで開業することに。「通常、理美容室の商圏は半径500m以内と言われています。でもこの辺りは美容室が多くて、地元で集客するのは難しそうだと最初からあきらめる気持ちがありました。鉄道が好きな人は全国に大勢いるので、そういう人たちにアピールできれば、一度は足を運んでもらえるのではないかと思ったんです」と渡邉さん。
ブログと自らの足を使った戦略的な宣伝活動。
集客のためにまず行ったのが、当時流行し始めていたブログの開設。鉄道をテーマにしたブログの執筆者に片っ端からメッセージを送り、インターネット上で鉄道ファンとしてのコミュニティを広げたという。その後、内装が何もないスケルトンの状態から店をつくっていく様子を自身のブログで報告。「自宅にあった鉄道コレクションを運び入れて、どんどん出来上がっていく店内の写真をアップしていきました。見ている人も楽しいでしょ」と渡邉さん。いよいよ店のオープンが迫ると、今度は地元への宣伝活動を開始する。「店の周辺で、お子さんがいそうな住宅に直接チラシを投函して回りました。子どもが鉄道好きならば、お母さんが連れてきてくれるだろうと。お父さんも興味があれば一緒に来てくれる可能性も。さらにママ友コミュニティで話題に上がればいいなと期待しました」。
2
鉄道ファンのお客さまが心地よく過ごせる環境をつくる。
マニアックな話もしやすい、1組貸し切りのシステム。
「BB.つばめ」は、各予約時間帯につきお客さま1組のみを受け付けており、施術中は貸し切り状態に。「鉄道の話って特殊なので、あまり人に聞かれたくないというお客さまが多いんです。貸し切りにすることで、私と1対1で気兼ねなく鉄道トークを楽しんでもらえます。マニアックな話も分かり合えるので、皆さんすっきりして帰って行かれますよ」と渡邉さん。鉄道ファンのクチコミと、ブログの宣伝効果によって、北海道や九州など全国からお客さまが訪れるように。「当初の見込み通り、地元よりも市外からのお客さまが多い店になりました。鉄道好きの人は電車に乗ることが楽しいので、距離の遠さは問題にならないんです。乗り換えが多いことも、むしろ魅力と感じて通ってくれていると思います」。鉄道ファンといっても大人だけではなく、子どもや学生など幅広い年齢層のお客さまが来店しているという。
気の合いそうなお客さま同士を紹介する。
全国に類を見ない個性で鉄道ファンの憧れとなった店には、JRや西武鉄道など、鉄道会社の現役職員も常連客として訪れている。そこで、本人の許可があれば、次の時間帯のお客さまと交代する際に「こちらは鉄道会社の方ですよ」と紹介することも。「子どものお客さまは、電車の運転手さんや車掌さんに会うと大興奮です。中学生や高校生の頃にここで鉄道職員さんと知り合って、いろいろなアドバイスをもらい、鉄道会社に就職したお客さまが何人もいますよ」と渡邉さん。他にも鉄道撮影が好きな「撮り鉄」、鉄道の音を楽しむ「音鉄」など、同じ趣味のお客さま同士を紹介し合うこともしばしば。その結果、意気投合して一緒に出かけたという報告も数多くあるという。
3
鉄道の魅力をアピールする多彩なイベントを開催。
店の集客にもつながる、列車貸し切りの周年イベント。
毎年10月に開催する周年イベントでは、お座敷列車などを貸し切りにして、お客さまと一緒にオリジナルの鉄道の旅を楽しんでいる。告知はブログなどでは行わず、来店したお客さまに直接伝える方法のみ。それでも毎回140人ほどが集まり、6両の車両を貸し切りにするほどの盛況ぶり。その他、春と夏には「日本の一番高い場所と低い場所にある駅を巡るツアー」や「電車の安全な撮り方講習」など、子ども向けの鉄道イベントも開催。プランニングから鉄道会社との交渉、パンフレットづくりまで、すべてを渡邉さんが手掛けている。「鉄道の旅の魅力を多くの人に知ってもらうことが目的ですが、参加してくれるお客さまが友人を連れてくることもあり、そこから集客につながることも。初めての理容室に行く時って、不安があるじゃないですか。でも一度イベントで私と会っていれば、その気持ちが和らいで来店しやすくなるようです」と渡邉さん。
イベントでは、鉄道職員のお客さまが協力者に。
周年イベントでは、初対面のお客さま同士が貸し切りの車内で長い時間を過ごすことになる。そこで、渡邊さんがその場にいなくても会話が盛り上がるように、あらかじめ座席表を作成。同じ趣味のお客さま同士を近くにするなど、各人のキャラクターを考えて座席をコーディネイトしているという。さらには鉄道職員のお客さまに協力してもらい、各号車ごとに担当者を設定。問題が発生した際は担当者から渡邊さんへ連絡をもらって、迅速に解決できるように対策をとっている。
とはいえ、これまでにトラブルの発生はゼロ。イベントは好評を博し、「BB.つばめ」のファンは増える一方のよう。渡邊さんいわく、「お客さまの定着率はほぼ100%です。遠くの県に住んでいる方でも、3カ月から半年に一度は足を運んでくれます。近所の理容室は、ここにうちの店ができてからもお客さまが減ることがなくて、驚いているんじゃないでしょうか」。
オーナーインタビュー
Q.店内で一番のこだわりポイントはどこですか?
A.かつて駅や車内で活躍した装置を、今も稼働させられることです。
引退した運転装置や放送用装置が、ここでちゃんと稼働するというのがポイントですね。国鉄時代の車内放送用マイクを使って、お客さまをお呼び出しすることもあり、喜んでもらっています。他に昔のグリーン車の椅子や指定席発券機、車掌スイッチなど、博物館にあれば触れないようなものも、ここでは自由に触っていただいてOKです。古い鉄道雑誌や時刻表なども置いているので、カットが終わったお客さまはボックスシートでのんびり、次の旅への妄想を膨らませていかれるようです。
Q.今後、取り組んでいきたいことはありますか?
A.「理髪車」の保存活動に携わっていきたいです。
昨年、旧木曽森林鉄道で活躍した「理髪車」を1日限定で復活させる、上松町観光協会主催のイベントがあり、車内でカットを担当しました。「理髪車」というのは、林業で長く山奥に滞在する作業員の人々のために作られた、移動式の理容室です。40数年前に廃線となっていて、保存会により保管されていた車両が、久々に陽の目を見た日でした。以来、「当時のまま残っている車両を、これからもよい状態で保存していきたい」「イベントを通して、理髪車の文化を伝えていきたい」と理髪車への思いが募るように。今年も夏と秋にイベントが予定されているので、車内でのカットを担当しながら、理髪車の保存活動に携わっていければと考えています。
Salon Data