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結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.65リピート率9割、次回予約率7割!
ママ美容師だから輝ける白髪染め専門店とは?

hair・face 染屋

愛知県丹羽郡扶桑町

愛知県丹羽郡で、2年半前に白髪染め専門店としてオープンした「hair・face 染屋」。スタッフ5名のうち3名がパートママのサロンは、代表の田口篤基(あつき)さんが「育児と仕事の両立」をコンセプトに立ち上げました。白髪染めに特化したサービスと、経験豊かなスタイリストの細やかな接客で、短い間に地域の人気店へと成長。子育てママがイキイキと活躍できる独自のビジネスモデルについて、代表の田口さんにうかがいました。

1取り組み

「白髪染め専門サロン」として主婦をターゲットに。
復職した美容師も働きやすく、接客で力を発揮。

どんな取り組み?

立ち上げ当初から、30代以上の白髪が気になる年代や、子育てで忙しい主婦層をメインターゲットに設定。美容業界でも珍しい「白髪染め専門店」として、サービスを提供している。メニューにはカットやパーマもあるが、あくまでも髪や地肌の健康を重視したカラーリングを売りにした。その結果、お客さまのほとんどが30〜60代の主婦層で、平日の午前中〜夕方までに多く来店。98%が白髪染めをオーダーし、うち6割以上が白髪染めだけのために来店している。

メリットは?

一度離職してブランクのあるママ美容師は、カットの技術に不安を感じることが多い。しかし、トレンドに左右されない白髪染めがメインのサロンであれば仕事に戻りやすく、心理面での負担なく働き続けられる。「ただ白髪染め専門店ですので、薬剤の知識や接客については月に数回講習を行い、サービスのクオリティを高める努力をしています」(田口さん)。また、30〜40代のベテランママスタッフと年齢の近い主婦層を顧客とすることで、双方にとって親近感が生まれ、心地よい関係を築きやすくなる。スタッフは主婦ならではの悩み事に共感でき、子育てなど共通の話題も多く、お客さまからも「リラックスしてサービスが受けられる」と好評。さらにカット中心のサロンよりも1回あたりの単価が安いため、お客さまが気軽に足を運びやすく、来店サイクルが短いこともメリットになる。2〜3週間に一度は来店する常連客もいるそう。

「お客さまはほぼ30代以上で、50〜60代が中心。香りの良いハーブエキスなどの商品を使い、単に白髪を染め直すだけでなく、日常を忘れる癒しの空間を提供しています」(田口さん)

「お客さまはほぼ30代以上で、50〜60代が中心。香りの良いハーブエキスなどの商品を使い、単に白髪を染め直すだけでなく、日常を忘れる癒しの空間を提供しています」(田口さん)

2取り組み

日曜定休、パートは1日5時間からOK。
イレギュラーな欠勤には、代理出勤で対応。

どんな取り組み?

通常最も売上げを見込める日曜日を、こちらでは定休日とし、営業時間は9:00〜18:00(最終受付・カラー16:30)。スタッフの始業時間は、オープンの10分前でOKの体制を取っている。雇用形態や出勤日数は各スタッフが希望する働き方に柔軟に対応し、パートは週3日・1日5時間でもOK。また、子どもの病気などによる欠勤が起きた場合に、都合がつく人が代理出勤できるよう、常に2人以上が休みを取るようにシフト調整をしている。

背景とメリットは?

日曜が定休であれば、スタッフ全員が週末に家族と過ごすことができる。そして、それぞれの生活スケジュールに合わせた勤務体系が選べることで、家事や育児の時間も確保しやすい。「hair・face 染屋」では顧客の大多数が主婦層であるため、平日夜間や日曜日は来店数が少なく、その点も見越して営業時間を設定した。急な欠勤のときに代理出勤する制度の運用は、実際は年に数回しかない。また、休んでいるスタッフの都合がつかず代理出勤ができないこともある。「でも、こうした申し合わせがあるおかげでママスタッフが安心して働けています。お互いに助け合う気持ちも強くなります」(田口さん)。

ママスタッフには普段から「学校行事などには休んで積極的に参加してください」と勧めている田口さん。平日と土曜日に来られるお客さまだけ獲得できればいいというスタンスでサロンを営業している

ママスタッフには普段から「学校行事などには休んで積極的に参加してください」と勧めている田口さん。平日と土曜日に来られるお客さまだけ獲得できればいいというスタンスでサロンを営業している

3取り組み

指名制を取り、同時刻にお客さまを掛け持ちしない。
終始一貫した細やかな接客で、リピート率は90%。

どんな取り組み?

基本的に指名制で、マンツーマンで責任を持って対応するシステム。サロン側からは薬剤の知識や商材は提供しているが、お客さまへのサービスについては、すべて担当スタッフに任せている。接客は担当スタッフのみが終始行い、同じ時間帯に複数のお客さまの掛け持ちはしない。

背景とメリットは?

スタッフは全員10年以上の経験を積んだベテランスタイリストで、お客さま一人ひとりの細かなニーズを汲み取り接客をする能力がある。さらに指名制で終始一対一の対応をすることは信頼感につながり、ゆったりとした癒しの時間を提供することができる。その結果、顧客満足度は高く、約7割の人が帰るときに次回の予約をしていくという。既存客のリピート率は約90%と非常に高い。
また、このシステムではスタッフの人数を超える予約を同時に入れないので、基本的に時間に余裕があり、誰かが急に欠勤しても対応しやすい。代わりのスタッフが放置時間などを利用して、ほかのお客さまの接客をすることも可能。それも白髪染め専門店ならではだ。

子育てママが活躍できる独自性の高いビジネスモデルが評価され、中小企業庁が実施する今年度の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定された

子育てママが活躍できる独自性の高いビジネスモデルが評価され、中小企業庁が実施する今年度の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定された

代表インタビュー

20年の美容師生活を経てオーナーになった田口さん。「僕自身も18:00に閉店して帰宅することで、家族との時間を持てるようになりました」。サロンワーク以外にも、事業者向けセミナーの講師として、集客やパート雇用のノウハウなどを発信しているそう。

Q. 子育てママが働きやすいサロンを作ろうと思ったのはなぜですか?

A. 大型店での働き方に疑問を覚え、プライベートと仕事の両立を目指したら、この形に行き着きました。

以前は、50〜60人のスタッフがいる大型店でフロアマネージャーをしていました。スタッフは若い女性もママも男性も混在し、顧客もさまざまな層がいて運営は大変です。土日出勤、深夜帰宅もしばしば。自分にも3人の子どもがいますが、父親らしいことを何もしないうちに大きくなっている。「人生これでいいのかな」と疑問に思ったとき、真剣に独立を考えるようになりました。目指したのはプライベートも大切にできる働き方です。
当時から自分のお客さまは大人の女性が多かったんです。そこで、この方々に喜ばれる経験豊かな女性美容師だけでスタッフを構成しようと考えました。人材難といわれる美容業界ですが、子育てのために働ける場がなくて休眠している美容師はたくさんいます。主婦やママ美容師は、家庭と仕事を両立できる環境さえあれば、強い戦力として頑張ってくれるはず。そこで店の特徴から顧客の絞り込み、雇用条件も含めて徹底的に「ママの働きやすい環境」を作っていこうと決めました。それがこのサロンの原点です。

Q. 今後、取り組みたいと考えている課題は何ですか?

A. コンセプトを変えることなく成長する方法を模索中です。

おかげさまで順調に常連さまが増え、リピート率も高いため、徐々に新規顧客が受け入れにくくなっているのが心苦しく、悩みどころです。でも目先の売り上げのためにコンセプトを変えるつもりはありません。ママが働きやすい環境をもっと増やすために、地元で新しい展開を目指したい。パートが効果的に使えなかったり、売り上げが伸びず困っているサロンへのアドバイスを通じて、業務提携も視野に入れて行ければと考えています。
サロンオーナーになって実感するのは「スタッフがいちばんのお客さまである」ということ。やはりスタッフが満足して働けないと、サロンのサービスの質も高まりません。スタッフとの信頼感を育てるためにも、企業理念にもとづいて明確なコンセプトを打ち出すことは大事です。大型店舗で総花的な経営をすればいい時代は終わりました。これからは勝ち抜く力のあるサロンが活躍できる時代がくるのではないでしょうか。

Salon Data

hair・face 染屋【ヘアー・フェイス そめや】

アクセス
名鉄犬山線柏森駅から車で5分
創業年
2014年
店舗数
1店舗
設備
セット面4席
スタッフ数
5名
URL
http://www.supanatu.com/hair/someya/
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