2014.02.03
日本支社長としてリッツ・カールトン大阪・東京の開業を成功に導き、現在は「人とホスピタリティ研究所」代表として活躍される高野 登氏。人の成長を核とした組織や理念づくりに携わる氏に、リーダーとしての心構え、感性の磨き方についてお話いただきました。
PROFILE
高野 登(たかの のぼる)
1953年、長野県戸隠生まれ。ホテルスクール卒業後、’74年にニューヨークに渡りホテル業界に就職。
’82年、念願のNYプラザホテルに勤務し、 ’90年にはリッツ・カールトンに移籍。サンフランシスコの開業に携わり、米国西海岸やシドニーでの開業をサポートする。
ホノルル・オフィスを開設後、’94年、日本支社長としてリッツ・カールトンの日本におけるブランディング活動を行う。大阪、東京の開業に携わり、09年9月に退社。10月、長野市長選に出馬。現職に 651 票差に迫るも惜敗。
2010年1月 人とホスピタリティ研究所 設立。企業や組織の成長は、そこで働く人の成長。その成長はリーダー自らが示していくことが不可欠というテーマのもと、現在は「100年先を見据えて続く会社、100年先も残る理念」作りを目指し、【寺子屋百年塾】を全国各地(長野/東京/九州など)で精力的に行っている。
|第1章|人を集める力と、人が集まる力
ご紹介に預かりました、高野です。プロフィールで選挙の話まで紹介されるとは思いませんでした(笑)。651票、いい数字でしょ?でも、負けは負け。このときなんで負けたか自分なりに考えてみたんです。それは、今日のテーマにもつながります。選挙って、ある意味「集客力」。自分に投票してくれる人を集めなくちゃいけない。リッツ・カールトンでやってきたことと同じです。集客力には2つある。まず、お客様を集める力。もう一つは人が自然に集まってくる力。
まず、集める力ですが、必要なのは“能力”です。サービスや提供しているものを把握して、どのお客様にどのタイミングでどのぐらいの頻度で、自分たちの力を伝えていく機会を作れるか。それを見極める能力です。力を伝えられなければ、お客様を集めることができない。
人を集めるほうの集客力が“能力”だとすると、人が集まるほうの集客力は何か?
これは、“魅力”。人間力と言ってもいいかもしれない。なぜかあの人のまわりには人が集まる。あのチーム、あの会社には、人が集まる。それがお客様じゃなくて働く人であっても、非常に価値のあることです。私が敬愛している方の一人に、「かんてんぱぱ」という食品を作ってる伊那食品工業の塚越会長がいます。従業員数500人弱の会社ですが、従業員満足度で日本でトップ10に入る会社だと思います。
某大手車メーカーが、社長以下幹部6人ぐらいで、定期的にそこに勉強に行っています。働いている人の成長感や幸福感に、どちらの企業がより多くのエネルギーと時間を咲いているかでいうと、間違いなく伊那食品工業だと思います。今年も10数名入社されましたが、日本中から、熱心な論文付きの履歴書が送られて来るんですよ。
どうしてこういう会社を作ることができるか。これは今日の主題ではないので、興味がある人は、塚越会長が書かれた『いい会社を作りましょう』を読んでください。いい会社とは何かというところから始まって、50年かけて社員が一人ひとり本当に幸せになれば会社は儲かる、と実践してきたこと、その秘密がすべて書かれています。私はこの本に出会ったとき、リッツ・カールトン大阪のリーダー全員にこれを配り、40数名全員が読みました。我々がそこから学ぶものは、あまりにも大きかったんです。
研修や講演会に行くことも大事、自分たちで勉強会やるのも大事。でも、いい本やいい思想に出会って、それを自分の中で噛み砕いて、今度は自分の軸に乗せて伝えていくことも非常に大事です。できれば、伊那食品工業に出かけていけば、もっとよくわかる。そこで働いている人と、一言二言言葉を交わすことでわかることがある。この時間をかけてここに行って良かったなあ、と感じられる。そのことだけで自分の時間が輝く。そういう会社です。