ヘアサロン領域
2014.01.27
新潟県に9店舗。68人のスタッフを擁するリッチグループ。 7年前から、職業訓練校を併設し、スタッフ教育の仕組みを変えました。 労働時間の課題と、賃金、生産性アップの課題に対して、真っ向から取り組んでいらっしゃる佐藤さんが考える 「これからの美容業界のあるべき姿」について伺いました。
PROFILE
佐藤 浩敬
新潟県内9店舗を展開し、認定職業訓練校新潟ビューティアカデミーを開設。
美容師の笑顔がお客さまの笑顔に繋がると信じ、美容業界の仕組みや育成環境の再構築を中心としたスタッフの働きやすい環境作りとキャリアパスプランに注力している。
また、週2日サロンワークとメーカー講師などで全国で講習するなど経営者と美容師の両立を続けている。
Ricci Group webサイト → http://www.ricci.co.jp/
|第4章|スパニストの養成を通じてアシスタントの生産性を高める
野嶋 お話を伺って、美容業界の慣習や常識を変えていきたいというお考えがよくわかりました。
他に何か取り組まれていることはありますか?
佐藤 アシスタントの生産性をいかに上げていくかというところを考えています。先ほど話をしたように、スタイリストの売り上げの上限を決めているので、アシスタントも含めた一人あたりの売り上げを上げるためにはやっぱりアシスタントも売り上げる仕組みを作る必要があるんです。
そこで、新しく、アシスタントという名前をなくして、スパニストという分野を作りました。まだ先月からスタートしたばかりなのですが。
野嶋 それはどのような仕組みなんですか?
佐藤 まずスパニストという役割は、アシスタントなんですけれどその部門に関してはスタイリストと同じ位置づけです。アシスタントがスパニストの観点からカウンセリングをどのお客さまにもしていいという仕組みです。意思決定の有無をちゃんと明確にしました。そうでないと、ただの名前だけの役割で終わってしまうから。でもそれを理解させ説得するのに、1か月かかりました。
野嶋 スパニストを名乗れるようになるためには、どのような段階をふむのですか?
佐藤 知識講習と実技講習とコンサルテーション講習というのがあって、この3つをクリアしてなおかつその3つの試験に合格しない限りスパニストにはなれないようになっています。技術や知識は覚えられるんですけれど、提案力にあたるコンサルテーションがいちばんの課題ですね。ボキャブラリーの少なさが課題になってくる。自分一人でお客さまを説得して納得していただける施術の説明やアプローチができない限り、合格はさせない。試験の時には一般のモデルさんをお呼びして、ほんとうのカウンセリングからコンサルテーションから施術までを見ます。
合格したらアシスタント以上のジュニアスタイリストレベルの給料設定をしています。それにプラスして歩合を付け加える。その仕組みをちゃんと説明して、今スタートしているところですね。
野嶋 佐藤さんは、教えることを仕組みにするのが得意なんですね。
佐藤 そうですかね。でもやっぱり教育産業ですから。
野嶋 やはり美容は教育産業ですか?
佐藤 人が育たないとお客さまも定着しませんし、しっかり長く勤められるようにしていくことがいちばん大事だと思うんですよね。
僕、美容師は、ほんとうにすごくいい仕事だと思うし、より多くの人になってもらいたいという思いもある一方で、間違いなくこれから美容師は減っていく。それを止めていかなければいけないと、この5年くらいは強く考えています。そのための仕組み作りが必要だと感じます。ビューティ総研さんのいろんな資料からも、いつも考えるヒントをもらっています。
野嶋 そうでしたか。我々も、美容業界のみなさんに役立つ情報提供を引き続き行っていきたいと考えています。今日は、新しい考え、新しい取り組みのお話を、ありがとうございました。
(写真/森若匡 文/増田ゆみ)