女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.90自由シフト、指名なし、営業中のレッスン。
休眠美容師を復帰に導くサロンの想いとは?
color lover 三軒茶屋
東京都世田谷区
都内をメインに6店舗を展開する「color lover」は、ヘアカラーとヘアケアの専門サロン。無駄な時間をかけずに気軽にきれいになれるヘアサロンとして、働く女性を中心に人気を呼んでいます。約30名いるスタッフのうち、13名がママスタッフ。そのほとんどは、出産退職後にブランクのあった元休眠美容師です。人事課長の内田さんいわく、復帰のネックになる「技術」や「時間」の問題を解消したことで、求める人材が集まりやすくなったのだとか。ママカラーリストたちの働きやすい環境が生まれた背景と、その工夫について伺いました。
1取り組み
美容師の3つの技術のうち、必要なのはカラー技術のみ。
ブランクがあっても復帰の負担が少ない。
どんな取り組み?
子育て中の休眠美容師が再就職する際に壁となるのは、技術的なブランクへの不安。カット、カラー、パーマといった総合技術を取り戻そうとすると、練習に時間がかかり、負担は大きい。しかしヘアカラー専門店ならば、必要なのはカラーの技術のみ。練習の負担は単純に、総合技術の3分の1になる。「ブランクがあっても勘を取り戻しやすいですし、アシスタントで辞めてしまった美容師でも、カラーリストとして一人前を目指すことができます」と内田さん。
背景とメリットは?
女性の社会進出が進み、見た目に気を使う人が増えてきた現代。「color lover」は、カットよりも短い周期でケアが必要なカラーに特化し、お客さまに気軽にきれいになってもらうことを目的に立ち上げたサロンだ。そのため、スタッフに求めるものは高いカラーリング技術のみとなる。
入社後は、各人のブランクや技術の度合に応じた研修を、営業時間中に実施。一度美容師を経験した人ならば、長くても2~3週間ほどの研修で、カラーリストデビューができる。
2取り組み
スタッフそれぞれの希望に合わせて、雇用形態もシフトもフレキシブルに対応。
どんな取り組み?
雇用形態はフルタイムの正社員、時短の正社員、パートタイムの3通りから選択が可能。「結婚を機にフルタイムからパートへ」、「子育てがひと段落したのでパートから正社員へ」といった変更の希望にも、柔軟に応じている。
パートの基本シフトは10時~15時、15時~20時、11時~19時、10時~20時の4タイプ。「まずはこの基本シフトの希望でざっくりと組み、穴の開いてしまった時間帯を、スタッフと相談しながら埋めていきます。人が足りない日時をメールで全員へ送って、入りたい人を募るという方法です。直前でも名乗り出てくれる人が多くいるので、困ることは少ないですね」(内田さん)。
背景とメリットは?
基本シフトを短く区切ったのは、求人の場で、通常の美容院との差別化を図ることが目的。「技術はあるけれど、一般的な美容院だと時間拘束がネックで働けない」といったママ美容師や、ダブルワーク希望の美容師は大勢いる。そこに向けて出勤日数・時間に制限のないフレキシブルな働き方を提案し、求人を有利に導いた。現在店に立つスタッフはほとんどが新規採用で、全体の約半数がママスタッフだ。
「所属店舗のシフトが満員の場合や定休日には、他店舗に入ることもできます。時給制なので、稼ぎたいスタッフはどんどんシフトの希望を出してくれています。家庭重視の人も、稼ぎたい人も、自分の都合に合わせて働けるので、辞めにくい環境が築けているのではないでしょうか」(内田さん)。
3取り組み
指名をとらないシステムで、急な休みが避けられないママスタッフのプレッシャーを軽減。
どんな取り組み?
6つある店舗すべてが、指名をとらないフリー制。メンバーズカードに使用薬剤や色の出方などの詳細を書き込んで、お客さまの情報を全店舗で共有する仕組みだ。カードの提示があれば、どのスタッフが担当しても、いつもと同じ仕上がりになるように努めている。
背景とメリットは?
店は予約優先のため、指名を受け付けるとスタッフの時間拘束が生じてしまい、フレキシブルなシフトが叶わなくなる。またスタッフの出勤日が一定でないことにより、指名する側のお客さまを混乱させてしまう可能性も。その両面の負を考えて、フリー制をとった。これにより、子どもの熱などによる急な休みが避けられないママスタッフのプレッシャーも軽減。急な欠勤が出た場合は、他店舗からスタッフを送ることで対応している。
4取り組み
営業時間中のレッスンで、効率よくスキルアップを目指せる。
どんな取り組み?
ブランクフォローの研修もスキルアップの練習も、営業時間内の実施が基本。多くの美容院で営業後に行われているレッスン会も、営業中に実施している。「営業後のレッスン会は、スタッフにサービス残業を強いてしまうことになるので、取り入れていません。うちの場合は、営業時間内にいかにスキルアップするかが重要。他のスタッフの仕事を見て勉強したり、なぜその色を選んだのか質問したり、自ら学んでいけるかどうかです。既存のスタッフも未熟なスタッフの質問に答えることにより、お互いがスキルアップできるという利点もあります。営業中に空いた時間が少しでもあれば、そこをレッスン会に充てることも多いです」(内田さん)。
背景とメリットは?
「カラーリストのスキルアップには、とにかく経験を積むことが必要。同じ人の髪でも、傷みの程度、乾燥や紫外線の影響などで色の出方は違ってきます。同じ状況がまったくないため、経験が浅いと判断に迷うことばかりです」と内田さん。そこで、営業時間中に他スタッフの仕事を見ることが重要になってくる。作っているカラー剤や、それを使った仕上がりまでしっかり確認して、覚えること。自分の接客プラス他スタッフの接客を観察した分が、本人の経験になっていくのである。
これにより、時短で働くママスタッフでもスキルアップの機会が十分に。「技術を磨くほどシフトを組む際に優先されるようになるので、稼ぎも多くなります」(内田さん)と、モチベーションを上げる好作用もあるようだ。
人事課長インタビュー
- Q. 女性の働きやすい環境づくりを第一に考えていることが、さまざまな取り組みから伝わってきました。進めてきてよかったと思えることは?
-
A. 大人世代のスタッフによる安心感ある接客が、店の価値にも繋がっています。
ある程度の美容師経験があって子育て中のママスタッフとなると、年齢は30~40代が多くなります。この年代でブランクを背負って、若いスタッフばかりのお店に入っていくのは、なかなか気が引けるものです。でもうちのサロンには、同じ30~40代で、同じように勉強し直して働いているスタッフが多数いる。おかげでなじみやすいというか、励みになるという声を聞きます。
また店の性質上、お客さまも一般的な美容院より平均年齢が高いので、スタッフと話も合いますし、コミュニケーションがとりやすいようです。そういった安心感が、店の価値にも繋がっているのではないでしょうか。
- Q. 今後さらに取り組んでいきたいことは何でしょうか?
-
A. フリー制を支えるための、技術の底上げです。
今、注力しているのはスタッフの教育です。この夏にもう1店舗オープン予定で、スタッフも増えてきているので、技術の統一化は最重要課題の一つ。いつも同じスタッフが担当する指名制なら、技術のむらは起きにくいですが、いろいろなスタッフが担当するフリー制の場合はそれが容易ではありません。お客さまがどの店を訪れても、同じ高レベルの技術を提供できるように、みんなでスキルアップしていかなければと。肝は教育になるので、営業中でも空いた時間はみんなで練習するなど、技術の底上げに力を入れています。
Salon Data
color lover【カラーラバー】三軒茶屋
- アクセス
- 田園都市線三軒茶屋駅から徒歩30秒
- 創業年
- 2012年
- 店舗数
- 6店舗
- 設備
- セット面14席 ※color lover 三軒茶屋
- スタッフ数
- 10名 ※color lover 三軒茶屋(他店舗と兼任含む)