「バーバー」人気の理由
今「バーバー」が人気の理由
近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。
STANDARD(神奈川県横浜市)
予約が取りづらい、横浜の人気バーバー。
お客さまの信頼を生むサービスとは?
横浜市綱島の商店街の外れにある「STANDARD」は、一見バーバーとは思えないようなスタイリッシュな造り。オープンして6年、おしゃれに高感度な人々を中心に、地元の男性から熱い視線を集めています。毎日が予約で埋まり、スタッフ3名体制でもお断りすることが多いという状況。そのような店が生まれた背景には、代表である関邦彦さんが思い描く、時代に即したバーバー像がありました。
根底にあるのは、理容技術へのリスペクト。
修業時代に感じた、理容業界の保守的な体質。
代表の関邦彦さんが綱島で「STANDARD」をオープンしたのは28歳のとき。この業界で独立する年齢としては、比較的若い部類に入るだろう。「早く独立したかった。30歳までには自分の店を持ちたかったんです」と関さんは言うが、もちろん理由がある。専門学校を卒業後、初めて就職したのは昔ながらの理容室だった。仕事に慣れると、店のさまざまな面が客観的に見えてくる。そうすると、自分なりのやり方を試してみたくなる。「こうすればもっとよくなるはず。そう思っているのに、自分のアイデアをなかなか受け入れてもらえない。毎日のようにケンカしてましたね」。自分の考えが正しいことを証明するためには、自分で店を開くしかない――。それが、少しでも早い独立を目指すモチベーションとなった。
理容室のイメージをガラリと変える店づくり。
では、関さんが考えていたのはどのようなことだったのか。「技術的な面では、昔から理容師をリスペクトしていました。だから美容ではなく理容業界を選んだのです。それなのに、客離れが進んでいる現実がある。これは見せ方や伝え方、つまりブランディングがうまくないのだと思いました」。自分の店を設計する際に徹底したのは、従来の理容室のイメージから離れたインテリアにすることだった。例えば、天井を這うむき出しのパイプは工場のように無骨な印象。一方で、白やパステルカラーの壁からはフレンチカントリーの素朴さも感じられる。「ある時、パン屋さんと間違えて入ってきた人がいて。よし!と思いましたね」と関さんは笑う。
インテリアプラスαでお客さまの心をしっかりと掴む。
高い再来店率が苦しい日々の励みに。
演出さえしっかりすれば、理容室は現代の男性にも受け入れてもらえるはず。そんな思いで店をオープンさせたものの、「最初はまったくお客さまが来なかった」と関さん。自身の通っていた高校が近く、ある程度土地勘がある中で選んだ場所だったが、スタートして3カ月は閑古鳥が鳴く日々。「やはり理容室はダメなのか」。そんな不安に苛まれたという。それでも月日が経つうちに、少しずつ手応えを感じていく。自信になったのは、再来店率が80%以上だったこと。「続けていればなんとかなるかも、と思いました」。軌道に乗ったのは、オープンして1年半後くらいから。今の悩みは人手が足りないことによる、予約の取りこぼし。関さんの指名は常連客ですら予約が取りにくく、新規のお客さままではとても手が回らない状況だ。
お客さま目線のサービスが信頼へと繋がる。
もちろん、ただ「おしゃれなバーバー」というだけではお客さまは定着しない。関さんはカットはもちろん、シェービングの技術も人一倍磨いてきた。5年前からヒゲデザインに特化した横浜のバーバー「BARNEYS BARBER’S SHOP by KAMISORI CLUB 148」でも週2回腕をふるう一面を持つ。また薄毛対策など頭皮ケアにも力を入れており、まずはその人にあったシャンプーの選び方から丁寧にアドバイスをするよう心がける。シャンプーは時に店販品を紹介することもあるが、店にないものを勧めることが多い。「一番避けたいのは、お客さまが押し付けがましいプレッシャーを感じてしまうこと。店の商品ではなくても、お客さまが求めている情報を提供したい。それが、最終的に信頼へ繋がると思うからです」。スタイリッシュな空間と、お客さま目線の確かなサービス。それがリピーターの心をしっかりと掴んでいる。
代表インタビュー
Q.メニューにはどのような特長がありますか?
A.単品の組み合わせで選ぶスタイルです。
カット+シェービングなどセットメニューを設けるのが主流ですが、あえて単品だけの表示にしています。それは、お客さま主導でメニューを選んでほしいから。セットメニューは値ごろ感を出せるメリットがある一方、お店側の都合も透けて見えます。単品ならお客さまは本当に求めているメニューだけ選べますし、店側も“ひとつひとつ自信を持った技術を提供しているのだな”とお客さまに感じてもらえると思います。
Q.経営者として意識していることはありますか?
A.スタッフが働きやすい環境をさらに整えたいですね。
長期休暇のほか、月に7日間の休みを確保しています。今は人手が足りないものの、新しいスタッフが入れば週2日は休めるようにしたいですし、1日の労働時間も短縮したい。最近は人材不足が深刻で、スタッフを募集してもなかなか応募がありません。それは、若い人の目に理容師が魅力的な職業に見えないから。そのイメージを変えてもらうためにもバーバーのかっこよさをアピールしていきたいですし、同じ志を持つ仲間が増えていけばいいなと思っています。
Salon Data