本音を引き出す「聴く」技術本音を引き出す「聴く」技術
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「バーバー」人気の理由

今「バーバー」が人気の理由

近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。

ART VIVANT(愛知県名古屋市)

女性客が6割以上。
時代に左右されない経営術とは?

1938年に蒲郡で創業。その後、名古屋の千種区に移り、3代目の大須賀広士さんが「ART VIVANT」のオーナーに就任したのは1990年のこと。以来、同じエリアで移転拡張を続けてきました。就任当時は理容室と美容室がはっきり棲み分けされていた時代。にもかかわらず、「理・美容室」というスタイルでサロンをスタートさせた大須賀さん。長年にわたり地元で愛され続けてきた理由は、そのしなやかな発想にありました。

テーマは理容と美容の垣根を超えたサロン。

日本で理容師の、パリで美容師の基礎を学ぶ。

「ART VIVANT」があるのは、名古屋市街地の東に広がる閑静な住宅街。地域密着型のサロンとして、先代が移転してきたこのエリアで約50年営業を続けてきた。改装を重ねた建物は白塗りの壁が印象的で、モダンな美容室を思わせる造り。一方、モノクロのサインポールが看板の下でさり気なく回る。「基本理念はバーバーイズム。でも、ここは理容と美容の垣根を超えたサロンなんです」と大須賀さん。大須賀さんは理容師一家の三代目だ。家業を継ぐと決めたとき、先代に「これからは理容も美容もない時代」と言われたそう。そこで修業は理容師としてスタート。23歳の時にフランスで開催された世界理美容技術選手権大会で見事入賞すると、その後パリで美容師としてのキャリアを積む。理・美容双方の経験を経て、30歳で「ART VIVANT」のオーナーに就任した。

  • 住宅街を貫く幹線道路沿いという好立地。駐車場は10台分あり、遠方から訪れる常連客も多い

  • モノクロのサインポール。店のベースはバーバーであることをさり気なくアピールする

技術に感性をプラスしたスタイリング。

大須賀さんが考える「理容と美容の垣根を超えたサロン」とは、どのようなサロンなのか。「理容には理容の、美容には美容のよさがある。そこをうまく融合させています」。最も重要視しているのが、理容師としてのテクニックだ。「日本の理容技術は素晴らしい。そのことは海外経験の中で実感しました」。修業時代に徹底して身に付けたスピィーディかつ正確なカットは世界レベル。そこにもうひとつの要素を加えていく。それがパリで学んだ、美容師の得意とする感性だ。「軸足を置くのは理容師としての自分。でも、スタイリングには感性も必要です。男は男らしく、女は女らしく髪を整えたい。基本に宿る美しさこそ、理容師が表現すべきことだと考えています」。

  • カット中の姿勢が美しい大須賀さん。「理論的に基礎を習得し、磨いていくのは一流のアスリートと同じ」と語る

  • 近年新しくしたロゴマークには「Ladys & Gentleman」の文字を入れた

ブレない信念が、時代に左右されない安定感を生む。

女性客も意識したバーバーチェア。

店内の造りも独特だ。エントランスから中に入ると、左手にあるのが理容コーナー。木をふんだんに使い、ダークブラウンでまとめられた内装は英国式のトラディショナルな雰囲気。そして右手には白が基調で、窓から自然光が降り注ぐモダンな美容コーナーがある。さらに2階には、半個室の特別スペースも。技術的な考え方同様、店内も理・美容のハイブリッドだが、「女性でも理容コーナーを好む方はそちらでカットします」と大須賀さん。それは顧客ファーストで考え、サロンにいる間は少しでも気持ちよく過ごしてもらいたいから。椅子をすべて男性用のバーバーチェアに統一しているのも「男性がゆったり座れるよう設計された椅子は女性が座っても心地いいじゃないですか」と理由は明快だ。

  • 理容コーナー。バーバー発祥の地であるブリティッシュ風のインテリアは男性のみならず女性にも好評

  • 美容コーナーは2階まで吹き抜けで、窓が多く明るい雰囲気。モードを意識した内装でまとめている

価格に見合ったサービスで対応。

バーバーであり、美容室としての一面も持つサロン。特にバーバー面を強調してこなかったこともあり、顧客の6割以上が女性だ。「女性は感性に敏感ですし、男性は安心感を求めてくる。自分としては理想的な男女バランス」と大須賀さん。カットは5,300円~、男性がシェービングを付けると8,800円~と周辺の店より高めの設定にもかかわらず、新規顧客の再来店率は高いという。「スタッフが心がけているのは、お客さまに失礼がないように接すること。いい緊張感を持って、品よくおもてなししたいと思ってます」。そんな姿勢も含め、価格に見合ったサービスだと顧客は感じているのだろう。オーナーになって間もなく30年。その間、美容師ブームがあり、今バーバーの機運が盛り上がる。「ブームはいずれ落ち着くもの。自分の軸さえブレなければ大丈夫であることは、長い経験でわかっています」。バーバーをリスペクトしつつ、その枠にとらわれない自由な発想が、時代に左右されない安定感を生んでいる。

  • 2階にある半個室のカットスペース。椅子も最高級クラスのバーバーチェアで同時に3名まで利用できる

  • 先代から受け継いだ和剃刀は世界的な鍛冶職人の手によるもの。山村製作所のハサミなど道具も一流にこだわる

オーナーインタビュー

大須賀広士さん。名古屋市出身。幼少より理容師である両親の影響を受けて育つ。1984年、仏カンヌで開催された世界理美容技術選手権大会で入賞。翌年、同日本大会で部門優勝。イギリスやフランスでの研修を経て、1990年に「ART VIVANT」を設立。NVQ国際ライセンス認定官として活動するほか、理美容師の離職率改善と所得向上を目指して20年にわたり技術講座を開いている

Q.理想とするのはどのようなサロンですか?

A.究極的にはファミリーサロンですね。

住宅街にあるサロンなので、多くの常連客に支えられています。お越しいただいているのは「上品さ」を求めているお客さまです。20年も前からヘッドスパやフットマッサージを取り入れたり、店内すべての水をマイナスイオン水に変えたり、美と健康には力を入れています。それが女性客の多い理由のひとつかもしれません。長年営業しているため、常連客がご子息やご息女を連れてくることも増えてきました。あらゆる年代の方にご満足いただけるサロンを目指しています。

Q.今の理美容界をどうお考えですか?

A.この業界をもっと盛り上げていきたいと思います。

先人から学んだことを伝承していくのも自分の使命だと考えています。そこで技術と理論、人間学を系統立てた教育プログラムを開発しました。その講座は20年前からスタートさせ、国内では約6,000名の卒業生を輩出、アジア各国からも要請を受けています。特に近年はバーバーをやりたいという人が増えてきたな、という感触があります。ちゃんとした技術や理論が必要とされる時代です。自分も店以外の活動を継続することで、この業界の力になれればと考えています。

Salon Data

ART VIVANT 【アール ヴィヴァン】

アクセス
地下鉄吹上駅から徒歩10分
創業年
1938年
店舗数
1店舗
設備
セット面13席
スタッフ数
8名
URL
http://www.art-vivant.co.jp/

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