「バーバー」人気の理由
今「バーバー」が人気の理由
近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。
MERICAN BARBERSHOP(兵庫県神戸市)
新たなカルチャーを創造し、発信する。
神戸で熱烈なファンを生む秘密とは?
神戸メリケン波止場から、独自のカルチャーを発信する「MERICAN BARBERSHOP」。ネオクラシックなインテリアや、壁のないサービス、店内で楽しめるクラフトビール。
さまざまな新機軸を打ち出し、話題を集め続ける注目店です。
その在り方とブレることのない信念について、仕掛け人たるオーナーの結野多久也さんに伺ってみました。
「イメージに共感できる奴だけ来ればいい!」
絞り込んだターゲティングが、ファン獲得の秘訣。
強烈なメッセージ性を放つバーバーの異端児。
「MERICAN BARBERSHOP」の存在感は、強烈だ。流れに乗るよりも、「ここで文化をつくり、発信する」という力強いメッセージが感じられる。それはオーナー結野多久也さんの突き抜けた個性によるものが大きい。このバーバーを訪れる人はその個性に惚れ込み、やがて繰り返し足を運ぶようになる。ただ髪を切る場としてではなく、自らのセンスを磨く大人の社交場として。
35歳、クリエイティブ職。絞り込んだ想定ターゲット。
想定したユーザーターゲットは“35歳の男性。好きな服はカジュアルでスーツがキラい。職業は、クリエイティブなローカルCEO”と、実に細かい。結野さん自身と近い世代に絞ることで、イメージの共有をしやすくした。店を満たす音楽、本、道具。これらのカルチャーが伝わる相手が来てくれればいい。「ユーザーに擦り寄っていたら、強烈なフラグは立たないですから。なら事故ってもいいから、共感できる奴だけ来い、というスタイルで行こうと」。狙い通り、現在の客層は30代が約60%。しかしそんな“カッコイイ30代“に憧れる若者も増え、20代も30%ほど。結野さんが目指す「継承される文化」が確実に根付き、花開いている。
目標はソーシャルのハブであること。
髪を切るのは、その一要素。
妥協なく選んだ高品質のコーヒーとビール。
お客さまが自らの感性を磨き、またスタッフやお客さま同士の感性と響き合い、高め合える場。そんなソーシャルのハブとなることが、こちらの大きなコンセプトだ。そのツールとして、無料でサービスされるコーヒーや、店内で楽しめるクラフトビールがある。もちろんどちらもただの脇役ではない。ビールは味わいと風味に定評がある「ROGUE ALES」、コーヒーは西宮の名門ロースター「ゆげ焙煎所」の豆を一杯ずつグラインダーで挽いてからフレンチプレスで。専門店顔負けの本格派の味が、バーバーで楽しめること。それもまた、このバーバーの付加価値だ。
リラックスではなく刺激を提供することで高いリピート率を実現。
「カットだけなら競合が多い。ならばそれ以上の価値を」。それが「MERICAN BARBERSHOP」の狙い。「髪を切りに来たら、クールな奴がカウンターでビールを飲んでいる。その一員になりたい、と思ってもらえれば」と結野さん。一般的な理美容室のようにリラックスを求めてくるのではなく、むしろ刺激を求めて来てほしい。逆転の発想とも呼ぶべきスタイルだが、それが支持を集めていることは確実だ。なぜなら顧客リピート率は、驚異の90%以上。その数字こそ、お客さまの満足度の高さを明確に物語っている。
スタッフとお客さまとの間で、
物理的にも心理的にも、壁をなくすこと。
横に並ぶことで、仲間意識が高まる。
ここではサロンに付き物の受付カウンターがない。あるのはバーカウンターのみ。自然、カルテ記入や会計時に、スタッフは横にいることになる。実はこれこそが、“メリケンバーバースタイル”の象徴的な光景。横に並べば、同じ方向が見える。スタッフもお客さまも、仲間であり、身内というわけだ。そうして芽生えたコミュニティ意識は、さらに数々行われるイベントで深められる。DJイベントやクラフトビールの試飲会、パーティなど。社交場としての存在感は、このように高められていく。
ゆるさの根底にある、マナーの土台。
もちろんただ“ゆるい”だけの接客ではない。新人研修では名刺の渡し方やエレベーターでの立ち位置など、社会人としての常識も徹底指導。そうした土台がある上で、フレンドリーな接客を心がけるのだ。そうした緩急織り交ぜたサービスが、心の壁を軽やかに飛び越える。お客さまは、やがてここに来ることが楽しみになる。それこそが、ここ「MERICAN BARBERSHOP」の力強い存在感の秘密だろう。
オーナーインタビュー
Q.思い描くこれからのバーバーの在り方は?
A.美容と理容という垣根を飛び越えるような存在。
「理容だ、美容だ」というのは業界側の話で、お客さまの店選びには重要ではないはず。だからこちらの都合を押し付けるのではなく、そこの部分をボーダーレス、ハイブリッドにしていくことで、惰性で美容室に通っているような男性を、バーバーに呼び戻していきたい。そのためにはバーバーはクールな存在でないとダメだと思ってます。
Q.好まれるスタイルやカルチャーに共通点はありますか?
A.ネオクラシック。元がダサいもの、古臭いものこそ面白い。
たとえばカセットテープ。古くて不便で、少しダサいけれど、今聞くと独特の”味”がありますよね。そういうものに光を当てて、クールな部分をみせていきたい。理容室も同じ。昔ながらの理容室を、バーバーショップというクールな文化に再構築していけたら最高です。
Q.スタッフ教育や労働環境で気をつけていることはありますか?
A.優秀な人材に活躍の場を用意すること。それが僕の役割。
実力ある技術者や向上心あるスタッフが活躍する機会をつくることが何よりも大切です。うちでは先輩から後輩への技術レッスン手当、ジョブグレード制度の整備などで、上を目指せる環境づくりに取り組んでいます。アシスタントも努力すれば2年弱でスタイリストになれます。それがやがてサロン全体のレベルアップにつながっていきます。
Salon Data
MERICAN BARBERSHOP 【メリケンバーバーショップ】
- アクセス
- JR神戸線三ノ宮駅より徒歩5分
- 創業年
- 2015年
- 設備
- セット面6席
- スタッフ数
- 6名 ※2月から9名