理美容業は、「給与が上がらない」はホント?継続勤務者の時給から見えたのは…⁉

今回は、美容サロンの「給与」がテーマです。他業種・他職種に比べて「稼ぎが安定しない」と言われる理美容業ですが、本当でしょうか?今回は、リクルートワークス研究所の調査「全国就業実態パネル調査(JPSED)」(全国約5万人の同一個人の就業実態を毎年追跡調査)を使って、理美容師の給与を解説します!

(ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子)

初職の転職理由のトップ3には「給与不満」

※複数回答/出典:美容サロン就業実態調査(2023年4月)

理美容業は給与に関する不満が低くはない業界です。現在は美容師を離職している男女に、「初職(社会人として初めて就職した職業)を転職した理由」を聞いたところ、3位に「給与に関して不満があったから」がランクインしています。

なお、初職退職後に、約6割は美容師を辞めており(美容サロン就業実態調査P19)、理美容業の離職や採用の成功には、「安定した給与」が大切なポイントです。ところで理美容業の給与は本当に低いのでしょうか?

「理美容師」の時給は上がらない?

本当に理美容業の給与は低いのでしょうか?下記のようなグラフを見てしまうと、「ほら、やっぱり」と思われてしまうかもしれません。

※「生活衛生サービス職業(理容師・美容師・その他生活衛生サービス職業従事者)」を使って集計
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」より、2016年~2023年の平均値を集計

この図表は、【理美容師】と、総務・人事などいわゆるオフィスワーカーの【事務職】とで平均的な時給(給与を労働時間で割り戻したもの)を比較したものです。

男性のデータでは、20代の時給は大きく差がないものの、年代が上がるにつれて【事務職】の時給は上がっています(20代と50代とで比較すると77.6%増)。一方で、【理美容師】で50代の時給は20代と比較すると4.1%増であり【事務職】を下回っています。※このデータは、「社員(従業員)」のデータになるので、独立・開業・業務委託等が含まれていないことも影響しています。

※「生活衛生サービス職業(理容師・美容師・その他生活衛生サービス職業従事者)」を使って集計
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」より、2016年~2023年の平均値を集計

女性のデータも見てみましょう。女性の場合は、男性ほど大きな差はありませんが、時給の水準が事務職のほうがやや高く、20代と50代を比較した時給の伸び率も【事務職】の方が【理美容師】を上回ります。

ところでこのデータ、実は継続して働いている人のデータに絞ると違う結果になるのです。