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イノベーターが
見ている未来

vol.57

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

Cocoon 

VANさん (age.48)

コロナ禍でモノをいうのは、
SNS発信よりも顧客深度?

東京・表参道にあるヘアサロン「Cocoon(コクーン)」。2020年6月、2店舗目となる銀座店をオープン。代表のVANさんが大切にするのは、「顧客深度」と「スタッフ鮮度」。コロナでも売上ダウンを最小限にとどめることができた、その理由とは?

VAN(バン)さん/Cocoon代表取締役。1972年、長崎県生まれ。福岡県・福岡市内1店舗を経て、東京に。「DaB(ダブ)」、「HEARTS/Double(ハーツ/ドゥーブル)」を経て、2009年 表参道に「Cocoon」をオープン。乾かすだけ&手ぐしでキマる、”ノンブローカット”考案者としても話題に。
http://www.cocoon-van.com/

第1章スタッフ鮮度を保つために

「コロナで“しょうがない慣れ”している。
だから、スタッフ鮮度を落とさないこと。」

店名である「Cocoon」とは、「繭、脱皮/殻を破る」の意。“お客さまやスタッフが変われる場所でありたい。Cocoonで殻を破ってほしい”という想いを込めている

コロナで大変だったかと思いますが、「Cocoon」さんの状況はいかがでしたか?

ここ数カ月は前年同月比4~5%ダウンといった感じで落ち着いています。今年の4月、5月は前年比80%ダウンでしたが、5月20日から急にお客さんが戻ってきてくれて、たった9日間で、前年月比の70%くらいに忙しくなりました。

それはすごいですね。

うちは「顧客深度」を大切にやってきたぶん、ダメージが比較的少なかったほうかもしれません。「顧客深度」とは、お客さんと美容師の、関係性の深さ。お客さんから見たときに、美容室って何が違って、何を売ってて、その日何を買ったのか、意外とわかりにくいんですよね。お客さんが持っているモノサシ=感度と、美容師が持っているモノサシが、それぞれ違ったりします。それを、どう認識合わせしていくかが大事だと思っています。

この表参道エリアでも、いろんな話を聞きます。「SNSでバズっていた人が、コロナになったら1/10くらいのお客さんしか来ていない」とか…。うちのスタイリストもSNSをやっていますが、バズっているレベルのスタッフはいない。そこで思ったのは「顧客深度の深さが、お客さまの戻り率に関わってくるのでは?」ということです。

仮にSNSに特化している美容師さんが、「SNS 8割」「美容師2割」という力の入れ方だとしたら、リピート率は圧倒的に減るだろうと。バズるために、SNS上のタイトルだけ強いヒキをつくったとしても、実際現場での実力が伴わなければ、お客さまはリピートしないと思うんです。

「顧客深度」という言葉、いいですね。また後半でも詳しく聞かせてください。
ちなみに4月8日~14日の期間を休業したとのことですが、お客さま向けに、何か行ったことは?

各方面から、ECやクラウドファンディングの誘いがありました。でも、それって美容室の都合で、お客さんスタートではないように感じてしまい…。お客さんがクスッとなる、気持ちが少しでも軽くなるような企画ができないかなと。

そこで、アシスタントの発案で「スタッフ紹介リレー」を始めました。「1日いいとも(TV番組「笑っていいとも!」)」みたいに、スタッフが紹介制でつなげていく。お客さんも、担当スタイリストだけでなく、お店のスタッフを少しでも知っているほうが親近感が湧くでしょう?そのほうが来店へのハードルも下がり、会話のきっかけにもなります。そうすることで、顧客深度も深まるキッカケになればと思って。

スタッフが「やりたい」と言ったことを、尊重してくれるのですね。

尊重というほど寛容なことでもなくて…(笑)、素敵な意見でしたから。もちろん、すべてOKではなく、ダメなものはダメと言いますよ。僕の判断基準は「お客さんとの“続き”が作れるものはやる。作れないものはやらない」。シンプルに、“そこ”はスタッフみんなと共有したい。

そんなコロナ禍で、2020年6月に銀座店のオープン、11月に表参道店のリニューアルオープンがありました。

銀座店の物件は1年半前から探していましたが、コロナとドンピシャに重なって、3月末オープンの予定が6月に。11月には、表参道店の内装もリニューアルしました。税理士さんに「いまは投資をする時期ではない」と言われましたが…。でも、「スタッフ鮮度」を落とさないことが、このコロナ禍で自分がやるべき優先事項と思って踏み切りました。

「スタッフ鮮度」というのは、リフレッシュのような意味合いでしょうか?新規オープンだけではなく、リニューアルするだけでもそれが得られる?

はい。「スタッフ鮮度」とは、どのくらい新鮮で前向きな気持ちでいられるか、という意味合いです。スタッフが一番長くいる場所、目に入る場所である内装をガラリと変えることで、気持ち的な鮮度を変化させたかった。それを見たスタッフは「わー、こんな色に変わってる!」「これかわいい!」とかワーキャー言ってくれます。少しでも、スタッフが新鮮な気持ちになれればいい。それは、一過性のものかもしれません。でも、コロナで壊れてしまったいろんなことを元に戻すより、新しく作り変えるくらいの気持ちの変化が必要だと思ったんです。

スタッフだけではなく、いま世の中すべて「人の鮮度が落ちている」と思うんです。コロナでいままで“普通”だったことができないから、下向きになっている。当たり前が変わったから、できないことがあってもしょうがない、になる。みんな“しょうがない慣れ”していて、それがスタンダードになっているんです。無意識のうちに落ちていく現場の品質=スタッフの鮮度を、しょうがないとそのままにして、1年後に盛り返すほうが大変だと思うから。いま、やらなきゃ。鮮度を上げるまでいかなくても、落とさないことが大事です。

いまって明日どうなるかわからない、来月緊急事態宣言が出るかもしれない、そんな予測不能な世の中ですよね。今日できることを、明日に持ち越さない。いまできることを、全力でやる。それが1分、1時間、1日、1年となっていくから。11時に来たお客さんにも、20時に来たお客さんにも、同じ力で接する。ムラを出してはいけない。20時がくるのを待つのではなく、20時に向けて何ができるのかを考える。これからは、そういった“時間と正しく向き合う人”が残っていくと思います。

今回のリニューアルでも、1つだった時計を4つに増やしたのは、そんな意図をスタッフみんなに理解して欲しかったから。一方、お客さんもコロナで「次はいつ来られるかわからない」。お互いに、その「1回」がとても大事になっているんです。

コロナで、お客さまの変化は?

最近は、逆に紹介新規の方が増えていますね。「コロナで電車に乗りたくないから近所の美容室を利用してみたけど、ここのよさがわかった」「ずっとやってもらっていたからこれが普通だと思っていたけど、やっぱり違う」と言ってくださる方がいました。浮気されるのも、まんざら悪くないというか(笑)。そのおかげで「顧客深度」が深まったように思います。ほかのお店に行ったことで「Cocoon」のよさに気づき、そういったお客さまが、またあらたにほかのお客さんを紹介してくれます。

  • 休業期間中に行った「スタッフ紹介リレー」。1日1人ずつ、HPやInstagramで“人となり”を紹介。実際に来店したお客さまと、この内容で盛り上がったこともあったという

  • 銀座店は約80平方メートルに、わずか5席。ゆったりとした設計はコロナ前からのものだが、表参道店と同様、密にならない造り

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