サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.38

実例編紹介、介護タクシー…コロナ禍の集客とは?

兵庫県たつの市で自身のサロン「華むすび」を単身で運営している衛藤恵子さん。貸し切り状態で施術を受けられるプライベートサロンとして人気を呼んでいます。2018年のオープン時からサロンの施術と並行で訪問美容に取り組んできました。衛藤さんの訪問美容との出会いと、これまでの道のりについてお話を伺いました。

華むすび

  • 全スタッフ1名
  • 1店舗
オーナー:
衛藤恵子さん
訪問美容開始:
2018年
訪問施設数:
3施設(1回の訪問で5-6名)
施設訪問頻度:
1カ月に1回
訪問個人顧客数:
約50件
個人顧客訪問頻度:
3カ月に1回
訪問スタッフ:
1名
価格(カット):
2,750円〜、パーマ7,700円〜、カラー6,600円〜

Q

訪問美容を知ったきっかけは?

A

元同僚の紹介で、福祉施設でのボランティアから始めました。

出産・育児を機に、有償で訪問美容をスタート。

訪問美容の存在自体は、美容師を始めて3年目頃から知っていました。以前勤めていたサロンの元同僚からの紹介で、ボランティアで福祉施設にカットに行ったことがあったからです。
 費用をいただいて訪問美容をするようになったのは、育児との両立がきっかけです。義母がブライダル専門の美容師をしていて、出産前は平日はサロン、土日は義母の手伝いと、休みなく働いてきました。2011年に長男を出産したときに、それまで勤務していたサロンは退職しました。実家もサロンを経営していたので、出産後はフリーランスとして、育児に差し支えない範囲で実家や義母の手伝いで仕事を続けていました。
 2014年に長女を妊娠した頃、友人から、訪問美容とサロンを経営するオーナーさんを紹介してもらったのです。その方から「訪問美容の派遣スタッフとして登録しませんか?」とお声をかけていただきました。訪問美容なら子育てしながらでも働きやすいと考え、すぐに登録させてもらいました。そこで月3回ほど施設と個人の方の訪問美容を始めることになりました。

訪問美容をやっていくうちに、どんどんのめり込んでいきました。

育児との両立をきっかけに始めた訪問美容ですが、やっていくうちにどんどんやりがいを感じて「もっとやりたい!」と思うようになりました。
 高齢者の方に施術をさせていただいていると、身内の方には言いにくい「キレイになりたい」という本音をうかがうことがよくあったからです。介護が必要になると、身近な方々はお世話に精一杯で、ご本人がまだ「美容室に行きたい気持ち」をもっていることまで気が回らないようでした。高齢者の方々も「自分なんかがキレイになる必要はないのかも…」と思い込もうとしているのです。でも、カットしたご自身の姿を見ると「髪を切ってよかった!」と晴れやかな笑顔になるのです。キレイになると嬉しいのはサロンのお客さまも同じですが、サロンよりもずっと喜んでいただけることで、訪問美容を続けたい意欲がわき上がっていったように思います。「誰にでもできる仕事でないなら私がやる!」という気持ちになりました。

  • 出産前は平日も土日も休みなく働いていた衛藤さん。いまは「仕事ばかりではなく、プライベートを充実させる余裕がもてる範囲で仕事をしています」と語る

  • 衛藤さんのお子さまたち。ふたりの子育てをしながら働きやすい環境を考えた結果の訪問美容だったが、日に日にやりがいが高まっていった

Q

派遣をやめて自身で訪問美容をすることにした理由は?

A

自分のお店をオープンさせたことがきっかけです。

サロンオープン当初から、メニューに訪問美容を入れています。

義母の手伝いでしていたブライダルの仕事も、義母が高齢になるにつれて私がメインで任されることが増えてきました。将来的に引き継ぐためにも、私がサロンを構える必要があります。サロンを構えていないと、式場からの信用を得られないからです。それで、子育ても落ち着いてきた2018年11月に「華むすび」をオープンさせました。オープン時から、メニューの一環として「華むすび」で訪問美容を行うことにしたのです。人は雇わずひとりでやっているので、ブライダルや訪問美容の予約が入っていないときにサロンに立つという、不定休制で運営しています。

  • ひとりずつゆったりと施術を受けられる「華むすび」。上品な和風の空間で幅広い年代のお客さまがリラックスできる。着付けも行っている

介護タクシーや、以前登録していた会社からお客さまをご紹介いただいています。

訪問美容のお客さまは、現状は紹介と口コミがメインです。ひとつは、サロンのお客さまにも高齢の方がいらして、その方々が利用されている介護タクシーのドライバーの方からご紹介いただくことがけっこうあります。また、以前派遣登録していた訪問美容とサロンを経営しているオーナーさんが、お仕事を回してくださっています。その方が経営するサロンには、訪問美容に興味をもつスタッフがいないそうで、私にご紹介いただけたのはラッキーでした。
 自分でもチラシを作って施設への営業もしていたのですが、本腰を入れようと思った時期にコロナ禍が重なりました。現状では施設への出入りそのものが難しいため、ご挨拶してチラシだけお渡ししていますが、くわしいお話を聞いていただくことができないのが残念ですね。

  • 訪問美容の営業用に作ったチラシ。コロナ禍で営業は思うようにできていないが、紹介でお客さまを獲得している

Q

訪問美容をやってみて感じることは?

A

介護の知識は必要だと感じています。

介護職員初任者研修の資格に挑戦する予定です。

訪問美容やサロンで、高齢者の方から心から嬉しそうな笑顔をみせていただけて、日々やりがいを感じられています。何より、高齢者の方々は、会話するだけでも明るくお元気になってくださるのです。
 一方で、お体の状態が健康なお客さまとは異なるので、介護についての最低限の知識は必要だと感じています。そのため、今年の2月から介護職員初任者研修のスクールに通い始め、5月の資格取得をめざし勉強中です。施術に伺う際は、ご家族や施設の職員の方がいらっしゃるので、お客さまと1対1ということはありませんが、こちらに知識があることで、お客さまにも介護されている方にも安心していただけるのではないかと思います。

  • 短い中にも、おしゃれさを表現したヘアスタイル。「仕上がりを気に入ってくださった時の笑顔が、自分にも喜びを与えてくれます」と衛藤さん

Q

今後は訪問美容をどのように展開される予定ですか?

A

居宅のお客さまを増やしていきたいです。

施設ではなく、居宅介護を望む方のもとへ伺いたいです。

「華むすび」はサロンでも80〜90代のお客さまも多く、「もし介護が必要になっても施設には入りたくない」という方がけっこういらっしゃいます。理由を尋ねると、「施設に入ると集団生活のルールがあるので、規則に縛られたくない」と。施設でプロの介護を受けたり人と触れあうことを希望される方がいる一方で、お一人で過ごすことが好きな方やご家族と暮らしたい方もいるようです。私はそうしたご自宅で介護を受けるほうが向いている方のもとへ訪問したいと考えています。
 大きな施設のほうがビジネス的には効率がいいかもしれませんが、今までの訪問美容の経験から、それは私の仕事ではないような気がしています。「華むすび」ではサロンでもおひとりずつゆったりと施術させていただいていますので、訪問美容も自宅でのんびり過ごしたいと希望される方のところに伺ってさしあげたいと思っています。

  • 「サロンのお客さまが来られなくなったら必ず訪問したいです」。訪問美容でも着付けを行っている

衛藤さんからひとこと

 サロンワークと訪問美容では、施術も接客も勝手が違うことが多々あります。訪問美容に興味をもったら、まずは大手の訪問美容業者などに派遣で登録するなどして、現場に足を運んでみるとよいと思います。私もサロンで始める前に大手に登録して、そこで教わった技術や知識もたくさんありました。研修があったわけではありませんが、他のスタッフの方と一緒に回るので、現場で教えてもらいながら実技を学んでいった感じです。車イスの方の施術や、意思の疎通が難しいお客さまとのコミュニケーションなど、サロンとの違いを体感できると思います。

Salon Data

華むすび【ハナムスビ】

アクセス
JR竜野駅から徒歩15分、車5分
創業年
2018年
店舗数
1店舗
設備
セット面1席
スタッフ数
1名 
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000511637/

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