女性が活躍するサロン100

女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを、100サロン紹介していきます。

vol.33業界の常識を覆す360度評価システムに、失恋休暇。
ユニークな制度満載のサロンオーナーの熱い想いとは?

formage【フォルメージ】(チカラコーポレーション)

神戸市中央区

2003年、神戸・三宮に「formage」をオープン。「美容業界で一番働きたい会社になること」を目指し誕生した会社は、独自の待遇で美容師に人気のお店に。お客さまからも支持を受け、現在は6店舗に拡大しています。失恋した人が利用できる「失恋休暇」はテレビやネットニュースの取材を受けることも多数。そんなユニークな取り組みの裏にはオーナーの熱い想いがありました。常にアイデアを考え、雇用環境の改善に情熱を注ぐオーナー西さんに、創業当初から整備してきたという女性のための取り組みと、掛ける想いを伺いました。

1取り組み

母として、妻として働き続ける美容師を応援。
正社員のまま「時短」ができるフレックス制度。

どんな制度?

 産休・育休制度は人を雇う上での大前提と捉え、法定通りに取得が可能。育休後に復帰する場合は、正社員、フレックス制度を使った正社員、パートと3つの雇用形態から選択ができる。
 フレックス制度は子どもがいる・いないに関わらず、既婚女性が利用可能。完全週休2日、週30時間以上の勤務で、土日どちらかの出勤が条件。それを満たせば自分で時間を調整することができる。正社員のため社会保険も加入。給料は独自のシステム(取り組み2に記載)に基づく固定給に、歩合がプラスされる。正社員のときと比べると、時短になる分、固定給はどうしても低く設定される。それをカバーするため歩合をプラスし、モチベーションを高めるようにしている。

メリットは?

 会社側から「このような制度がある」とガイドラインを作って示すと、女性スタッフは将来を見据えて安心して人生設計ができる。グループでは、現在、産休・育休中のスタッフが2名、ママスタッフが4名、子どもはいないが結婚してフレックス制度を利用しているスタッフが3名。全スタッフの約2割が制度を利用していることから、時短でもより安定的な正社員として働けることが離職を防ぐ要因になっていることが伺える。

急な早退・欠勤への対応は?

 ママスタッフにとって、子どもの発熱などによる急な早退や欠席は避けられないもの。その場合、欠勤扱いにせず、時間単位で有給休暇を利用できる「緊急有給休暇制度」を設けている。フレックス制度利用者の場合は年間40時間。社員の場合は5日間を緊急有給休暇枠に設定。例えば、16時までの勤務予定だが13時に帰る場合は、3時間を有給にできる。子どもの風邪などで実際に多くのスタッフが利用しており、ママスタッフが働く上で大きな助けとなっている。

「formage」でママスタイリストとして活躍する澤田さんもフレックス制度を利用。「子育てと仕事、たのしく両立できています」と教えてくれました

「formage」でママスタイリストとして活躍する澤田さんもフレックス制度を利用。「子育てと仕事、たのしく両立できています」と教えてくれました

2取り組み

美容業界の常識を覆す! 売上以外のがんばりを反映できる
「360度評価」を用いた固定給与システム

どんなシステム?

 美容師の給与は、完全歩合制や「基本給+歩合」など、指名売上の影響が大きい形が一般的。だが、同グループでは独自の給与システムを構築。基本給、能力給、時間外手当や店長手当などの各種手当てから給与額を算出し、固定給としている。このうち、能力給は3ヵ月に1回査定を行い算出。その際は、仕事上で関わる上司や同僚、部下が被評価者を評価する「360度評価」を導入。お店で働いている自分以外のスタッフが自分の成績をつけ、店長も評価されるしくみになっている。
 フレックス制度を利用する女性にとっては、時短のために指名売上が下がった場合に、お店への貢献度などに応じた評価を得ることができる。

どうして作った?

 指名売上の何パーセントという歩合制の場合、売上以外のがんばりが評価されにくい。例えば売上100万円のスタッフが2人いて、1人が後輩の教育や他のスタッフのフォロー、雑務などをがんばっていて、もう1人はまったくやらないとする。それでも2人の給与が同じになるのが歩合の難点だ。そこで、もっとフェアでスタッフが納得でき、安心感のある給料システムはないかと考え、改善を繰り返して辿り着いたのがこのシステム。360度評価により、お店やほかのスタッフのための献身的な働きを給与に反映できる体制を実現した。

「失恋休暇がテレビなどに取り上げられることが多いですが、実は給与システムを作るのに一番時間と労力を使いました」とオーナー西さん。作成した後もブラッシュアップを重ね、現在の形を作り上げた

「失恋休暇がテレビなどに取り上げられることが多いですが、実は給与システムを作るのに一番時間と労力を使いました」とオーナー西さん。作成した後もブラッシュアップを重ね、現在の形を作り上げた

あたたかな笑顔溢れる「formage」の店内で。「360度評価をやっていると、みんな助け合いや感謝が大切だということがわかってくるので、お店の雰囲気も良くなります」と西さん

あたたかな笑顔溢れる「formage」の店内で。「360度評価をやっていると、みんな助け合いや感謝が大切だということがわかってくるので、お店の雰囲気も良くなります」と西さん

3取り組み

自分以外のスタッフを大切にできる人材を育てるため、
会社の理念を共有するセミナーや社員会を実施。

どんな取り組み?

 他のスタッフの負担が、産休や時短などにより増えてしまうことはどうしてもある。そんなときでも助け合いの気持ちが持てるよう、会社の「一緒に働く仲間を大切にする」という方針を伝える場を定期的に作っている。セミナーを2ヶ月に1回、社員会を半年に1回開催。いずれも勤務時間中に行い、オーナー自身が社員としての心構えや、制度の変更といった会社の動きを社員に直接、説明。10年以上、毎日更新しているブログでも、スタッフへのメッセージを発信している。

取り組みをはじめたきっかけは?

 創業以前に、「ザ・リッツカールトン・ホテル」の「インターナルカスタマー」という考え方に出会ったのがきっかけ。「中のお客さま」という意味の言葉が示す通り、「一緒に働くスタッフ同士をお客さまと同等に扱おう」という取り組みだ。「この考え方に共感して、今もずっとスタッフに言い続けています」とオーナー。ほかにも様々な本からアイデアや情報を得ているそう。

グループ店舗「LUXE」で店長を務める鬼生田さん。お店の雰囲気の良さの理由を伺うと、「会社の方針のおかげで、いいメンバーが集まってくるんです」と笑顔で話してくれました

グループ店舗「LUXE」で店長を務める鬼生田さん。お店の雰囲気の良さの理由を伺うと、「会社の方針のおかげで、いいメンバーが集まってくるんです」と笑顔で話してくれました

お店のスタッフの声やキャンペーン紹介などが掲載されたニュースペーパー。2月号にはサンタ営業や書き初め大会の様子が。スタッフの笑顔がいっぱい!

お店のスタッフの声やキャンペーン紹介などが掲載されたニュースペーパー。2月号にはサンタ営業や書き初め大会の様子が。スタッフの笑顔がいっぱい!

4取り組み

1人暮らしや男性スタッフへの福利厚生も充実。
時短や産休に対する理解を生み出す役割も。

どんな取り組み?

 スタッフ全員が利用できる制度のほかに、個別の事情に応じた制度も充実。1人暮らしのスタッフには家賃補助を、家族が増えたスタッフには、世帯主の場合に限られるが家族手当を支給。子どもが生まれた場合、1人当たり5,000円が手当として月の給与にプラスされる。

メリットは?

 一般企業と同等の福利厚生を目指すオーナーにとって、制度の充実はすべてのスタッフに向けられたもの。その一環として、既婚女性だけでなく、1人暮らしの人や家族が増えた男性の待遇も充実させている。オーナー自らが言い続け、制度でも示すことで、「お互いを想い合う気持ち」が生まれている。それが、産休・育休・フレックス制度を利用する女性への理解を深めることにもつながっている。

オーナーインタビュー

オーナー西靖晃(やすあき)さん。大阪や神戸のサロンを経て、2003年に独立。「美容師が一番働きたい会社」を目指し、様々な制度を策定。現在は兵庫県内に6店舗を展開している。

Q. 取り組みをはじめたきっかけは?

A. 美容業界の雇用体制が一般企業とかけ離れている。憤りを感じ、「美容師に愛される会社」を作ろうと考えました。

 自分が美容業界で働いてきて、突然クビを宣告されるなどひどい扱いを受けたことが多々ありました。「あまりに一般企業と雇用体制が乖離しすぎている。こんなことがまかり通っていていいのか」という憤りを感じていて、「もっとこうしたら、美容師が楽しくやりがいを持って働けるのではないか」というアイデアがどんどん溜まってきたんです。それを実現するために開業。「美容業界で一番働きたい会社」にするために、なによりも優先して「雇用環境の充実」に取り組んできたというのが当社の歴史です。
 一般企業と同じような福利厚生を考えると、社会保険と産休・育休制度は絶対にやらなくてはいけないこと。もちろん苦労はありますが、やるかやらないかは経営者がそのリスクを取れるかという心ひとつだと思うんです。美容業界で多いのは、余った利益をスタッフに分配せず、まずはじめに経営者が取ってしまうというケース。でも本来はまず雇用環境を整えて、余ったお金をようやく自分の手に取れるのが経営者。人を雇う上で当たり前のことだと思っています。

Q. 制度や取り組みについて、どのように知識を得たのでしょうか?

A. 実は新聞も本も読むのも好きではありません。でも日頃から考えていれば、自然と経済や世の中の動きが耳に入ってくるようになります。

 「人を雇う」ということは、その人の人生に少なからず影響を与えます。経営者として「いい影響を与えたい」と思っているなら当然、そういう会社を作っていかなくてはいけない。日頃からそういう気持ちでいると、ニュースや新聞、ビジネス本に目が行くようになります。
 例えば、今、取り組んでいるのは給与のベースアップ。消費税をはじめとして税金が上がり、実質賃金は下がっている。つまり減給と一緒なので、スタッフのモチベーションを上げるためにも平均賃金水準の引き上げを目指しています。そうなると、ニュースで大手企業が「ベースアップをした」と聞けば注目する。まだ当社はできていないので、悔しくなるんです。
 当社に入ることがその人の人生にとって「最高の選択」でありたいと思っているので、まだ会社の状況には満足していません。雇用環境を充実させるためのアイデアはいくつもあるので、実現するためにこれからも努力していきたいと思っています。

Salon Data

formage【フォルメージ】

アクセス
各線三宮駅より徒歩7分
創業年
2003年
店舗数
6店舗(チカラコーポレーション)
設備
7席
スタッフ数
6名(スタイリスト4名、アシスタント2名)※formage
URL
http://beauty.hotpepper.jp/slnH000247702/

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