イノベーターが
見ている未来

vol.10

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

QBハウス
キュービーネット株式会社

北野泰男さん (age.47)

進化する「10分1000円」、それを支えるスタッフ2400名。
QBハウスはなぜ、“人が辞めない会社”になったのか?

「10分1000円カット」で、理美容業界に革新を引き起こしたQBハウス。1号店オープンから20年目を迎え、国内外の出店数が600店舗を超える勢いで成長を続けています。そして2400名を超すスタッフを抱えながらも、高い時は50%もあった離職率を、最も低い時で12%にまで引き下げることに成功。限られた時間でクオリティを保ったカットを提供する育成ノウハウや、スタッフがモチベーション高く働き続けられる環境づくりの秘訣を探ります。

1969年、大阪府東大阪市生まれ。大阪外語大学卒業後、株式会社日本債券信用金庫(現あおぞら銀行)に入行。2005年にキュービーネット株式会社へ入社、2009年に代表取締役社長に就任。1995年創業の同社ではヘアカット専門店「QBハウス」を国内に508店、海外(シンガポール・香港・台湾)に106店展開(2016年5月1日時点)。その他に、20~40代の男女へ向けた「FaSS(ファス)」というブランド名でヘアカットサロン展開、訪問理美容サービスも行っている。
http://www.qbhouse.co.jp/

第1章「10分カット」に込めた想いと、それを叶えるノウハウ

「お客さまの問題解決への一番の近道を提供したい。
時間という“制限”が、新しい価値を生む力になります。」

「10分1000円」のカット専門店。従来の理美容の常識と異なり、業界内でも異色の存在です。ご自身はQBハウスのサービスをどうお考えですか。

批判する声があるのも承知しています。ですが「10分カット・カウンセリングも1分」という“制限”があるからこそ、深まる価値があると考えています。「この短時間で、お客さまの要望に応えるにはどうしよう?」と考えて試行錯誤する。“制限”があることが、本質を突いたサービスや新しい価値を生み出す力になっています。

理美容業は対処の連続です。お客さまが抱える課題を正しく把握し、目的をイメージして解決へ導く。これを限られた時間で行うことが、この仕事の魅力でもありますね。

スタイリストのみなさんが「10分カット」の技術を修得する秘訣は?

採用したスタイリストには、技術や接客を学んでもらう研修期間を設定しています。研修中も給料は支払います。本人の経験やスキルに応じて変わりますが、期間は最低1週間から6カ月。そこで技術を身に付けるというのもありますが、10分カットを成立させているのは、そもそもの技術に対する考えが、従来の理美容とは違うからです。

従来のヘアサロンは、非日常を演出することでお客さまを癒やすサービス。変化を出したり、さまざまなサービスで満足感を高めたり「遠回りを楽しむもの」といえるでしょう。一方でQBハウスのサービスは、問題を解決することだと考えています。髪が伸びたという変化を元に戻して、日常を快適にする。「シンプルで、一番の近道を探すこと」がQBハウスの役割です。

提供するサービスが異なるから、カット方法自体も変わってくるということですね。

問題解決への一番の近道を探す時に、余計な演出はいりません。例えば従来の理容師には「すべてハサミでカットすることが美学」という考えもあると思います。でも「短時間でさっぱりしたい」と望む人に応える手段として我々は、「ベースはバリカンを使い、細かな仕上げをハサミでやる」という考え方です。

こう話すと、「これまで築いてきた技術をバカにするのか」と怒る方もいますが、それは違います。お客さまがサロンを選ぶ選択肢のひとつとして、QBハウスのやり方を提案しているんです。非日常の癒やし・すべてハサミでカットしてもらうことに魅力を感じるお客さまは、そういったサロンを選ぶと思います。

昨年リリースされたスマホアプリ「カットカルテ」は、理想のヘアスタイルの長さや雰囲気を写真で伝える機能があります。このアプリも「10分カット」をスムーズにするために開発されたものですか?

QBハウスには、国内だけで年間1500万人のお客さまが来店されます。指名制をとっていないこともあり「どのスタイリストにあたっても、質のばらつきがないサービスを提供すること」が最重要課題です。その際、「お客さまが希望する長さを特定するのが難しい」という問題があります。なじみのお客さまでないと好みがわかりませんし、「すっきり」といってもそのイメージは人それぞれ。お客さまからしても、カタログのモデル写真を見ても自分とは違うし、バリカンで何ミリといわれたって理解できません。希望のヘアスタイルを伝えやすくする手段としてアプリを使ってもらうと、お客さまとスタッフのイメージを合わせることができるんです。

一定基準を満たす技術と、アプリを活用した要望の正しい把握、そしてお客さまが安心する対応。この3つが顧客満足度アップにつながります。おかげさまで弊社は、サービス産業生産性協議会が行っている「2015年度 顧客満足度調査(JCSI)」の”生活関連サービス部門”で1位をいただくことができました。(注※総計12万人以上の利用者からの回答をもとに実施している、日本最大級の顧客満足度調査。)

なので教育では、「お客さまに対応する姿勢」も大切にしています。私は技術者ではないので、一定ラインを越えた技術の差はハッキリとわかりません。お客さまも、それは同じだと思います。そうしたお客さま目線で考えると、お店の印象を最も左右するのは「接客応対の差」だと考えています。

アプリでは、お客さまからの評価も見ることができます。利用者としては便利ですが、スタイリストたちにとってはプレッシャーになりそうですね。

自分のサービスに満足してくれたのかは誰しも興味があるので、それをアプリで「見える化」しました。プレッシャーに感じてくれたら、それもいい効果といえます。評価は正しいものばかりじゃないかもしれない。でもそう感じたお客さまがいるからには「何がいけなかったんだろう」と考えるきっかけになって、新たな気付きが生まれるでしょう。また店舗評価は、お客さまが店を選ぶ際の基準にもなります。「お客さまを集める」のではなく、「お客さまに選ばれる店づくりをする」という我々のスタンスをあらわしているんです。

QBハウスでは、まず店内にある券売機で利用チケットを購入するシステム。「10分」というのはカウンセリングなどを含まないカットの時間で、たとえ超過しても追加料金はかからない

スマホアプリ「カットカルテ」は、サロン利用後の満足度などを回答するアンケート機能も搭載。利用チケットのバーコードを読み込んでから回答するため、アンケート対象者を利用者に限定できる

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