女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.77毎日朝礼で語り合う徹底した理念教育で、
ブランドサロンとママを両立させる取り組みとは?
douceur+LIM
大阪市北区
東京・大阪を中心に、海外にも幅広く展開する「LESS IS MORE(LIM)」。その中で「douceur+LIM」は「女性スタイリストによる女性のためのヘアサロン」として人気を呼んでいます。21名のスタッフ中4名のママが活躍中。ママスタイリストたちがイキイキと働くサロンを率いる、店長の原さんに「LIM」の女性活躍のポイントをうかがいました。
1取り組み
子どもの行事のために年6回の有給休暇が取れる。
どんな取り組み?
ママスタイリストたちは定休日以外に日曜・祝日に休みが取れ、9:00〜17:00の時短勤務をしている。フルタイム勤務のスタッフは週休2日制にして、勤務時間が同等になるように調整。時短でも全員正社員のまま雇用されている。また、子どもの行事のときは年6回まで有給休暇が取れ、6回以上になる場合もフレキシブルに休めるよう対応している。
なぜそうした?メリットは?
「douceur+LIM」には「LIM」でママ1号のスタイリスト・山根実佳さんが所属している。妊娠前まで全店でトップだった山根さんが産休に入る際、会社側は山根さんが続けやすいように「復帰に際しては自由にしていい」と伝えたそうだ。山根さんが子育てしながら働きやすい方法を模索していくなか、こうした制度ができあがっていき、子どもを産んでも続けるスタイリストが増えている。
2取り組み
引き継ぎはお客さまを交えて対面で、復帰の際はメールでアナウンス。
どんな取り組み?
妊娠したスタッフが産休に入る際は、お客さまのご要望をうかがいながら担当スタイリストがマッチングを考え、後任のスタッフをお客さまに対面で紹介する。育休後は、復帰することをお客さまにメールやハガキできっちり連絡している。また、引き継いだ後任が既存客をキープできている間は、その売上の一部を産休育休中の元の担当者に還元している。
メリットは?
引き継ぎの際、お客さまに後任スタッフを会わせてきちんとご挨拶することで、お客さまの信頼を得られるため、サロン全体の失客を防ぐことができる。また、引き継いだお客さまの売上を元の担当者に還元することで、必ず復帰して仕事を続ける意欲につなげることができる。
育休復帰後の担当は、基本はお客さまの希望を優先するが、サロンとしては元の担当者に快く返す体制になっているので、ママスタイリストたちが安心して休むことができる。産後は勤務時間が制限される分、担当できる顧客数は減るが、この体制でサロンとしてもスタイリストとしても、失客を最低限に抑えられている。
3取り組み
女性スタッフだけのサロンならではの、お互いへの気づかいがある。
どんな取り組み?
子どもの事情でママスタッフが早退する際に、まわりのスタッフが快く送りだしフォローする風土ができあがっている。また、妊娠中のスタッフが体調的に厳しそうなときなど、本人が言い出しにくくても、まわりから声をかけ助け合っている。
さらに、スタイリストたちは空き時間があるとサロンのミニキッチンでスープなどを作って、朝早くから夜遅くまで働くアシスタントたちをねぎらうこともあるそうだ。
背景とメリットは?
「douceur+LIM」は、妊娠や出産など、女性特有のライフステージを迎えたときに、本人たちが気兼ねなく働きやすい場をつくるために、女性スタッフだけのサロンとして作られた。男性では気づきにくかったり、声をかけにくかったりすることも、女性同士なら気づかいし合えて、働きやすい風土ができている。
「『LIM』はブランドサロンとして高い技術やスタイリングを求められ、みんな仕事に対する意識が高く、厳しい面もあります。アシスタントをねぎらうのは、普段厳しい分、モチベーションを上げてもらいたいから。また、スタッフ同士での気づかいが、接客に必要なおもてなしの心に結びつくことも学んでもらえると思います。ママスタイリストへのフォローも、いずれはみんなが通る道なので、当たり前のこととして受け入れられています」(店長の原さん)
4取り組み
毎日朝礼で会社の理念を唱えることで、「人を大事にする」意識を共有する。
どんな取り組み?
「LIM」には全社員が共有すべき経営理念や行動理念などが「Our Mission」として明文化され、スマホで社員が読めるようになっている。それを毎朝の朝礼時にみんなで読み上げて、「自分たちは何のために働いているのか」「どういう行動がかっこいいのか」など、会社が掲げる理念や美意識を常に共有している。
背景とメリットは?
「Our Mission」はもともとは社長である西村徹也さんが作ったが、時代や状況に合わせて更新している。2年に1回行われる「LIM CAMP」という合宿で、社員たちが「『LIM』をどうしていきたいか?」を話し合い、進化しているという。
「私は中途で『LIM』に入社しましたが、『LIM』はDNAが強く、仕事に対する意識や、スタッフ間の信頼関係の築き方がアシスタントにまで深く受け継がれていると感じます」(店長の原さん)
その結果、「お客さまやスタッフを大事にする」「信頼される人になる」という、取り組み3のような女性スタイリストが働きやすい風土が自然にできあがっている。
店長インタビュー
- Q. スタッフが協力し合う風土のほかに、働き方の違う一般のスタッフとママスタッフが協調できている秘訣は?
-
A. ママスタッフである先輩たちが、きちんと働く姿勢を見せてくれていることです。
ママスタッフたちは、スタイリストとして私にとっても大先輩の方々。子どもがいることや時短勤務を一切言い訳にせず、勤務時間が短い中で売上をのばし続ける努力を人一倍がんばっている人たちです。お子さんの体調が悪いときにも、会社に迷惑をかけまいと苦労されている姿をみんなも見ているので、尊敬されています。スタイリストとしてもママとしても、先を歩む働く女性の姿を見せてくれているのです。若いスタッフたちも「先輩のようになりたい」と思ってさらに協力してくれて、好循環に結びついています。
- Q. 女性スタッフが活躍しつづけるサロンにするために、アドバイスをお願いします。
-
A. ママスタッフがいることで、サロンは確実に強くなります。
ママスタイリストが増えるとともに、お子さまのいるお客さまが確実に増えました。「douceur+LIM」には子連れのお客さま向けのキッズスペースがあり、ママスタイリストを指名してそこをご利用されるお客さまも増えています。今は、女性のお客さまが働きつづける女性を支持してくださる時代です。多様な働き方をする女性を受け入れることで、お客さまにいっそう愛されるサロンになり、サロンが強くなっていきます。だからこれからママになる若い人の力を信じて、長く働ける環境を準備してあげてほしいですね。
Salon Data