女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.86未経験者中心に採用し、10年で40店舗に。
ママ幹部も生んだ独自の取り組みとは?
FAST NAIL(コンヴァノグループ)
東京都渋谷区
首都圏、東海、関西に40店舗のネイルサロンを展開する「FAST NAIL」。創業10年と比較的新しい会社ながら、急成長して注目されています。スタッフの9割が女性であることから、「女性が長く輝ける会社」を創業当初からのコンセプトとしています。その中での取り組みと実績について、経営母体の株式会社コンヴァノ・代表取締役社長・CEOの鈴木明さん(写真右)と、人事・総務・トレーニング部部長の江頭渉さん(写真左)にうかがいました。
1取り組み
創業当初から女性を大事にすることが当たり前の風土。
社保や産休・育休制度を完備し、再雇用制度も。
どんな取り組み?
「FAST NAIL」は2007年の創業当初から、社会保障完備。出産・育児に関する制度もすべて法定通りに取得させている。現在、出産後に復帰したママスタッフが5名、産休・育休中のスタッフも5名いる。また、一度「FAST NAIL」を退職した社員を再雇用する「カムバック・パス制度」もある。この制度を利用して、出産・育児による退職から復帰したスタッフが2名、その他の理由で退職し、戻ってきたスタッフは3名いる。
なぜそうした?メリットは?
業界全体でもネイリストは女性比率が高い職種だ。そのため、「FAST NAIL」では創業当初から「女性が長く働ける会社。女性が輝ける会社」をコンセプトとし、女性活躍が当たり前の風土となっている。「291名の総スタッフの9割が女性です。彼女たちがさまざまなライフステージの中で、ずっと長く、当社で活躍してもらうことが、会社の発展のために欠かせないことです」(鈴木さん)。出産・育児による休業・退職だけでなく、一度他社に転職した社員まで受け入れるのは、すべての経験が仕事に活かされると考えているからだ。「カムバック・パスで戻ってきたスタッフは、当社とは異なるサービスを学んできて接客に深みが増しています。それも立派なキャリアのひとつです」(江頭さん)。
2取り組み
多くの未経験者を採用し、自社でゼロから育成。その後も多様なキャリアパスが。
どんな取り組み?
新卒採用では、一般の大卒者が約70%、高卒者が約15%、専門学校卒者が約15%と、ほとんどがネイル未経験者を採用。自社にアカデミーを作り、入社後の研修でネイルの技術や接客を徹底的に教えている。ネイリストとしてデビューした後も、ストアマネージャー(店長)、スーパーバイザー、トレーナー、本社スタッフなど多様なキャリアパスを設定。ステップアップのための教育プログラムが用意されている。
背景とメリットは?
「当社は創業10年と、業界としては後発でした。そのため、競合他社がやっていない革新的なサービスや経営をする必要がありました」と鈴木さんは語る。人材確保もそのひとつだ。ネイルスクール出身者の人数には限度がある。店舗拡大を図る「FAST NAIL」は未経験者を自社で育成する道を選ぶことで、採用の母数を増やすことができた。「ネイルの技術はいくらでも教えることができますが、お客さまに対する根本的な心構えは、個人のパーソナリティによるものが大きいです。そのため当社では、技術の経験よりも、接客業のプロになれる人材かどうかを採用時に重視しています」(江頭さん)。
入社後のキャリアパスを示し、ステップごとに教育することで、女性スタッフたちが自分の将来をイメージでき、長く働こうという意欲が生まれている。
3取り組み
独自の教育体制を整え、女性スタッフを経営幹部候補として育成。
どんな取り組み?
さまざまに用意されたキャリアパスを女性たちが無理なくステップアップしていくために、「コンヴァノ・ユニバーシティ(CU)」という独自の教育体制を整えている。すべてのキャリア階層でそれぞれクラスが用意され、CUを受講してパスすることで、キャリアアップすることができる制度だ。
また、サロンの現場では、売上はもちろん、客数、客単価、サービス時間などの数字を分解して読み取る訓練をしている。スタッフ一人ひとりの接客行動を、感覚ではなく数値化して把握できるようにしている。
背景とメリットは?
店舗数を増やして会社を成長させるためには、マネジャー職の育成が欠かせない。「一流の技術者がそのまま一流のマネジャーになれるとは限りません。そのために、マネジメントができる人材に育てるための教育が大事と考え、CUや数値の把握により、良い人材を育成できています」(江頭さん)。
「当社は、ブランド認知度、 顧客満足度、マーケットシェア、高効率オペレーション、従業員満足度のすべてで業界No.1を目指し、 『2018年までに、ネイルサロン業界で最高のおもてなしを提供する圧倒的なリーディングカンパニーになる』というビジョンがあります。このビジョンを常に示してスタッフと共有しているので、スタッフ全員が一つのチームとして取り組んでくれています。スタッフも『経営に参加している』という意識をもってくれるのです」(鈴木さん)
4取り組み
スタッフ一人ひとりの想いを受けとめるコミュニケーションで離職を防ぐ。
どんな取り組み?
「FAST NAIL」では、各店舗内での女性スタッフ同士のコミュニケーションも多いが、複数店舗を統括するスーパーバイザー(エリアマネジャー)や、本社スタッフも店舗スタッフと頻繁に対話することを意識している。約260名のネイリストたちそれぞれの現状や悩みも把握できるようにしている。
背景とメリットは?
創業当初、出産を理由に退職するスタッフもいた。「当社には制度もちゃんとありますし、育児をしながら働く場合に、自宅に近い店舗に異動したり、早番を多めにするなど柔軟に対応する準備がありました。けれど、コミュニケーション不足でそれを知らずに辞めてしまった人もいました」(江頭さん)。そうしたことを防ぐためにも、スーパーバイザーたちの存在は大きいという。スーパーバイザーはひとりが5〜6店舗を担当し、常に担当店舗をまわっている。店舗スタッフにとっては、店長とは別の立場で相談ができる、よきお姉さん的な存在になっているという。
代表取締役社長インタビュー
- Q. サロンが女性活躍に取り組むには、どうしたらよいと思いますか?
-
A. 会社の特徴やミッションに共感してもらうことが大事だと思います。
美容業界を含め、サービス業は勤務時間や休日など、雇用条件では他業界に比べてきびしい面があります。その中で最低限の法定の福利厚生を整えるのは当然ですが、人が採用しにくい時代にこの業界や自社を選んでもらって、長く活躍してもらうためには、スタッフに会社のビジョンや理念に共感してもらう必要があります。「この会社で働きたい」と会社や仕事に誇りをもてるように、他社にはない会社の強みや特徴を打ち出すことが大事なのではないでしょうか。
- Q. そのために社員に伝えているのはどんなことですか?
-
A. 変革を起こし続けること、誰もが主役であることなどを伝えています。
業界No.1を目指すビジョンもそうですが、会社が大切している価値観を伝えています。それは、「変革を起こし続けること」「誰もが主役であること」「個の成長を実現すること」「正しい姿勢で信頼される誠実な企業になること」です。特に、スタッフ一人ひとりが主役として、それぞれの目標に向かってチャレンジでき、成長できる場であることを社員が身をもって体験できていると思います。まだまだ課題は多いですが、課題も社員と共有して、「一緒に会社を大きくしていくんだ」という意気込みにあふれていることは確かです。
Salon Data