「バーバー」人気の理由
今「バーバー」が人気の理由
近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。
@110 BARBER SHOP(福岡県福岡市)
計算し尽されたシステムと教育。
ムダをなくし顧客満足を高める方法とは?
博多駅から徒歩10分ほどの場所に店を構える「@110BARBER SHOP」は、今話題を集める注目のメンズサロン。高い再来率につながる顧客満足と、スタッフの働きやすさの両方を重視し、さまざまなアイデアを導入しています。その経営の基本は「スタッフの感覚に頼るのではなく、理論を積み重ねる」こと。元理容師で、現在は経営に専念する代表・伊藤孝司さんの話から、その成功の秘訣が見えてきました。
基本理念は“非属人化”。それがスタッフの負担を減らし、店の収益を上げる。
3年かけて作り上げたカウンセリングシートを活用。
お客さまがスタッフにつくサロンは多いが、こちらではあえて「人ではなく、店につける」ことを目指す。そのために重視するのが、技術と知識の均一化だ。「いつ来ても、誰が担当しても同じクオリティのサービスが受けられる」を目標に掲げる伊藤さん。そのためにまず導入したのが、病院のカルテを参考にしたというカウンセリングシートだ。詳細は企業秘密だが、3年かけて作り上げたというこのシートを埋めることで、別のスタイリストがついても好みのスタイル、嗜好、髪質などが一目瞭然となる。
システム化された教育プログラムで技術の底上げ。
独自のカリキュラムを組んだ週2回のアカデミーと、3カ月に1度の技術チェックで常に技術向上をはかっている。この充実した教育システムにより、新人スタッフがスタイリストデビューするまでの期間は平均2年とスピーディだ。「若いスタッフにも生活がありますから、活躍できる期間を長くしてあげることが重要。もちろん品質を守れる前提の上です」と伊藤さん。お客さまの満足度を担保しつつ、労働環境も守る。それによりスタッフの意欲が向上し、さらなる満足度へとつながるという好循環が生まれる。
明確な答えがない世界だからこそ、メニューは可能な限り可視化する。
お客さまのあらゆるニーズに応えるメニュー構成。
メニュー戦略にも独自のアイデアがある。基本分類は、より幅広いメニューの取っ掛かりとなる“フックメニュー”、収益や顧客満足度の柱となる“キラーメニュー”、そして2~3週間以内の再来客用に2,000円台で行う“メンテナンスメニュー”の3種。価格、時間効率、より深い悩みの解消など、さまざまな視点からお客さまのニーズをキャッチ。スタッフは提案しやすく、お客さまは選びやすい。そんなメニュー構成を目指している。
「選びやすさ」重視でヘッドスパの利用率も上昇。
ヘッドスパは30%ほどのお客さまが利用。とくにトライアル的な“ディープクレンジングスパ”は、より高度なスパへの入り口となる代表的な“フックメニュー”だ。ここでも基本となるのは「お客さまが選びやすいこと」。その他のスパメニューも時間、価格、効能から選べるようわかりやすく可視化している。「我々の仕事は“絶対”という答えがない世界。だからこそいろいろな部分を可視化していくことがお客さまのためになる」という伊藤さんの信念の賜物だ。
無骨にも見えるクラシカルな店内にも、お客さまとスタッフへの配慮が隠れる。
「かっこよさ」と「働きやすさ」をの両立を目指す。
インテリアは無骨ささえ漂う古き良きバーバーの雰囲気。しかし実はカット台まわりですべて作業が完結するように計算され尽くされている。たとえば「クロークまで往復する時間もムダ」という徹底したロジカル思考から、上着用のハンガーは鏡の横。クリッパー(バリカン)を多用することで、仕上がりの均一化とスタイリストの負担軽減も目指す。小さなことの積み重ねが大きな結果へとつながるのだ。
店販品の陳列にも、メンズサロンらしさが光る。
店販品はスタイリング剤やシャンプーのほか、電子タバコやトレーニンググッズなどもセレクト。これは「かっこよくなるためにここに来るわけですから、そのための情報が受け取れる場所でありたい」との思いから。ショーケースにスタイリッシュなグッズが並び、イギリスのデパートを思わせる雰囲気が漂う。これからは大人の男性のためのカフスやチーフなども展開する予定。
オーナーインタビュー
Q.ロジカルな経営にこだわられる理由を教えてください。
A.努力した人が報われる業種にしていきたい。そのための手段です。
センスが良い人に多くのお客さまがつくのは当然です。しかしそういった一部のスタッフだけが伸びる業界では、やがて先細りとなってしまいかねません。努力した人が、正当に報われる。そのために道具や体系化されたシステムが必要だと思っています。
Q.今後の理美容業界に必要なのはどのようなことだとお考えですか?
A.業界独自の「当たり前」をなくし、社会の常識に照らし合せること。
長い見習い期間がある、スタッフの年齢層が偏っている。そんな「この業界ならではの常識」が数多く残っている理美容業界。これでは若い人たちも夢を持って働くことができなくなってしまいます。細かい部分から見直して、「まっとうに働けて、食べていける」業種にすることが必要です。
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