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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.44

実例編訪問美容のみで月間売上200万を達成。

東海地区で高い知名度を誇る「TJ天気予報」グループ。技術・サービスの高さはもちろん、スタッフにとって働きやすいサロンでもあり、急成長を遂げてきました。2016年からは、取締役の松木正博さんを代表として訪問美容をスタート。短期間で多数の契約を獲得し、会社としての売上目標もほぼ常に達成しているそうです。現在までの取り組みについて、経営側の立場から松木さんにお話をうかがいました。

TJ天気予報

  • 全スタッフ413名
  • 31店舗
取締役:
松木正博さん
訪問美容開始:
2016年
訪問施設数:
約50件(1回の訪問で2名〜70名)
施設訪問頻度:
月に1回〜4回
訪問個人顧客数:
約100名
個人顧客訪問頻度:
2カ月に1回
訪問スタッフ:
9名(専任4名、兼務2名、サポートスタッフ3名)
価格:
カット2,500円〜、パーマ6,800円〜、カラー6,800円〜

Q

「TJ天気予報」が訪問美容事業を始めたきっかけは?

A

少子高齢化の社会情勢から、ビジネスとして始めるべきと考えました。

サロンのお客さまから要望がありましたが、実際の人数は多くはありませんでした。

「TJ天気予報」は愛知を中心に地域密着型のサロンとして、東海地区のお客さまにご利用いただいていますが、この地域でも少子高齢化が進んでいます。「サロンに行きたくても行けない」というお客さまの声が多くなってきました。我々も「お客さまと生涯おつきあいさせていただきたい」と考えてました。そうした状況から「訪問美容はビジネスチャンスになるはず」と考え、私が責任者として動き始めました。
でもいざ訪問美容を始めてみたら、サロンのお客さまで個人宅への訪問美容を希望する方はまだ意外と少なく、月に1〜2名程度しかいなかったんです。会社のビジネスとするには、個人だけでなく施設もターゲットにすべきと、方向転換を図りました。

メインを施設への訪問美容に切り替えて、営業を始めることに。

施設向けの訪問美容を始めるために、既に訪問美容をやっているサロンの方々にお話を聞かせてもらい、必要なことや大変なことを教えてもらいました。みなさんがおっしゃっていたのは、「営業の大変さ」と「サロンとの施術の違い」。営業は私もやったことがなかったので、ビジネス書を多数読んで勉強しましたね。サロンとの施術の違いは、車いすや寝たきりの方への対応があること。まずは福祉や介護のことを知ろうと、ヘルパー2級(現・介護職員初任者研修修了)の資格を取りました。
ラッキーだったのは、立ち上げで採用したメンバー2名が訪問美容経験者だったことです。実は彼女たちは「TJ天気予報」の元社員なのですが、出産や育児のために当社を退職し、その後に訪問美容に携わっていたのです。彼女たちから知識と技術を伝授してもらったことが多々あり、ありがたかったです。

  • 訪問美容のメインメンバー。 上段が立ち上げ当初からのメンバーで左から、藤井美穂さん、飯尾麗子さん、松木さん。下段左から纐纈夏海さん、矢島蒼さん、半田さとみさん

「5つのもたない」を会社の訪問美容の方針としました。

いろいろな方々からのお話を伺ったり、私自身が勉強した結果、「TJ天気予報」の訪問美容の方針として「①店舗をもたない、②車をもたない、③商品をもたない、④社員をもたない、⑤会議をもたない」の「5つのもたない」を決めました。
①の店舗は、サロンとは完全に切り分け訪問専門チームとすることです。②の車は、訪問美容に移動美容車を使われてるサロンもありましたが、初期投資に数千万円かかるため、当社ではもたないこととしました。③の商品は、サロンではオリジナルシャンプーや美容器具などの物販も重要な売上を占めていますが、訪問美容では身軽で短時間での施術が重視されるため、お客さま側から要望がない限り商品は持ち込みません。④の「社員をもたない」のみ現在は変更しています。訪問美容は直行直帰で拘束時間が限定的のため、当初は業務委託やパートスタッフでスタートしました。しかし、サロンの社員スタイリストが訪問美容もやりたいと希望したことなどから、現在は訪問美容もメインメンバーは社員になっています。⑤の会議は、訪問スタッフは子育て中のベテランスタイリストが中心のため、施術業務以外の時間は拘束しないことを前提にしています。共有すべき事柄はSNSで連絡し合っています。

  • 他社の取り組みを参考にしながら、「TJ天気予報」ならではの訪問美容の方針を構築していった

Q

訪問美容の営業を始めてからはいかがでしたか?

A

大変でしたが、経営者としてのスイッチが入りました。

差別化のために、さまざまな特典を用意しました。

営業は私がひとりでやっています。会社の本部がある愛知県一宮市を中心に、愛知県北西部の市町村に限定し施設回りをスタート。大変だとは聞いていたので、断られる前提で何度も通う覚悟で飛び込みを続けました。それまでも役員という立場にはいましたが、訪問美容は自分が代表として経営していかなければなりません。改めて「スタッフのお給料を払えるようにしなければ」とスイッチが入り、1件でも多く契約を取れるようがんばれましたね。
すでに他の訪問理美容業者が入っている施設もあったので、それを変えてもらうために私なりに試行錯誤をしました。例えば、私たちとおつきあいいただいた場合の特典を設けました。施設職員さま向けには、美容家電を優待価格で購入いただけたり、サロンのヘッドスパを優待価格でご利用いただける特典を用意。その他は、施術後の撮影会などのイベントサポートや、初回から3回分の料金を半額にするなどです。

  • 松木さんが施設へのプレゼン用に作成した資料の一部。イラストや写真を使って特典内容がわかりやすく解説されている

サロンへの信頼や特典のおかげで、8カ月で20施設と契約。

営業を始めてから約1カ月後に、近隣の特別養護老人ホームから契約をいただきました。ここは特典のメリットよりも、サロン本部の近隣にある施設で、45年の歴史を持つ弊社への信頼から契約に結びついたのです。その他は特典が功を奏したのか、2016年の4月に営業をスタートし、その年の年末には20施設、月間で333人の利用者さまの施術をするに至りました。契約施設が増えるにつれ、取引している施設が系列施設を新設する際にお声がけいただくなど、順調に契約数が増え、コロナ禍になる2020年前までに50施設まで契約数が増えました。
一度契約をいただいた施設さまからは継続していただいています。評価いただいているのはスタッフの技術力とサービス力と伺っています。よいスタッフに恵まれて、本当にありがたく思っています。

Q

訪問美容をやってみて、経営者目線で大変なこと、よかったことは?

A

大変なことはほぼなく、スタッフのためにもよかったことが多いです。

初期投資や固定費がなく経営的にはメリットが多いです。

訪問美容で大変なことは先駆者の方々から聞いていたので、営業も、サロンとの施術の違いも覚悟ができていたため、さほど苦労とは感じませんでした。確かに営業は大変ですが、スタッフのためと思えば乗り越えられます。
それよりも、経営的にはメリットの方が多かったです。スタッフはベテラン中心のため、教育や研修の必要がありませんでした。また、初期投資や固定費がほとんどないため、利益率が高いのも訪問美容の特徴です。会社としての訪問美容の売上目標は月200万円ですが、コロナ禍の期間以外はほぼ達成できています。

スタッフが幸せそうなことが何よりです。

訪問美容をやっていちばんよかったのは、お客さまにとても喜んでいただけることです。私はカメラが趣味なので、それを活かして施術後に撮影会をやると、みなさん本当に素敵な笑顔で喜んでくださいます。
また、スタッフたちがイキイキと働いて幸せそうにしています。訪問美容を始めてから辞めたスタッフは1名しかおらず、仕事と家庭のバランスがよく働きやすいと言ってくれます。時間的な自由度が高く、自分の技術を活かせ、家族との時間もちゃんととれる働き方に満足してくれているんですね。訪問美容ならではの提供できる働き方だと思います。

  • 施設への特典・撮影会のイベントのためにヘアセット

  • プロにメイクをしてもらい、利用者さまたちに笑顔があふれている

Q

今後は訪問美容をどうしていきたいですか?

A

サロンが提供する美容の選択肢として確立していきたいです。

訪問美容のスタッフ同様、サロンスタッフにも働きやすい環境を提供したい。

訪問美容スタッフたちが働き方に満足してくれているのと同様に、サロンスタッフも含めた美容師の働き方全体を変えていかなければならないと考えています。現在、私以外にもう1名、サロンと兼務で訪問美容を担当しているスタッフがいますが、彼女のように誰もがフレキシブルな働き方ができるようになればと思います。訪問美容がサロンサービスのひとつとして当たり前のようになれば、どのスタッフも訪問美容に興味をもち、担当できるようになります。そのためにも、さらに訪問美容の顧客数を増やしていけるよう努力していきます。

松木さんからひとこと

サロンのビジネスとして訪問美容を始めるなら、まとまった人数の施術ができる施設の方が営業効率はよいと思います。ただし施設の場合は既に取引のある訪問理美容業者から自社に変えてもらう理由が必要です。私は特典を提供することで差別化を図りましたが、それが難しい場合は、まずは料金を元々入っていた業者と同等に設定することだと思います。訪問美容は利用者さま本人だけでなく、ご家族さまや施設の職員の方にもご納得いただく必要があるからです。サロンクオリティを提供したい想いで高めの料金に設定すると、ご家族や施設の方々に負担と感じられてしまうことがあります。とりあえず最初は、前に入っていた業者と料金を合わせてその他で差別化できる点をアピールし、契約が取れたら、その後のおつきあいのなかで、料金交渉の余地を見計らった方が得策。経営的にはまずは契約を取ること、そして取れた契約を継続することが大事だと思います。

Salon Data

TJ天気予報【ティジェイテンキヨホウ】

アクセス
尾張一宮駅・名鉄一宮駅から車で18分(本部及びart3 千秋店)
創業年
1977年
店舗数
31店舗
スタッフ数
413名(全店舗)
URL
https://www.tj-tenkiyohou.co.jp
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