PEOPLE.12 糸井重里 株式会社ほぼ日 代表取締役社長
新サービス “ほぼ日の學校”に何を思う? 『知らないことを、知っていきたい』
Profileプロフィール
1948年、群馬県生まれ。コピーライター、作詞家、文筆業、ゲーム制作などで活躍。1998年にWEBサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げる。インタビューやコラムなどのコンテンツがすべて無料で楽しめるほか、「ほぼ日手帳」といったオリジナル商品も大ヒットを飛ばし、根強いファンを多く持つ。
・「ほぼ日の學校」
https://school.1101.com/
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伝える側じゃなくて、“学ぶ側”に自分たちがいた。
千葉
(ホットペッパービューティーアカデミー・アカデミー長)
2021年6月の「ほぼ日の學校」のアプリ立ち上げから、約10カ月が経ちました。現在は、どのような状況ですか?糸井
どう言えばいいのかな…。たとえばキウイをつくるなら、栽培ノウハウはできていますよね。でも、僕らがつくっているコンテンツというのは、目に見えないいろんなものを出していくから、ノウハウがあるわけではない。つくる側の僕らが、コンテンツを生む力を鍛えられている真っ最中。
コンテンツのテーマは、みんなで毎週話し合っています。僕らは、無意識でいいものを体感しているところがあって。反応が少ない時は、「なんでダメなんだろう?」「甘いね」「しょっぱいね」…というのを、ずっとやっている。
僕自身は、「工場に泊まりこんでいる気持ち」というのかな。強い興味と、楽しみと、苦しさを感じている10カ月です。
びっくりしたのは、伝える側じゃなくて、“学ぶ側”に自分たちがいること。行きたい景色が、遠くには見えている。知らないことを、知っていきたい。これが今、一番感じていることですね。
千葉
YouTubeであれば、コンパクトな時間で、テロップなど装飾も華やか、というのがスタンダードです。「ほぼ日の學校」は、それと逆をいくイメージですが、その狙いは?
糸井
自分がコピーライターをしていた頃、ある企業広告で、長いボディコピーを書いていました。クライアントも、それをよし、としてくれて。
ただ、その時も、WEBサイトの「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げた時も「こんなに長いの、誰も読まない」とも言われました。
でも、読まない人が読まないことを、恐れちゃいけない。この文量と付き合ってくれる人と、付き合いたいというのが目的だから。当時も、自信がたっぷりあったわけじゃないけど、それと似ているかな。
「ほぼ日の學校」は、言いよどむことがあったり、予定稿にないことも起きます。それらを含め、見ている人もゲスト講師と同じ時間を過ごすことは、とっても貴重。
10秒の授業があったって全然OK、(明石家)さんまさんだったら5時間とかになるかもしれないですね(笑)。どっちかに決めてしまうという、思考自体が古臭いんじゃないかな。自由度を狭めることは、なるべく後に入れればいい。
千葉
この10カ月で、特に印象的だった発見はありますか?
糸井
ある程度、おもしろい時間がつくれることはわかっていた。逆に、「思ったほどうまくいかない」っていうことのほうが印象的かな。「ほぼ日の學校が、とてもいいよ。タメになるよ」って、それは僕らがどこかで思考停止しているのかもしれない。そこに、反省じゃなくて、“興味”を持っています。