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イノベーターが
見ている未来

vol.6

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

株式会社リラク

江口康二さん (age.42)

「許すこと」そして「弱い人間を上に立たせること」。
独自の手法で成長し続ける、リラクの経営術とは?

2003年に1号店をオープンして以降、2013年には100店舗を達成、2015年には、店舗総数で東京No.1となる約170店舗のリラクゼーションスタジオを関東圏で展開。破竹の勢いで成長を続ける「株式会社リラク」のパワーの源は、いきいきと働くスタッフたちにあります。彼らが同じ志をもって前向きに働けるのはなぜなのか?同社の「働きがい」のある環境づくりについて、代表取締役社長・江口さんにインタビューしました。

1973年、東京都生まれ。大学を卒業後、車の買取・中古車販売会社に入社。同社インターネット事業部長就任後、独自に開発したビジネスモデル特許で「日経優秀商品・サービス賞」を受賞。同時期に最年少役員に就任。同社退職後、2000年に株式会社リラク設立、2002年にリラクゼーションの派遣サービスを開始。2003年にはリラクゼーションスタジオ1号店を東京・渋谷にオープン。現在は4ブランドのリラクゼーションスタジオを、関東圏1都4県に約170店舗を展開するほか、エステティックサロンやパーソナルボディケアスタジオの運営、健康をサポートするiPhoneアプリ「リズミー」の開発・運営、ストレッチマシンの開発・販売と幅広く手がけている。
http://www.reraku.co.jp/

第1章すべてを失った20代。そこから見えた「真の幸せ」とは?

「幸せ=金銭的な成功ではなかった。
お互いに信頼できる関係性こそ“宝”です。」

江口さんはリラクを立ち上げる前、なかなか波乱に富んだ会社員時代を過ごしたそうですね。

大ジェットコースターでしたね。大学卒業後に入社したのは中古車の買い取り・販売会社。そこに入社しようと考えたのは、ベンチャー企業だったからです。いずれは世の中に役立つ会社を立ち上げたいと考えていたので、成長過程にあるベンチャーで「経営」を学びたかったんです。当時は社員80人ほどの会社でしたが、入社式に行ってみたら同期が86人も!社員が一気に倍になるって、めちゃくちゃですよね。

そこから会社はぐんぐん大きくなり、入社から3年半で東証二部に上場。僕自身も、開発した中古車オークションシステムが賞をとり取材を受けたり、会社では最年少役員になったり。株や投資によって億単位のお金も得ました。これが26歳のとき。クルーザーを買ったりと、完全に調子に乗っていましたね(笑)。ところがそんな生活はほんの1年くらい。会社の会長や社長が逮捕されたことで業務は多忙を極め、精神的にきつい日々になりました。その間にバブル崩壊のあおりもあって保有する株は下落、あっという間に億単位のお金はなくなりました。

失ったのはお金だけじゃありません。僕が大金を得たとき、「金を貸してくれ」とか「営業ノルマのために買ってくれ」なんて頼ってきた学生時代の仲間たちとも、疎遠に。こちらが「借金の返済は気にするな」といっても、やはり相手にしたら気まずいのでしょう。これで、26歳以前の友人をすべて失いました。

ほんの1年間ほどで、驚くほど濃密な経験をしていますね。人生観も変わりそうです。

それまでは「人生の成功者とは、金持ちになること」だと疑いませんでした。でも、仕事仲間に金銭的な成功をおさめた人はたくさんいたけれど、逮捕されたり激務で病んだり・・・。誰ひとり、幸せになっていないように思います。僕自身も、どんな高級料理だって食べられるお金はある。でも心を許して一緒に楽しく食べる相手が、誰一人いなくなったんです。そのときに、「何を食べるかじゃない、誰と食べるかが大切なんだ」と気づきました。「人の幸せって何だろう」と改めて考えたとき、尊敬する相手と共にあり、そして相手からも信頼を得ることではないか。そして「もうお金を追うのはやめよう」と、新たな生活を求めて27歳で退職しました。

企業体としても「売上を高めることだけに重きを置き、転んだ人は見捨てるような考えは違うのではないか。働く人間の幸福度に、企業価値を置くべきだ」という想いにたどりつきました。人を育てることこそが、社会を育てることにつながります。「リラク」の企業理念、「愛と思いやりにあふれた社会の実現」も、ここから来たものです。

それから会社設立に至るわけですね。リラクゼーション業に着目したのは、なぜでしょう?

まず前提として、グローバル展開できる企業にしたいという想いがありました。グローバルな業種は情報通信や金融などがありますが、参入して拡大していく余地がある分野として「医療・生命科学分野」に目をつけたのがひとつです。

また、会社員時代にぎっくり腰になった経験も影響しています。当時、整体や接骨院を何軒もまわって、そのたびに電話や住所、年齢、持病、体調など細かい質問事項の記入を求められました。自分も治療に影響するかと思うと、真剣に回答しているんですよね。そのときに「これだ!」と。こうしたデータは、さまざまな企業がお金を出してもほしい貴重な情報です。僕も今までの仕事柄、マーケティング情報を得るためにお金が動くのを見ていましたから。

データは複数の店舗を抱えてユーザーが増えるほど、よりたくさん集められます。リラクゼーションスタジオの展開は、データの収集手段とも言えます。健康情報のデータベースができれば未病の調査研究、そして保険組合や医療機関といった医療・生命科学分野の事業にも役立つ。こうしたさまざまな考えを集約した結果が、「リラク」の立ち上げにつながっています。

  • リラクのボディケアは、マッサージよりも「肩甲骨のストレッチ」に着目した独自のメソッドが特徴

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