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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.64

実例編高松で訪問美容12年!サロンはバリアフリー。

AI搭載ミラーをはじめとする最新テクノロジーや技術力の高さで人気を呼んでいる、香川県高松市のサロン「Hair & Beauty Charites」(以下、カリテス)。訪問美容スタート後、サロンをオープンさせたといいます。現在はサロンワークと訪問美容を並行し、サロンにも車椅子のお客さまを対応できるようなバリアフリーの個室を設置。代表の高木崇さんから、訪問美容にかける想いについてお話を伺いました。

Hair & Beauty Charites

  • 全スタッフ4名
  • 1店舗
オーナー:
高木崇さん
訪問美容開始:
2013年
訪問施設数:
2施設
施設訪問頻度:
月に1回(1回の訪問で約10名)
訪問個人顧客数:
約10名
個人顧客訪問頻度:
半年〜1カ月に1回
訪問スタッフ:
3名(兼任)
価格:
施設カット 2,500円〜、カラー4,000円〜、パーマ4,000円〜

Q

訪問美容に関心をもったきっかけは?

A

亡き父が長期入院したことでした。

病室で父のカットをしていたら、他の患者さんからも「自分も切ってほしい」と言われた。

サロン勤務のスタイリスト時代に、父が病気で長期間入院していました。その間、父の髪がボサボサになってしまい落ち込んでいるのがわかったのです。外出は無理でしたが病院内でカットしてもよいと許可を得られたので、病室でカットしてあげたんです。すると父が今まで見たこともないような笑顔に。それを見ていた同室の患者さんたちから「私もやって!」「自分も切って欲しい!」と次々に頼まれるようになりました。入院中に髪を切れなくて困っている人がこんなにもいるのだと、初めて知りました。切ってあげたときの喜び方がサロンとは比にならず、こんなに喜んでいただける訪問美容を仕事にできないかと考えるようになったのです。

訪問美容を始めるために、サロンを退職。

訪問美容のことで頭がいっぱいになっていたのですが、当時はサロンでの仕事が多忙を極めていました。父が余命宣告を受けていたこともあり、このままでは父の死に目に会えないのではという想いも強くなっていきました。病室でカットしてあげたことを喜んでくれた父とも、訪問美容を仕事にすることを約束していたので、父が生きているうちになんとか形にしたいという想いが募り、後先を考えずにサロンを退職したのです。

  • 「次がまったく決まっていなかったのに訪問美容への想いだけで退職してしまいました」と当時を振り返る高木さん

Q

訪問美容を始めるために、何からスタートしましたか?

A

訪問美容専門会社に勤める知人に同行させてもらいました。

見学やアドバイス、営業の手伝いまで、周りの人が助けてくれた。

最初は何から始めていいかわからず、訪問美容専門会社に勤めている知人に相談しました。彼が上司にかけあってくれて、介護施設の施術を見学させてもらえることになりました。そこで寝たきりの方のカット方法などを学ばせてもらったのです。また、営業をしなければお客さまはゼロなので、市役所に行って介護施設のリストをもらいました。とはいえ営業とは何をするのかも最初はまったくわかりませんでした。サロン時代のお客さまで保険会社の営業をしている方に相談すると「飛び込みからやった方がいい」とアドバイスをくれました。その方がくれたアドバイスのひとつが「リスト内で地域のはずれの方から当たった方がいい」ということ。中心地に近い場所はすでに他の訪問美容会社などが入っていることが多いからです。また、「話を聞いてもらえなくても、裏に一言添えた名刺を必ず置いていくこと」も教えていただきました。言われるがままに忠実にアドバイスを守って、片っ端から飛び込みしましたね。そのときにサロン時代の後輩たちが休日に営業を手伝ってくれて、とてもありがたかったです。

父の葬儀の朝に、最初の介護施設から契約の電話が。

最初に訪問美容が実現できたのは、ケアマネジャーさんから紹介してもらった在宅のお客さまでした。施設への営業と在宅の訪問美容を並行して進めていきました。役所でもらったリストでは、当時で香川県内に約400件の介護施設があり、最初は全部回ろうと思っていました。しかし、手伝ってくれた後輩と3人でも全部は難しいと思い始め、最終的に回ったのは250件ほどだったと思います。初回で契約をもらえることはまったくなかったですが、1度訪れて感触が良かったところには、何度も足繁く通うようにしていました。最初に契約がもらえた施設は、一番最初に営業に行った施設。初めて飛び込みで訪れてから約4カ月後で、それまでに3〜4回は伺っていました。その施設から契約のお電話をいただいたのが、父の葬儀の朝でした。父が生きている間でなかったのが悔やまれますが、父が私にくれた最期の贈り物だと感じました。

  • 自作のチラシと名刺をもって、手伝ってくれる仲間と250件ほどの施設に営業してきた

Q

訪問美容を始めてからサロンをオープンしたのはなぜですか?

A

大手の訪問美容会社との競争もあり、サロンとの並行が妥当だと判断しました。

サロンのお客さまが順調に増え、人を雇える状態に。

その後も営業は続けていましたが、市内の介護施設はほとんど大手の訪問美容専門会社が入っていました。私はサロンクオリティを強みとして掲げていましたが、価格競争で負けてしまうことも多かったのです。在宅のお客さまは少しずつ増えていきましたが、訪問美容一本で生計を立てるのは難しいと思い始めました。その頃、実家を改築することになったのですが、母からの提案でサロンも併設することにしました。訪問美容を始めてから約1年後のことでした。当時は私ひとりのこぢんまりとしたサロンで、訪問美容もすべてひとりで並行して行ってきましたが、サロンのお客さまが順調に増え、2018年に建て替えたタイミングでスタイリストを雇うことにしました。

  • 現在のカリテスの店内。2階まで吹き抜けで続く、広々として高級感あふれる雰囲気

コロナ禍明けに問い合わせが増え、サロンのスタッフも訪問美容を兼務してくれることに。

サロンを建て替えた直後にコロナ禍がやってきました。コロナ禍でもサロン自体にはお客さまは来てくださったのですが、介護施設へは施術も営業も行くことができなくなりました。ところがコロナ禍が明けると、ホームページやSNSなどでカリテスを見つけてくれたお客さまからの訪問美容の問い合わせが急に増え始めたのです。最近は施設でもカラーやパーマをご希望される方が増えたことで施術に時間がかかるようになってきました。そうなると私ひとりでは回らなくなり、サロンのスタイリストたちに頼んで訪問美容を兼務してもらうことになりました。カラーやパーマはひとりの利用者さまがしていると、他の方が羨ましがって「私もやりたい」と希望をいただいたり、「訪問美容でカラーもできるんだ!?」とサービスを知っていただくきっかけにもなっています。

  • カラーやパーマの施術にはシャンプー台が欠かせない。移動式のシャンプー台を持ち込んでいる

Q

今後はどのような展開を考えていますか?

A

県内全域に訪問できるよう、他サロンとチームを組んで取り組みたいです。

訪問美容はやりがいが半端ではない。

私が訪問美容を始めた理由でもありますが、訪問美容のお客さまは施術を本当に喜んでくれて、とてつもなくやりがいを感じられます。訪問するだけでもありがたがってお茶を出してくれたり、「そんなに安くていいの?」と言ってくださる人もいます。自分自身の喜びとお金を同時にいただけるのが訪問美容です。また、サロン勤務のときは一日中室内で過ごしていましたが、訪問美容は外に出ていくことが良い気分転換になります。もちろん認知症など意思疎通が難しい方や、じっと座っていられない方、何日も入浴されていない方など大変なこともあります。それでもやってよかったと感じることの方がずっと多く、私の仕事の基盤になっていますね。

  • 施術後のお客さまの笑顔が高木さんのモチベーションになっている

  • 施術者の顔をご家族に見せて安心してもらうためにツーショットも撮影

在宅介護の方々に訪問美容の認知度を上げていきたい。

独立当初は香川県内全域に営業をかけていて、最近はお客さまの方からお問い合わせをいただくようになったのですが、サロンを構えている現在では高松から遠い地域だと対応が難しいこともあります。一方で、以前の私のように「ひとりサロン」で、お客さまから要望があれば訪問しているというオーナースタイリストが県内に多いことがわかってきました。こうした人たちに呼びかけて、チームとしてサロンクオリティの訪問美容ができたらと考えています。営業や依頼はカリテスで行い、訪問は距離が近いサロンの方に担当してもらえるようになれば、訪問美容を求めているもっと多くのお客さまのニーズにお応えできると思います。介護施設に入所する方には訪問美容はある程度知られてきましたが、在宅介護の方々はまだあまりご存じないのが現状です。訪問美容の認知度を上げるためにも、スタイリスト同士で協力し合っていきたいですね。

  • 「訪問美容を求めているお客さま、やりたいスタイリストを繋ぐ存在にもなっていきたい」と展望を語る

高木さんからひとこと

訪問美容に関心があれば、まずは実際にやっている方に同行させてもらって、生の現場を見学させてもらったり、体験させてもらうことをおすすめします。リアルな状況を見ないと、その先に進むべきかどうかもわからないと思います。実際に現場を見ると「自分だったらどうするか」という想いもわいてきます。これからの時代はサロンのお客さま自身や、お客さまのご家族が要介護になることで、サロンに来られなくなることがどんどん増えてくると思います。大切なお客さまに何かあったときに、自分が訪問美容を経験していないと力になることができません。そうなる前に準備をしておくことが必要なのではないでしょうか。

Salon Data

Hair & Beauty Charites 【ヘアーアンドビューティ カリテス】

アクセス
琴電琴平線・三条駅から徒歩18分
創業年
2014年
店舗数
1店舗
設備
セット面6席
スタッフ数
4名
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000429978/
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