女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.60「ママ会」「妻会」「オトナ会」…
女性スタッフの声を経営に活かすワザとは?
HAIR TIME rest
大阪府高槻市
大阪・高槻市でおしゃれ&かわいいをコンセプトに展開する「HAIR TIME」。現在創業40年。先代から昨年引き継いだ代表の石井さんは、「100年続く企業」を目標に、女性スタッフも働きやすい環境をづくりを推進しています。現在40名の女性スタッフ中12名がママ。女性スタッフにかける想いと経営方針についてお話をうかがいました。
1取り組み
勤務時間、職種など、ママスタッフが自分にあった働き方を選べる。
どんな取り組み?
保育園の送り迎えなど労働時間が限定されるママスタッフは、15:00や17:00までなど個人の事情に合わせて勤務時間を選ぶことができる。時短勤務でも基本は正社員だが、本人が希望すればより勤務時間や出社日が少ないパート勤務も選べる。また、出産前まではスタイリストとして活躍していても、時間の制限により指名を取ることが難しい場合は、スパニストやまつげエクステスタッフなど、新しい職種で復帰しているスタッフもいる。
なぜそうした?メリットは?
以前は女性スタッフは出産するとほとんどが退職していたため、技術を持つ女性たちに続けてほしいと石井さんは考えていた。5年ほど前、女性活躍が進んでいる高知のサロンを見学させてもらえる機会ができた。ママスタイリスト2名を同行させて見学に行き、女性が長く続けられる取り組みを学んできたそうだ。そのサロンを参考に「出産したスタッフの事情に合わせて選べる勤務時間」「フルタイム、時短によって給与体系を変える」などの制度を整備していった。現在では出産を理由に退職する女性スタッフがほぼいなくなった。
2取り組み
「女子会」「妻会」「ママ会」「オトナ会」…さまざまな会合から女性の声を吸い上げ。
どんな取り組み?
「HAIR TIME」では女性ならではの悩みなどを語り合う会をつくり、定期的に会合を開いている。若手スタッフは「女子会」、結婚してまだ子どもがいないスタッフは「妻会」、子どもがいるスタッフは「ママ会」、30代後半以上のスタッフは「大人会」と、同じ立場の仲間同士で想いを語り合い、そこで出た声をオーナーに上げて経営に役立ててもらっている。
背景とメリットは?
ママスタッフ第1号の笹井千絵さんが「ママ会」をつくったことが発端だった。子育てしながら仕事をすることは、自分ひとりだと思うと心細いが、同じ境遇の人と話すだけでも安心できる。「愚痴の言い合いで終わらせるのではなく、みんなの希望をシステム化させられれば、離職防止につながります。そうすれば会社にも恩返しができると思ったのです」(笹井さん)。取り組み1のような働き方の選択も、これらの会から出た意見を具現化させたものだ。
3取り組み
「Piece=Peace」の気持ちで、お互いを助け合う風土づくり。
どんな取り組み?
ママスタッフに対する制度をつくった当初、「ママスタッフだけを優遇しているのでは?」という他のスタッフからの不満の声があった。そこで石井さんは、「ママスタッフの1日」を細かく書いてもらった。起床してから家族の朝食・お弁当作り、身支度、保育園へ送り届けてから出社、仕事帰りに保育園にお迎えに行って、家族の食事作りや子どものお風呂、その他の家事をこなして深夜に就寝などだ。それを全スタッフに周知させ、理解をしてもらったそうだ。
また、全社でのレクリエーションには子連れで参加が基本で、子どもの様子などを他のスタッフにもリアルに知ってもらっている。
メリットは?
ママスタッフたちの1日の時間の使い方を知ったことで、他のスタッフたちに、「こんなに大変だったんだ!」「みんなで守ってあげなきゃ」というムードが広がったという。石井さんは、「働く者同士はパズルと一緒で、出っ張り(強み)を持った人が、凹んだ部分(弱み)のある人を補って助け合うべき」と語る。「『Piece(パズルの一片)=Peace(平和)』といつも言っています」(石井さん)。
子連れ参加OKの行事も、ママスタッフへの理解が深まるきっかけとなっている。
代表インタビュー
- Q. 女性スタッフが働きやすい環境づくりで、苦労された点はありますか?
-
A. 周囲の理解を得るのは大変でした。でも、あきらめたら業界全体が沈みます。
当初は「女性優遇ではないか?」という声も確かにありました。しかし、新卒で美容師をめざす若者が減り、美容師を辞める人も後を絶たない状況で、女性活躍を進めなければ業界全体が危なくなる。だから「大変な人にはみんなが協力しあおう」と言い続けるしかない。あきらめたらそこで終わりです。女性を優遇しているわけではなく、時短の人は正社員でもフルタイムに比べれば給与は減りますし、男性スタッフのキャリアのことも考えています。独立が難しい時代ですから、店長経験者はフランチャイズやのれん分けで、グループ内の経営者になってもらう道を作り始めています。
- Q. 社員を大切にする経営を続けている根本は、どんな想いなのでしょう?
-
A. 私が引退しても会社が続くよう、社員が辞めないしくみをつくっているだけです。
私は2代目の経営者で現在創業40年ですが、「100年続く企業」をめざしています。私もいずれは引退しますが、その後にも「HAIR TIME」がずっと続くためには、みんなが会社を盛り立てて続けていける環境づくりと、次の経営者となるスタッフを育てることが必要です。スタッフたちとともに年齢を重ね、白髪になっても一緒に働きたい。
だからこれからも、労働環境を改善して生産性を上げるためのしくみはどんどんつくっていきたいです。例えば、タオルはレンタルにすればスタッフはサロンワークに集中できますし、キッズルームをつくれば保育園を探さなくても女性スタッフが働きやすくなる。スタッフも、スタッフの家族もしあわせになってほしい。今でも「『HAIR TIME』は女性が働きやすい」とクチコミで聞いて他店から転職してきたママスタッフがいますが、そうした人をこれからも増やしていきたいですね。
Salon Data
HAIR TIME rest【ヘアータイム レスト】
- アクセス
- JR高槻駅から徒歩3分
- 創業年
- 1982年
- 店舗数
- 5店舗
- 設備
- 15席(HAIR TIME rest)
- スタッフ数
- 14名(HAIR TIME rest)