女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.68特殊な給与形態に託児所、ママ美容師店舗…
社員の3割=40人のママが活躍する取り組みとは?
trico
愛知県豊橋市
愛知県豊橋市を中心に、9店舗を展開するヘアサロン「LE-PLA BEAU」。まつげエクステやネイルのサロンを併設する店舗もあり、ビューティーコーディネーターによるアドバイスも好評です。全社で140人いるスタッフのうち、40人がママ。スタッフ用託児所を備えた「trico」店では、現在6人のママスタイリストが活躍しています。子育てと両立しやすい職場環境によって、第2子、第3子の出産も多く、最近では第4子の妊娠報告も。子どもが増えても変わりなく、ママたちがいきいき働ける環境づくりの極意を、副社長の白井さんに伺いました。
1取り組み
グループ内の3店舗にスタッフ用託児所を併設。
出産4カ月後の復帰がほとんどに。
どんな取り組み?
グループ全体で9店舗あるうち、「trico」「Ante」「brilliant」の3店舗に託児所を併設し、全社スタッフの子どもを受け入れている。現在、利用しているスタッフは20人ほど。預けられる子どもの年齢は、生後2カ月から未就学児までを原則としている。利用料は1日子ども1人につき1000円。「保育士1人に対して子ども3人まで」というルールにのっとり、各日の予約状況に合わせて保育士のシフトも調整している。
きっかけとメリットは?
最初の託児所の設置は8年前。月150万円ほどの売上をあげていたスタッフが妊娠し、「ここに託児所があるなら続けたい」と会社へ相談したことがきっかけ。「それまでにも、結婚・出産で辞めざるを得ないスタッフを多く見てきました。続けてもらうためには、子どもがいても働ける環境を整えなければ、と思い導入したのです」と白井さん。
託児所ができたことで、離職者は格段に減少。出産後の復帰も早く、産後休暇8週間・育児休暇10カ月を用意しているが、ほとんどが産後4カ月ほどで復帰している。第2子、第3子を産んで働き続けるスタッフも多くなり、現在、第4子を妊娠しているママスタッフも活躍中だ。
2取り組み
頑張り次第で正社員と同額が稼げる
時短勤務の「準社員」制度。
どんな取り組み?
時短を希望しパートで働くスタッフが増えてきた5年ほど前に、「準社員」の制度を導入。「準社員」は勤務時間を自由に決めることができ、各ポジションの基本給は正社員と同額になっている。その基本給に対して、勤務時間と指名売上をかけ合わせた支給率を設定。短い時間でも支給率100%の売上を出せれば、基本給の満額を支給し、逆に長時間働いても売上が低ければ、支給額は基本給より少なくなる。時短勤務でも頑張れば、正社員と同じ給与がもらえる仕組みだ。
背景とメリットは?
「スタイリストのゴールは、自分のファンとなってくれるお客さまをどれだけ増やせるか、ということだと思うんです」と白井さん。しかし時給計算になると、「とりあえず長い時間いれば給料がもらえる」という意識が芽生えてしまいがち。そこで時短スタッフのモチベーションを維持するために取り入れたのが、この給与制度だ。
「うちは勤務表の提出期限が2カ月前なので、自分が来月に何時間働くかが予め分かるわけです。それに対して、どれだけの売上をあげればいくらもらえるのか、給与を自分で計算して目標を設定できる。時短でもやりがいを持って働くことができます」(白井さん)。
3取り組み
会議とトレーニングは金曜午前中に実施し
時短スタッフの疎外感を払拭。
どんな取り組み?
一般的には夜に行われている会議やトレーニングを、金曜午前中の営業時間を削って実施している。時短スタッフもその他のスタッフも合同で、9時~11時の開催。その後12時の開店までの間に、みんなでランチをとることも。普段はゆっくり話す機会が少ない時短スタッフと他スタッフの、貴重なコミュニケーションの場になっている。
背景とメリットは?
夜の会議やトレーニングに出られない時短スタッフたちは、会社の動きや新商品、新メニューなどの情報を得るのが難しい。そのため「自分だけ分からない」という状況に直面し、疎外感を覚えたり、仕事をする上で困ることも多々。居心地の悪さを感じて辞めてしまうスタッフもいた。
「会社としても、全スタッフに同じ教育を同じレベルで行っていきたい、という思いがあります。会社の動きもみんなに知っていてほしい。そこで、無理せず参加できる時間帯を時短スタッフにヒアリングして、金曜の午前中に行うことにしたのです」(白井さん)。これにより、全社の情報伝達がスムーズに。スタッフ間のコミュニケーションも向上した。
4取り組み
ママ美容師や休眠美容師を集めた
新ブランドのサロンをオープン。
どんな取り組み?
現役ママ美容師や、結婚や育児で職場をリタイアしてしまった休眠美容師を応援するサロンを、12/7にグランドオープン。サロン内にスタッフ用託児所を併設し、勤務時間内にトレーニングできるトレーニングルームと専用カリキュラムも用意。土日休み、週2日の出勤、3~4時間勤務も可能という好条件。取材時はオープン準備の最中だったが、出産や結婚で退職した元スタッフたちが、復帰を名乗り出ているという。
背景とこれからの展開は?
「たくさん稼ぐことよりも家族の時間を重視して、時給制でほどよく働きたい」というママスタッフのニーズを、常に感じてきたという白井さん。「努力の結果を評価する現在の給与形態では、そこに応えることができません。それで、システムの異なるまったく別のブランドとして、新サロンを立ち上げることにしました」。
新サロンの給与形態は、パートスタッフは時給+歩合給、正社員は基本給+歩合給とシンプル。いずれは売上のあがらない男性社員も配属させ、日中はパートのママスタッフ、夜間と土日は男性社員の担当に。年中無休で夜遅くまで営業する店にして、稼働率を上げることを計画している。
「うちは職業訓練校の認定を受けていて、新人教育にも力を注いでいます。デビューを控えた新人スタッフを配属して、実地の勉強をさせる場にもしていきたい。いろんな要素を盛り込んだ展開を考えています」(白井さん)。
副社長インタビュー
- Q. 「準社員」制度を運用する上で、工夫されていることはありますか?
-
A. 時短勤務に対する周囲の理解を得るために、時間の管理は厳しくしています。
準社員のスタッフは、出勤時間も勤務時間も自由に決めて申請することができます。でも、そこで決まった時間に間に合わなかった場合は遅刻、早く帰ったら早退の扱いで、融通はきかせません。それは、正社員のスタッフたちと同等の扱いであることを示すため。例えば16時退勤と決まっていたのに、「お客さまと話していて仕上げが遅くなったから、1時間残業する」というのもNG。残業代はつきません。一方で、忙しい日に会社からお願いして残ってもらった場合には、残業代を出しています。時短だからこそ、厳しい時間の管理が必要。正社員とフェアな扱いをすることで、周囲の理解を生むように工夫しています。
- Q. 女性が働きやすい環境づくりを始めたきっかけは?
-
A. 「人が辞めない会社」を目指した結果、女性支援の取り組みが進みました。
就業規則など、ルールをきちんとつくったのは5、6年前です。その時の課題が「人を辞めさせない会社にする」こと。求人にかける費用は、教育費だったり給与だったりと何千万円もかかります。回収できるのは、そのスタッフが多くのお客さまをつけて、会社へ利益を残すほどに育ってから。でも実際は、アシスタントをやって、ちょっとお客さまがついた時点で辞めてしまう人がほとんどです。それでは採算が合わない。でも、1人でも2人でも辞めずに残ってくれることで、採算が合ってくるのではないかと考えました。それにより、人を採ることよりも残していくことを最優先することに。この業界は女性スタッフの方が多いので、女性の不安を解消する方法を考え始めたのです。こうした取り組みを進めたことで、他社との違いが生まれて、求人の場にもよい影響が出てきているように感じます。
Salon Data
trico【トリコ】
- アクセス
- 豊鉄バス停石巻登山口から徒歩5分
- 創業年
- 1992年
- 店舗数
- 9店舗
- 設備
- 19席 ※trico
- スタッフ数
- 15名 ※trico