女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.73女性の働きやすさは当たり前!
他社を応援する団体も立ち上げた経営者の想いとは?
Beautissimo川越
埼玉県川越市
カリスマ美容師ブームを経て、現在は経営者として講演活動などにひっぱりだこのオーナー鈴木勝裕さん。時代や社会の流れを敏感に読み取り、「これからはお金だけで人が活躍できる時代ではない」と、スタッフが働きやすい環境整備に早くから取り組んできました。直営店全体で現在ママスタッフ4名、妊娠中のスタッフが1名。ママスタッフには本人の希望を叶える細かな働き方の選択肢を提供しています。鈴木さんの女性活躍についてお考えを伺いました。
1取り組み
育休復帰後のスタッフの働き方は、本人の希望に合わせて多様に準備。
どんな取り組み?
「Beautissimo」グループでは、勤務時間に制限のあるママスタッフの働き方は、本人の希望と状況に合わせて選べるようになっている。正社員での復帰はもちろん、パート勤務も選べるほか、時短の勤務時間もさまざまに設定できる。その際、労働時間は必ず法律にのっとることを意識している。6時間働くごとに休憩を取ることが義務づけられているため、早めの時間に帰ることを希望するスタッフがいれば、休憩を取らないかわりに、開店から6時間の勤務で帰れる働き方も選べるという。
なぜそうした?メリットは?
鈴木さんの考え方は、徹底して「労働基準法など国の制度にのっとった経営」だ。当たり前のようで美容業界ではむずかしいことを、早い段階から整備してきた。健康保険や厚生年金などの社会保険は18年前に法人化したときから完備しているので、出産の際の出産手当金や育児休業給付金などをママスタッフがきちんと受け取れる。さらに復帰後は法定の休憩時間も含め、無理なく勤務できる時間を相談して決めるので、ママスタッフたちが希望の働き方で仕事を続けられている。
2取り組み
産前産後の面談で、ママスタッフをこまめにフォロー。
どんな取り組み?
妊娠したスタッフは産休前と復帰する前に会社と面談して、働き方の希望を伝える。面談を担当するのは企画部の福士佳子さん。福士さんは本人の状況を把握するとともに、サロンのスタッフたちには子育てしながら働く際に起こりえることを伝え、ママスタッフと周囲の橋渡し役も担っている。
なぜそうした?メリットは?
ママスタッフの復帰の時期や働き方は、産前に大まかな希望を聞いている。しかし、子どもの体調や保育園の入園時期は産んでみないとわからない。そのため復帰予定が近くなったときに、再度面談で福士さんがママスタッフの状況を聞き、まだ復帰が難しいと判断すれば、育休延長の提案をすることもあるそうだ。ママスタッフ自身から申し出にくいことを会社側から提案することで、安心して休暇を過ごせ、会社への信頼にも結びついている。
また、子育て中のママスタッフは、時短勤務になるだけでなく、子どもの発熱など急な早退も珍しくない。そのことを予め会社側がサロンのスタッフに伝えておくことで、ママスタッフがまわりの協力を得やすくなっている。
3取り組み
全員が働きやすい環境を整備することで、ママスタッフの働き方を受け入れやすい風土に。
どんな取り組み?
「Beautissimo」ではスタッフ全員が働きやすく、仕事を続けられる環境を提供している。社保完備のほか、完全週休2日制、年1回無料で受診できる健康診断のほか、勉強のための講習は営業時間に行っている。
きっかけとメリットは?
「カリスマ美容師ブームの頃は、求人募集をすると800名ぐらい応募が来て、そこから50名採用、スパルタ教育をして1年後に残るのは20名ぐらい。それが当たり前で、『練習用のカットモデルを5名ハントしてこられなければ帰れない』ということもやっていました。けれどそれは今の時代には全く合っていません。美容師のなり手が減っている時代に『続けたい』と思ってもらうには、一般企業と同様に働きやすい環境を用意しなければならなくなっているのです」(鈴木さん)
全スタッフの不要な残業が減れば、時短勤務のママスタッフとの勤務時間の差も短くなって、まわりのスタッフが不公平を感じることも少なくなるという。
オーナーインタビュー
- Q. 鈴木さんにとって女性活躍はあたりまえのことで、もっと広い意味での会社環境の整備に取り組まれていますが、そのきっかけは?
-
A. カリスマ美容師ブームが終わったときに、事業計画をしっかりやろうと思ったことです。
カリスマ美容師ブームの頃までは、私もスタッフに残業させていたし、とにかく仕事が忙しかったです。けれどブームが去ったときに、これからが大変になると。もともと人を雇う上で「組織」「資金政策」「モチベーションづくり」は大事だと思って経営してきました。でもそれだけではダメで、事業計画をきちんと立てて「魅力ある会社」にならなければ生き残れない。そこで国の政策である「経営革新計画承認書」を作成して、付加価値の高いサービスを提供する会社を目指す計画をたてました。承認を受けて補助金などをもらうことで、会社を立て直し、成長することができました。
- Q. 「会社を立て直すこと」と、「スタッフにとって働きやすい環境をつくること」はイコールだったということですか?
-
A. スタッフが「働きやすい」「ここで続けたい」と思わなければ、事業計画は成就しません。
事業計画を立てるのは経営者の役目で、実行するのはスタッフたちです。だから人材育成は非常に重要で、育成した人材が辞めない組織にしなければなりません。
そうした活動をしていく中で、人口減少が続く日本の今後を考えたのです。そこで、一時は人口が減っていたのに、国の政策で人口が増えたフランスについて研究しました。3年間くらい通ってわかったことは、フランス最大手のサロンでは、低価格競争をせずともお客さまが入っているのです。また、性別、年齢、人種を問わず60代になっても現場に立つ美容師が大勢います。しかも週35時間労働で、毎年長期のバカンスも取っています。
日本がすぐにそうなるとは思いませんが、国の政策はその方向を向いています。だから将来そうなるときのために、先にやるのです。女性活躍も社会の流れなのでやって当然です。長期休暇はまだ無理ですが、労働時間の短縮や完全週休2日制は早めに取り入れました。
- Q. 現在、他社のサロン経営者を救うための活動もしているそうですが、具体的にどんなことをしているのですか?
-
A. 社保完備にしてもつぶれない会社にする手助けをしています。
ここ数年、さまざまな要因で経営が難しくなっているサロンが増えてきています。その人たちに経営者としての情報を与えて、経営改善の手助けをするために「Beauty Jam」という団体を作りました。美容業界のまわりにいる社会保険労務士、税理士、不動産会社などに参加してもらい、美容業界の活性化に貢献することを目的としています。
マイナンバー導入によって、社会保険に入っていなかったサロンが窮地に立たされています。そうなると女性活躍などに目がいかなくなりがちですが、それでは時代からますます取り残されてしまう。業界が活性化して、そこで働くスタッフたちみんながずっと輝ける美容業界になれるといいですね。
Salon Data
Beautissimo川越【ビューティシモ 川越】
- アクセス
- 本川越駅から徒歩2分
- 創業年
- 1987年
- 店舗数
- 16店舗
- 設備
- 11席(Beautissimo川越)
- スタッフ数
- 約110名 (FC店込み)