2014.02.04
私生活でもパートナーである髙橋健志氏とともに、日本初の家事代行サービスを手掛けるベアーズを磨き続けて15年。
ゼロからブランドを確立し、質の高い人材を育成してきた髙橋ゆきさんに、ブランドの磨き方や経営者のビジョンを形にできるNo.2の育て方など、美容業界にも生かせるエッセンスをお話しいただきました。
PROFILE
髙橋 ゆき(たかはし ゆき)
家事代行サービス産業を牽引する「株式会社ベアーズ」専務取締役としてマーケティング、広報、人材育成を担当。
同社は2010年サービス産業生産性協議会「ハイ・サービス日本300選」受賞。2011年東京商工会議所「勇気ある経営大賞」特別賞受賞。2013年経済産業省「おもてなし経営企業選」選定、2012年には、テレビ東京「カンブリア宮殿」に出演。
個人としても各種ビジネスコンテストの審査員や日本能率協会「経営・マーケティング戦略コース」のコメンテーター、日本の暮らし方研究家、家事研究家として活躍。
座右の銘は「人生まるごと愛してる」
|第2章|ベアーズの原点は、どういったところにありますか?
1999年に起業した当初は、とにかく資金がありませんでした。ですから、広告は私がデザインして、コンビニで200枚だけコピーしたものを、社長が新聞配達さながらに某23区内の高層マンションにポスティングしました。でも、反応はほとんどなかったんですね。そこで社長は、2回目の配布のあと、しばらくそこで様子をうかがっていたんです。すると、広告に興味のない人は、自宅まで持ち帰らずにその場で捨てていることに気づき、その捨てられた広告を回収して、別の棟でまた配布するというような努力をしました。
慣れない作業で腰痛や腱鞘炎に悩まされ、社長は血尿を出すほど大変な思いをしたのに、最初の1カ月の売り上げは40万円。髙橋家の家計費ならば十分すぎる金額ですが、私たちは女性を輝かせる産業=家事代行サービス産業を作るために起業したのですから、それを家計費にするわけにはいきません。やっぱり、事務スタッフや作業スタッフをちゃんと確保しようという話をすると、翌日すぐに、社長から新しい事務所の鍵を渡されました。そこは、卓球台2台分ほどのスペースでした。その当時にご縁のあったベアーズレディのIDナンバー1番の方とは現在でも私たちベアーズとの関係をつむいでいてくれていることが何よりの私たちふたりにとっての何よりも嬉しいことです。しかし、創業当初、私は髙橋家の生活費を稼ぐために、ほかの企業で3年間、正社員として働きました。いわば出稼ぎですね。
創業から4年目、私がベアーズに戻った頃を境に、業績が飛躍的に伸びていきました。これは、戦略的にベアーズというブランドを告知して、お客様の信頼を得られるようになったからだと思います。
ベアーズでは創業時の2回のポスティング以降、9年間は広告費ゼロを貫きました。当初は資金がなかったこともありますが、香港の商社でブランディングやマーケティングを手掛けていた経験から、時代や世代を超えて受け継がれていくのが本当に価値あるブランドであり、それはお金をかけて宣伝することで叶うものではない、ということを私はそれまでの社会人としての仕事の実績から体得してきたのです。ですから私は、お客様のご紹介、クチコミを一番の媒体にしていこうと考えました。
今でこそこうした講演の場でお話しさせていただいていますが、私の原点はブランコやすべり台がある“公園”です。そこで、サービスを伝えることから始めました。ほかの企業で出稼ぎをしていたときから、公園に集まるお母さんに1人、2人と声をかけては話をして、次第に人数が増えてくると、マンションの一室を貸してくださる方や、お茶代で喫茶店を使っていいと言ってくださる方も出てきて、そうした場でもお話をさせていただきました。
そこで私はこんな話をしてきました。「みなさん、愛する人のために、最高の笑顔でいたいと思いませんか?」「最高の笑顔を愛する人に見せることは、女性としての最低最大のミッションですよね」「そのために、私たちベアーズの存在があるんです。それがあなたの代わりに家事を代行するというサービスです。」と。私はこの話を、これまでに何万回としてきました。今でも公園で話していた初心を忘れずに、日々、活動を続けています。
多くの人は、「そんなことをしても、成果はたかが知れている」と考えます。小さな努力の積み重ねを軽く見てしまうんですね。でも、やめずにやり続けていれば、それに気づいて気にかけてくれる人が現れて、次のご縁にもつながっていきます。