2013.01.17
Facebookで世界20カ国以上、300万人以上のファンを獲得し、ソーシャルメディア活用の先進例として数々のメディアから注目を集めるファッションブランド「satisfaction guaranteed」。
メイド・イン・ジャパンにこだわったブランディングやソーシャルメディアを活かしたグローバル展開などで同ブランドを率いる佐藤俊介氏に、これからのブランドビジネスの可能性についてうかがいました。
PROFILE
佐藤 俊介(さとう しゅんすけ)
2001年日本大学理工学部建築学科卒業後、バリュークリックジャパン株式会社などを経て、2006年株式会社エスワンオー設立、代表取締役CEO就任。2007年にインターネットを活かしたアパレル事業を開始し、メイド・イン・ジャパンにこだわった「satisfaction guaranteed」をローンチ。2010年シンガポールにSATISFACTION GUARANTEED PTE LTDを設立し、Founder&CEO就任。2011年株式会社サティスファクションギャランティードジャパン設立、 代表取締役社長CEO及び、株式会社エスワンオーインタラクティブ代表取締役会長就任。
「satisfaction guaranteed」は、現在世界20カ国以上、300万人以上のファンをFacebookで獲得し、ファッションブランドでは国内第1位、世界ランキングでも26位を獲得。ソーシャルメディア活用の先進例としてテレビや雑誌など数多くのメディアに取り上げられ、全国で講演も多数行っている。2012年4月にはシンガポールで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)にて単独スピーチも務めた。
|第2章|ブランドビジネスとインターネットは切り離せないもの
ブランドビジネスでは、日本を代表するような大手メーカーと組んで、彼らがモノを作り、僕らがインターネットを使ったマーケティング活動を実施しています。また、ファッション以外の化粧品やスマートフォンなどもライセンスで展開しています。日本では誰もが知っていても、アジアや世界での認知度は低いメーカーが海外に出ていくには、やはりインターネットの活用が必須です。とはいえ、インターネットの世界は移り変わりが激しいので、一から勉強してというのでは追いつかない。餅は餅屋ということで、モノ作りのプロフェッショナルであるメーカーと、インターネットのプロフェッショナルである僕らで組んでやっていきましょうということですね。
その中で、僕らは「日本のリブランディング」を図っていきたいと考えています。アジアではよく「クールジャパン」プロジェクトのようなものが実施されていますが、今の日本で本当にアピールするべきものがアピールされていないと感じます。例えば、舞妓さんをアピールしても、日本で舞妓さんに会えるのは京都の祇園ぐらいですよね。そういうことが結構あるんです。また、その国のニーズに合ったローカライズもできていません。そこで僕らは、SNSを使って、ユーザーの声をダイレクトに聞いてモノ作りを展開したり、時にはユーザーが考えたものを作ったりしていきたいと考えました。僕らの役割は、そうしたブランドのプラットフォームのようなものだと思っています。
ソーシャルビジネスでは、「ソーシャルギア」というサービスを提供しています。これはもともと、自社のために開発したものです。Facebookで多くのファンを獲得しても、その中で本当に興味を持っている人は何人いて、男女比はどうなっていて、コメントしてくれるのは誰かというふうに、メスを入れて分析していかなければ意味はありません。僕らは自分たちの satisfaction guaranteedというブランドにできるだけメスを入れたかったんですね。そのために開発したものを活用して、広告を展開したり、メディア化したりといった事業を行っています。
このように、僕らはモノ作りはしないライセンサーであり、インターネットに特化したビジネスを展開しているという、これまでにあまりないポジションにいる会社だと思います。
インターネットのビジネスには、“3大やってはいけないこと”というのがあります。「在庫を抱えてはいけない」「面(場所)を使ってはいけない」「売り物を自分で作ってはいけない」の3つです。この3つを守れば、インターネットでの事業は成功すると言われています。わかりやすい例では、今ものすごく流行っているソーシャルゲームがそうですね。グリーやDeNAといった企業は、この3つを的確に守って、利益を上げています。
そうした観点で見ると、アパレルブランドというのは、在庫を抱えるし、店も出すし、商品も自分たちで作るという、IT業界的には最もやってはいけないビジネスなんですね。でも、実際にやってみると、インターネットからリアルに活かせることも、リアルからインターネットに活かせることもあるなと実感しました。実際、リアルなビジネスとインターネットのビジネスというのは、非常に密接に絡み合っていると思います。
Facebookなどを活用したインターネットビジネスとリアルビジネスを考える時に、新たなマーケティングとして展開するのはアリだけど、既存の指標や理解で捉えるのはナシと言われています。いくら使って、いくら売り上げるかというCPA(費用対効果)の発想が通用しないんですね。
韓国を見ているとまさにそう感じます。今、K-POPが人気で、たくさんのアーティストが活躍していますが、ビジネスとしては赤字なんですよね。でも、「株式会社韓国」として見れば、K-POP人気でよりサムスンの商品が売れればいい。要するに、マーケティングコストと利益を上げるところを完全に分けて考えているわけですね。インターネットビジネスとリアルビジネスにも、こうしたドラスティックな発想が必要だと思います。特に、マーケティングコストを明確に考える必要性がありますね。
インターネットビジネスは、やったことのない人から見ると、なぜ利益が出るのだろうと思われるでしょう。一般的には「Freemium(フリーミアム)」というモデルで成り立っています。最初は無料で人を集めて、一部の顧客を有料会員にしてお金を取っているんですね。インターネットでもリアルでも、こうした展開を考えていく必要があるように思います。