ヘアサロン領域
2011.12.22
現在山口県と福岡県に6店舗を構えるSARA。地元と密着したフリーペーパーの発行や、積極的なフォトシュートへの取り組み、オリジナリティのあるメニュー展開や、施術スペースと同等の広さを持つレセプション設計など、その取り組みは業界でも注目されています。2011年には小林社長が理事長をつとめるJBCA(日本ビューティ・コーディネーター協会)も発足。常に時代を先読みする集団の次の一手について伺いました。
PROFILE
小林 治
1967年福岡県北九州市出身。山野美容専門学校卒業後2店舗を経て1993年山口県徳山市(現周南市)にSARA設立。現在、福岡県、山口県に各3店舗、計6店舗を展開し、スタッフ総数は83名。他業種とのコラボレーションした大型店を出店するなど、ヘアを軸としたお客様の美容生活の価値の創造への新しいサロン経営を志す。2011年7月、美容の価値を高めることを目的とした、ビューティ・コーディネイターを育成するNPO法人日本ビューティ・コーデイネイター教会を立ち上げ、初代理事長に就任。
|第1章|お客さま大人化の時代に
野嶋 SARAさんは、「サラコレ」やホームページなどのツールを使って、街の女性とつながっていく活動がよく紹介されています。特に大人の女性の顧客に対しての取り組みは強いですね。
小林 お客さまの思考、気持ちをどれだけ読めるかが、これからの課題になっていくと思います。美容業界というのは、僕たちサイドから見ると教育産業なんですよね。新しく入ってくるスタッフを一人前にしながら、できるだけ長く雇用していく。そのためには、お客さまとの関わり方を考えていかなくてはいけないというのがスタート地点でした。長く働くためには長くお付き合いできるお客さまとの関係性を作っていかなくてはいけない。生涯顧客となりうるお客さまとの関係性を育てる必要があると考えています。
野嶋 長期雇用というのは業界の最大の課題でもありますが、展望はいかがでしょうか。
小林 今は、みなさんおっしゃるように、お客さまが大人化しています。ですから逆に、以前よりも長期雇用の可能性が増えてきたととらえてもいいと思います。日本人の平均年齢の高さは世界2位なんだそうですね。1位はモナコで保養地ですから、実質的には世界一と言っていいと思います。今までのプロモーションは全て20代向けでしたし、美容をファッションとしてのみ捉えていましたけれど、一方で、キレイに生きていく、健康に生きていくためのビューティという考え方もこれからは大事になってくると思います。
野嶋 「健康」と「美容」は、これからより密接になっていくでしょうね。
小林 そうなんです。福岡に出店して思うのですが、東京と福岡の一番の違いは、40代以上の女性にあらわれるなあと感じています。20代の女性は、東京も福岡もあまり違いがないと思うんです。もちろん、本当にモード系の方々は福岡には少ないけれど、一般的な20代の女性はそんなに変わらないと思うんですよね。けれども、これが40代以上の女性になると、差がはっきりしているように思うんです。東京には歳をとらない女性が多いですよね。それは何が違うかというと、美意識の差だと思うんです。大人の女性に長く通ってもらうとか、生涯顧客という考え方をするときは、お客さまの美意識レベル、美容生活のレベルを上げていくことが大事になってきます。
野嶋 美容生活のレベルを上げるということについて、もう少し具体的に聞かせていただけますか?
小林 美容室というのは今まで来店時のビフォアとアフターの差を見てきた商売だと思うんです。そのビフォアとアフターの差をヘアデザインで明確に示して満足させるのが仕事だったわけです。そう考えると、例えば年に5回来店するお客さまとは1年のうち5回の接点しかない。けれどもお客さまの立場に立って考えてみると、1回め来店されたときのビフォアと、2回め来店されたときのビフォアの差こそが、本来重要視されるべき価値なんですよね。5回来店されるお客さまにとってはサロンにいるその瞬間だけが良ければいいわけではない。365日のうち、サロンに来ていない360日こそが日常なわけですから。サロンに来るたびビフォアのレベルがどんどん上がっていくことが大事。お客さまの360日に接点を持って、美容生活を向上させるのが我々の仕事なのではないかと思うのです。
そう考えると、技術を売るだけでは足りなくなってくる。これからはお客さまの美容生活をプロデュースする「コーディネート力」が大事になっていくと考えています。
野嶋 そういう経緯で「コーディネート」という発想が生まれたわけですね。
小林 そうなんです。僕が理想型としてイメージしているのは、攻守のバランスがとれているサロンです。例えばカットやカラーやパーマやトリートメントが攻めのメニューだとしたら、そのヘアを生かすためのスパやネイルや店販などは守備のメニュー。この比率が1:1になるのが理想ではないかと思っています。
野嶋 世の中全体の美容の消費を上げていくということですね。
小林 そうです。そのために、僕は「ビューティ・コーディネーター」という存在が必要なのではないかと考えています。