｜第４章｜「男希」から「女希」への移行と　働く女性を応援するサロン

野嶋　先ほどちょっとお話にあがりましたが、7月に、新しいコンセプトのサロンを銀座に出されましたね。

坂巻　そうなんです。apish cherie（apish シェリ）という名前なのですが、女性スタッフだけのこじんまりとしたサロンです。

野嶋　女性スタッフだけのサロンを出すにあたっては、どんな背景があったんですか？

坂巻　あるとき予約帳を見ていてふと気づいたんです。最近「男希」って減ってきてるなあって。僕たちは、男性美容師希望のお客様を「男希」と書き、女性美容師希望のお客様を「女希」と書くのですが、予約帳が「女希」だらけなんです。

野嶋　ビューティ総研で調査したお客様の希望も、女性美容師さん希望のお客様の数が、男性美容師さん希望のお客様の数の約３倍でした。

坂巻　そうですよね。カリスマ美容師ブームの頃は、「男希」が圧倒的だったのですが、時代とともに変わっているんですね。シェリは、そのお客様の「女希」のご希望にこたえる形で計画が進みました。

　シェリのコンセプトは「働く女性を応援して社会貢献をしよう」です。これからの不景気を助けるのは女性たちの活躍だと。であれば、apishとしては、そんな働く女性を応援するサロンを作り社会に貢献しようと考えたのです。

野嶋　具体的には何か特別な取り組みをされているのですか？

坂巻　例えば、社内で働く女性に提案するヘアコンテストなどをしました。働く女性をヘアで楽にする2wayヘアの提案など、いろんな案が出ましたね。

　apishでは「あなたの今を輝かせたい」ということをよく言うのですが、女性のお客様にとっての「今」って、いろんな「今」があると思います。そこで、スタッフの中には100％グラフというオリジナルのグラフをカルテに書きこむ子もいますね。

野嶋　100％グラフですか？

坂巻　例えば、このお客様は、３ヶ月前にお子さんが生まれたばかりで、100％のうち80％は子育てのことだなとか。この方は仕事のことで今は頭がいっぱいとか。それぞれの状況の方にどのようにどんなお話をすればいいのか、その都度グラフに数字を書き込みながら考えているようです。

野嶋　坂巻さんのいろんな想いが、サロンに言葉となってコンセプトにとして根付き、スタッフさんがそれぞれの工夫でサロンワークに落とされているんですね。