｜第２章｜海外での働き方を目標に定めた
給料体制と休暇システム

野嶋　成長したスタッフのために店を出すとおっしゃいましたが、クミさんの人材育成に対する考え方についてお話しいただけますか。例えば若い子たちに、これからどういうような美容の道を進んでほしいと考えていらっしゃるのでしょうか。

クミ　とにかくお給料を高くしてあげたいということが一番です。もともと固定給だった給料体制を歩合給に変え、自分で計算できる公開制にしました。金額も全部見えるようにして。

野嶋　賃金テーブルを作られたんですね。

クミ　そうです。もともと海外のやり方にとても憧れていたので、契約書も作って。そこまでしたら、次はお休みですよね。半年分の契約書を作って、平均でこれくらい売り上げられたら、夏休みは何日とれるということも明確にしました。私自身が旅行が好きなので、スタッフにも休みもできるだけ長くとって旅行に行ってもらいたい。週休2日も実現したいということをずっと考えていました。

野嶋　週休2日を実現されたのは、いつですか？

クミ　10年前ですね。10人揃わないと交代して休むこともできないので、スタッフが10人を超えてからトライしました。やっぱり、お給料もそうですが、スタッフは休みがあるのが嬉しいみたいですね。うちのスタッフが長くいるのはそこが一番大きいのではないでしょうか。

野嶋　半期でだいたいどれくらい休めるんですか？

クミ　最低で5日間。最高が12日です。だいたい平均で7〜8日とれるので、もともとのお休みとくっつけて、10日から11日くらいの夏休みや冬休みをとっていますね。

野嶋　それは、いいですね。

クミ　うちのスタッフは全員生え抜きなんです。全部叩き上げ。自慢できるのは、今のトップレベルにいる子たちは、もう全員10年、15年、うちで働いてくれている子たちだということ。家族よりも長い時間を過ごしているメンバーばかりです。

野嶋　それが、サロンにとって一番の財産なんでしょうね。

クミ　そうですね。6人のサロンが大きくなって2倍のサロンになり、次に中心地にお店を出すことになり、そして今が3ステップめくらいでしょうか。
3年前に分社して会社を2つ作りました。私の右腕の2人にはそこの代表になってもらい、近い将来なる目標を掲げ、各自が頑張ってもらい易い環境にしています。現在は本社が支社に対して100％投資会社にしているんですが、彼らには本社の副社長も兼任してもらっています。いずれ、会社を分けていくこともできるように。2人も40歳近くなっていますし、私自身も60歳を過ぎてから継承の準備をするのは大変だといろいろ聞いていましたから。

野嶋　サロンをどんどん大きくしていくというビジョンはあるのでしょうか？

クミ　男性経営者だったら、20年もやっていたらもっと大きくしているかもしれないでしょうね。私は自分で全員が見れない会社にはしたくないんです。そこが女性経営者っぽいと言われる部分なのかもしれませんが。規模を追求するのではなく、しっかりそれぞれの人生を背負って、長く働いてくれた子たちが幸せだったと思えるポジションを作ってあげるのが最後の10年かなと思っています。