ヘアサロン領域
2014.08.26
表参道と代官山に2店舗を展開するDaBの代表、八木岡氏。数々のコンテストの審査委員長を務め、業界のデザインを牽引する存在である八木岡氏に、これからのマーケット、これからのブランディングについて伺いました。
PROFILE
八木岡 聡(やぎおか さとし)
表参道・代官山にヘアサロン「DaB」を展開。
高いデザイン性とテクニックを誇るヘアデザイナー集団の代表を務める。インダストリアルデザイナーとしても、照明器具や家具、美容器具関連のプランニングやデザイン、さらに化粧品の開発及びディレクション等幅広く手がける。
1995年、株式会社ビタミンズ設立/DaB office/DaB daikanyama開設、1997年DaB MIX開設。1999年、DaB omotesando開設、2003年、株式会社ダブ設立、サロンマネージメントをビタミンズより移管。2011年DaB MIXを拡張リニューアルオープン
2000年、GOOD DESIGN賞受賞、2002年、作品展PRIMITIVE DESIGN開催
株式会社ダブ webサイト → http://www.dab.co.jp/
|第1章|自分たちが登る山を決めるということ
野嶋 今日はよろしくお願いします。
八木岡 今までの皆さんのインタビュー、読みましたよ。
野嶋 ありがとうございます。今、美容業界には、これからの美容のあり方、これからの経営について迷っている人が多いと思うんです。八木岡さんには、迷っている人たちが道を定めていけるようなお話を聞ければと思っています。
八木岡 ある業界が一番危機感を感じるシーンというのは、マーケット自体が無くなるということだと思うんです。その面でいうと、美容業界というのは無くなる心配はないと確信を持って言えます。ですので、次に考えていかなくてはいけないのは、その中で、どのポジションをとるかということです。
野嶋 そうですね。
八木岡 もともと、フードやライフ、ヘルスやビューティというものは、人間の根源的なプリミティブな欲求でした。でも今は、そこに多様なデザインが生まれています。例えば、食事ひとつをとっても、昔は栄養補給でしたが、外食、コンビニ業などでは、朝・昼・晩の3食すべてアプローチするようになっています。つまり食べるという行為は同じなのだけれど、そこにどんな素敵な朝食を摂るかなど、デザインが要求されているんですよね。デザインが要求されているということは、そこに多様性が生まれているということです。
ということは、美容院がもっと多様性を持って、顧客が店を選べるようにならなくてはいけないと思っているんです。選べないということは一番豊かじゃないし、マーケットを支えきれないですから。
野嶋 八木岡さんがイメージする多様性というのはどんなものですか?
八木岡 美容の業界でも、クラスの多様性がもっとできるべきだし、ジャンルに関しても、フードでいうところの中華やフレンチや和食のように、ある程度そのジャンルに特化したものを勉強していく必要があると思います。
野嶋 自分たちのサロンが向かうべき道をしっかり定める必要があるということですね。
八木岡 そのとおりです。ジャンルに関しては、以前は、ひとつの山を登って頂点を目指せばよかったのだけれど、マーケットが細分化した今は、山自体がたくさんあるという状況です。それぞれのジャンルには異なったベーシックやスタンダードがあって、モード観もそれぞれ違う。だから隣の山に行ったときは、そのベーシックやスタンダードが通用しないんですよね。
野嶋 なるほど。登るべき山によって、必要な技術も違うんですね。
八木岡 実際、お客様にはいろんなニーズがありますから、それに応えようと思うと、オールジャンルの勉強が必要になります。確かに、何でもやらなくてはいけないというのは、美容師の宿命でもあります。けれども、自分たちが登る山を決めて、デザイン性や志向のベクトルにある程度特徴を持たせて特化して、業界全体でもっと大きなマーケットにしていかないと、みんながハッピーにならない。
日本の美容師さんは世界で一番勉強すると言われていますが、あまりに顧客のバリエーションが増えると、勉強しきれなくなると思うんです。技術はもちろん、その上にセンスまで要求されるわけだから。だからこそ、ある程度の、クラス化とジャンル化というのが必要だと思っています。