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女性スタッフが辞めない
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結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.80定休日を増やして、逆に売上UP!
ママパートがプロ意識高く活躍できる環境とは?

agree for hair

愛知県春日井市

「お客さまとの丁寧なやりとりでイメージを共有し、同意(agree)を得られるスタイルをつくる」。そんな思いを込めてネーミングされた「agree for hair」は、おしゃれな地域密着型サロンです。スタイリスト6名のうち3名がママ。勤務時間は短いけれど、豊富な経験を活かしてサロンを牽引しています。本物のプロだからこそ勤務時間は自己管理、技術の向上は社員と分け隔てなく。そんなスタンスでママの向上心と若手のサポートを引き出し、サロンの業績を伸ばしてきた取り組みについてうかがいました。

1取り組み

ママの退勤時間は決めず、仕事がなければ早めに帰る日も。予約状況も含めて本人に時間管理を任せる。

どんな取り組み?

 現在子育て中のママスタッフは3人ともパートで、保育園が休園する日曜日が休み。勤務時間はオープンから15:00〜16:00ごろ。遅くとも17:00までには全員が退勤している。お客さまの予約状況に合わせて、勤務時間の管理は本人たちに任せており、仕事が終わったときは早めに上がることもある。

背景とメリットは?

 30代以上の主婦層のお客さまが多いサロンなので、平日午前から夕方の忙しい時間帯に集中して仕事ができるママスタッフは大きな戦力。予約状況を本人が把握・管理し、調整も任せることで、ママたちは短い勤務時間に効率よく仕事ができる。早く帰れる日があれば、育児の時間にも余裕が持てる。
 自由な反面、「自分のお客さまがいないと仕事がない」という状況は、プロの美容師にとって良い意味でプレッシャーにもなり、営業努力も欠かせない。また、仕事がないとき自分の判断で帰宅してくれることは、パートを時間給で雇用している経営側にとっても助かる。
 「やはりコミュニケーションが基本。決まりごとで縛るのではなく、自然に互いを思いやる気持ちで動ける関係を大切にしたいと考えています」(オーナー各務さん)。

「働き方に関係なく、同じサロンの仲間として常に接しています」と各務さん(右)。3人の子育てをしながら勤務するスタイリストの須田ともみさん(左)への信頼も厚い

「働き方に関係なく、同じサロンの仲間として常に接しています」と各務さん(右)。3人の子育てをしながら勤務するスタイリストの須田ともみさん(左)への信頼も厚い

2取り組み

2016年から定休日を月・火の週2日に増やし、火曜日の午前中をママの練習時間に設定。

どんな取り組み?

 毎週月曜日のみだったサロンの定休日を、2016年の4月から「月・火」の週2回に増やした。店舗の営業自体は休みだが、毎週火曜日の午前中をパートの練習日として、サロンでレッスンを行っている。

背景とメリットは?

 個店として独立して数年経ったとき、「業務が忙しすぎて、技術やアイデアを吸収する機会がないと、現場が煮詰まってしまう」と感じた各務さん。スタッフがリフレッシュしたり、自ら学ぶ時間を取るために、思い切って定休日を増やす決心をした。「サロンとしてかなりの挑戦」だったそうだが、逆に仕事の効率がアップ。実施以前より客数と単価の両方が上がり、売上も右肩上がりで、今のところ成功を収めている。
 さらにサロンの休みを増やしたことで、火曜日午前の時間をパートの練習時間にあてられるようになった。これにより、夜間練習に参加したくてもできなかったママたちの悩みを解消。毎月4回の練習で、新しい技術や商品知識の習得ができるようになった。 

「子育て中は思うように練習ができず、以前は歯がゆい思いがありましたが、今は毎週時間を取ってもらえたお陰で不安が軽くなりました」と須田さん

「子育て中は思うように練習ができず、以前は歯がゆい思いがありましたが、今は毎週時間を取ってもらえたお陰で不安が軽くなりました」と須田さん

3取り組み

月に1度の全体ミーティングはパートも含めて全員参加。サロンコンセプトの共有を大事にする。

どんな取り組み?

 オープン以来、パートも含めてスタッフが全員参加する、月に1度のミーティングを欠かさず行ってきた。以前は閉店後の夜に開催することがあり、パートは一旦帰宅して子連れで参加していた。定休日が週2日になった今では、営業がない第1月曜日に定着している。

なぜそうした?

 若い正社員と勤務時間が短いパートとの間には、仕事に対する温度差が生まれることがある。一例として、経験豊かなママは接客が上手い強みがある半面、同じ主婦として顧客に近いため、売上につながる新しい提案が弱いところも。丁寧な話し合いを通じて歩み寄ることでお互いに理解が生まれるという。
 昨年から休みが増えた分、休日開催のミーティングの負担感も減り、これまで以上にじっくりと話し合う場ができた。「さらに以前は、営業の決まり事や目標について話し合うことが多かったのですが、だんだん効果が感じられなくなりました。そこで今年からプロならではの、デザインや発想の追求にテーマをシフトしました」と各務さん。毎月のミーティングをサロンのレベルアップに直結させたいと考えている。 

「仕事の守備範囲は違いますが、社員だから、パートだからと差を付ける考え方はしないようにしています」と各務さん

「仕事の守備範囲は違いますが、社員だから、パートだからと差を付ける考え方はしないようにしています」と各務さん

毎年ハロウィンの時期は、スタッフみんなが仮装して営業。サロンの宴会では、ママスタッフはいつも子連れ参加だそう

毎年ハロウィンの時期は、スタッフみんなが仮装して営業。サロンの宴会では、ママスタッフはいつも子連れ参加だそう

オーナーインタビュー

各務健治さんは、愛知県にサロンを展開する大手美容室に入社。勝川店の店長・フランチャイズを経て、5年前に独立した。個店オーナーとなった今も現役スタイリストとして、サロンワークに励んでいる

Q. 個店でママの比率が多く大変だと思いますが、スタッフが協力できている風土の理由は何ですか?

A. 「ママたちに助けてもらっている」という感謝の思いが浸透しているからです。

 3人が子育て中ですから突然の欠勤も避けられず、ときには他のスタッフの助けが必要になります。でもそれに対する不満はないと思います。実は5年前にフランチャイズから独立したときに、不安を感じて半数のスタッフが離職してしまいました。そのとき店を支えてくれたのが彼女たちでした。全員元社員で子どもを産んでパートになっていましたが、勤務時間外にヘルプで来てくれたこともありました。彼女たちはキャリアが長くて接客も上手く、短時間でも頼りになる存在ですから、「ママが来てくれることでサロンが運営できている」という意識は浸透していると思います。

Q. 時間の少ないママスタッフにも、技術向上の場を作る努力をされている理由は?

A. 長い人生を通じて、格好よく憧れられる美容師を目指して欲しいからです。

 彼女たち自身の希望があり、何度も話し合いながら環境を整えてきました。今年は若いスタッフの練習をママたちに見てもらうことも始めています。やはり女性にしか分からない感覚があり、経験を積んだベテランにしか教えられないこともあるので、とても頼りにしています。
 経験豊かなママは固定客もついていますし、その意味で安定した売上を上げることができる存在です。でも美容師である以上は常に新しいものを取り入れて、新規のお客さまを開拓していく努力が大切ではないでしょうか。停滞していれば自分は歳を取り、お客さまも減っていく一方です。
 海外には50、60歳になってもかっこよく、さっそうとした現役のスタイリストがいたりします。女性美容師には、そんな憧れの存在を目指して欲しい。そのためにも美容師人生を長い目で見て、働き方に関わらず今できることで自分を磨いていって欲しいと思います。

Salon Data

agree for hair【アグリー フォー ヘアー】

アクセス
JR中央本線勝川駅から徒歩5分
創業年
2011年
店舗数
1店舗
設備
セット面12席
スタッフ数
8名(スタイリスト6名、アシスタント2名)
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000181787/
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