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女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.92スタッフ18名全員がママ!資格取得を応援し、
実力あるママネイリストを育てるサロンの工夫とは?

パラジェル認定サロン MereMer

埼玉県和光市

和光市でネイルやエステなど、トータルビューティーを提供する「パラジェル認定サロン MereMer」。パラジェルを使用した爪に優しいネイルが評判で、ネイルスクールも併設しています。スタッフはネイリスト、エステティシャン、保育士など総勢18名が在籍。その全員が子育て中のママです。というのも、代表の青江さやかさんがこのサロンを開設した目的は、ママの雇用。働きやすい環境を提供しながら、「趣味ではなく、実力あるネイリスト」を育てることに力を注いでいます。その取り組みと、青江さんが抱くママ支援への熱い想いを取材しました。

1取り組み

サロンの隣室に、ママスタッフのための託児施設を設置。

どんな取り組み?

13畳以上の広さがある託児施設を、サロンの隣室に設けている。保育士は4名在籍し、全員が2人以上の子どもを持つ子育て経験豊富なママ。サロンと同じ日曜定休で、毎日9時30分~14時までスタッフの子どもを預かっている。対象は、0歳児の首が座っている赤ちゃんから幼稚園の年長生まで。利用料はスタッフの勤務形態により異なるが、1時間100円~200円ほど。保育園や幼稚園が休みになる祝日には、ほとんどのスタッフがこの施設を利用している。

背景とメリットは?

青江さんご自身が、小さな子どもを育てながら働く場所を探し回った経験がある。「当時は1人で子育てしていましたが、子どもがいることで面接に通らず、苦労しました。託児所付きのサロンを見つけて無事に働き出すことができ、その後も託児所付きのお店をいくつか転職する中で、ノウハウを学びました。経験から『もっとこうした方がいい』という点も見えてきたので、今の施設に活かしています」(青江さん)。例えば、18時までの預かりは需要が少ないので、開園時間を14時までに短縮するなど。また、認可外保育室として託児施設を事業化することで、収益性を担保している。
子育て中のスタッフが働きやすくなるのはもちろんのこと、休眠ママネイリストからも就職を希望する声が続々と寄せられているという。

待機児童として保育園の入園を希望するスタッフの場合、ここに預けて働いていることが加点になる。「入園希望申請書の記入にも協力しています」と青江さん

待機児童として保育園の入園を希望するスタッフの場合、ここに預けて働いていることが加点になる。「入園希望申請書の記入にも協力しています」と青江さん

サロンには、託児施設の様子がオンタイムで見られるモニターを設置

サロンには、託児施設の様子がオンタイムで見られるモニターを設置

2取り組み

急な欠勤をフォローする、「サポーターネイリスト」の登録制度。

どんな取り組み?

休眠ママネイリストが就職を希望してきた場合、まず面接と技術チェックを実施。十分な技術と実力がある人に限り、相談の上で、「サポーターネイリスト」に登録してもらっている。「サポーターネイリスト」は、人手の足りない日や店のスタッフの急な欠勤をフォローする人材。いつ呼び出しがかかるかは分からないので、都合がつかなければ断ることが可能で、登録解除もできる。「その時のマッチング次第なのですが、『一応待ちます』とおっしゃってくれる方が多く、順番待ちしていただいています」(青江さん)。現在5名が登録しており、この他に「サポーター保育士」も4名待機している。

背景とメリットは?

「高い技術を持っていて働きたい気持ちはあるけれど、子どもがいるからサロンでは働けない、というネイリストは多くいます」と青江さん。「優秀なネイリストをぜひ雇い入れたいし、活躍してもらいたいのですが、うちはすでにスタッフが満員で雇うことができない。そこで、サポーターという制度を採用しました」。
この「サポーターネイリスト」の他、産後4カ月を超えた育休中のスタッフも臨時出勤の待機メンバーで、併設のネイルスクールの生徒もヘルプ要員として控えている。これにより、時間制限の多いママスタッフたちのシフト調整もスムーズに。また、いずれ2店舗目をオープンさせる際の人材確保にもなっている。

「サポーター採用でも、検定に合格していればOKということではありません。十分な技術と実力があるかをしっかり審査してお声掛けしています」と青江さん

「サポーター採用でも、検定に合格していればOKということではありません。十分な技術と実力があるかをしっかり審査してお声掛けしています」と青江さん

3取り組み

スタッフの希望に応じた柔軟な勤務形態。

どんな取り組み?

スタッフのほとんどがパートで、個々の希望に合わせた勤務時間で働ける。例えば、ある程度大きい子どもを3人育てているスタッフは、8時50分~18時のフルタイム勤務。幼稚園や併設の託児施設を利用しているスタッフは、幼稚園のお迎え時間までの出勤が大半。預かり保育や保育園を利用して10時~17時まで働くスタッフもいる。出勤日に関しても、毎月大体の固定曜日はあるが、対応は柔軟だ。1カ月前に出勤希望日を提出し、その中で調整が行われるため、子どもの行事に合わせての休みもとりやすい。

背景とメリットは?

同じママでも、ほどほどに仕事したいという人もいれば、ガツガツ働きたいという人もいる。そのため面接時に、子どもの年齢や希望する働き方をヒアリングし、それに沿う形でのシフト調整を心がけている。
「住んでいる場所も子どもの学校もさまざまなので、行事が被ることも少なく、うまく回っています。こちらに希望日を提出する前に、スタッフ同士で話し合って調整してくれているというのもあるようです。子どもの病気で突然欠勤が出ても、お互いさまという気持ちで誰かが代わりに入ってくれます。さらにサポーター制度もあるので、人が足りず困ることはほとんどありません」(青江さん)。
ママスタッフの出勤が集中するのが午前中だが、お客さまも子育て中のママが多いため、午前中がピークタイムに。必要な時間帯に十分な人数が揃い、バランスがうまくとれているという。

この春、お子さんが小学校に入学したママネイリストの熊谷さん。10時~17時の出勤で、これまでは幼稚園の預かり保育を利用していた。「子どもの成長に合わせて、働き方を変えることも可能です」と青江さん

この春、お子さんが小学校に入学したママネイリストの熊谷さん。10時~17時の出勤で、これまでは幼稚園の預かり保育を利用していた。「子どもの成長に合わせて、働き方を変えることも可能です」と青江さん

4取り組み

スタッフの資格取得を全面的にサポート。

どんな取り組み?

メーカーのインストラクター、エデュケーターなどの資格取得を推進。レッスン代を会社が補助する他、勤務時間内のレッスンも認めている。「特に3人以上の子どもがいるスタッフには、日本ネイリスト協会認定講師の資格を必ず取るように促しています。この2年間で、うちのサロンから3人の認定講師を輩出しました。0歳の子どもを育てながら勉強して、受かったスタッフもいるんですよ」と青江さん。

背景とメリットは?

資格取得により、スタッフがプレーヤー以外の活躍の場を開拓できること。また、やりがいを引き出すことが目的。「さらにスタッフの技術力向上は、お客さまやスクールの生徒さんのためにもなります」(青江さん)。
日本ネイリスト協会認定講師の資格取得に関しても、その想いから推進している。「子どもが多くなると、急な熱や行事などで出動できないタイミングが増えます。そのためネイリストだけではなく、講師としても活躍できるように武器を増やしておくべき。認定講師の資格を取れば、協会の試験官を務める機会も出てきます。その経歴が、スクールで講師をしていく上での強みにもなるので」(青江さん)。

ママネイリストの熊谷さんは、「MereMer」入社後にパラジェルのインストラクター認定テストに合格。「新しい技術を学んで、自分の可能性が広がっていくのが楽しいです」

ママネイリストの熊谷さんは、「MereMer」入社後にパラジェルのインストラクター認定テストに合格。「新しい技術を学んで、自分の可能性が広がっていくのが楽しいです」

代表インタビュー

代表の青江さやかさん。長男を妊娠中にネイルスクールを卒業し、シングルマザーをしながら自由が丘の託児付き美容室にて子連れ勤務を開始する。表参道のまつげネイルサロン、池袋のトータルビューティーサロンなどを経て、2015年3月に「合同会社Bellemere」を設立。同6月に「ネイルサロン&スクールMereMer」をオープン。現在は2児のママ。

Q. 創業から約2年で、就職希望者が押し寄せるほどに。成功の秘訣は何でしょうか?

A. みんなを一人前にしたいという気持ちが、スタッフに届いているからではないでしょうか。

成功しているかどうかは分かりませんが、離職率は非常に低いです。病気による離職が1人と、離婚して実家に帰るための離職が1人という程度。人が減らないので、次のスタッフを入れられない状況です。
私としては、例えばスタッフや生徒さんが「MereMer」から巣立ったとしても、1人で生きていけるところまで育ててあげたいという想いがあります。自分自身が過去に、世間にぽんと放り出されて、1人でやっていかなければならない状況になったので。もしスタッフがそうなった時に、困らない程度のキャリアとノウハウを持たせてあげたい。そのために資格取得や大会参加を促したり、技術チェックやアドバイスもこまめに行っています。ただパートで勤務して、時間内に働いて帰るというのが一般的なネイリストかもしれませんが、「それで今後はどうするの?」と。何が起こるか分かりませんし、何も起こらなかったとしても、いい人生であってほしいのです。せっかくネイリストになったのだから。実際に、離婚して実家に帰ったスタッフは、そこでネイルサロンを立ち上げました。向上心のあるスタッフが多いので、この想いがうまく伝わっているのではないでしょうか。

Q. 女性活躍の取り組みを進めてきて、よかったと思えること。また、今後目指すところを教えてください。

A. ママスタッフの活躍を後押ししたことで、幅広い層のお客さまが通ってくださるサロンになりました。

スタッフに対して力を注ぐことは、結果、お客さまの満足につながると思います。宣伝や内装などにいくらお金をかけても、上手な施術をしないと、お客さまは離れていくものなので。お店にとってスタッフは大事な商品です。力を注げば、それを感じ取って頑張ってくれるし、辞めずに働き続けてくれる。そうやって磨かれたスタッフたちの技術を求めて、お客さまが通い続けてくださる。うちは「ママによる、ママのためのサロン」をコンセプトに運営してきましたが、今では60~70代の主婦の方や男性も来てくださるような、「みんなに優しいサロン」になりました。これも、ママたちの働きやすい環境づくりを進めてきたことの成果だと思います。
また、この取り組みの根本には、「ママネイリスト=趣味」というレッテルを1つずつ壊していきたいという想いがあります。「本当に実力のあるネイリストだけど、ママでもある。すごいね!」と言ってもらえるようになるのが、目指す先です。ママたちに活躍してもらうためには、ちょっとした助けが必要になってくるので、その役割を私が担っていきたいと思っています。

Salon Data

パラジェル認定サロン MereMer

アクセス
東武東上線和光市駅から徒歩3分
創業年
2015年
店舗数
1店舗
設備
6席
スタッフ数
18名
URL
URL:http://www.meremer.com/
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