PEOPLE.01 堀江 貴文
多動力は美容業界にも 活かせるのか?
とはいえ、「石の上にも3年」の価値観で凝り固まった状態にあると、実行するのは容易ではない。 美容業界において多動力を活用するため、まず必要なこととは…?
「仕事が楽しくなり、人生が充実する術」であるという多動力を体現してきた堀江氏の考え方から、しみついた価値観を打ち破るヒントを探りたい。
Profileプロフィール
ほりえ・たかふみ●1972年、福岡県生まれ。東京大学在学中に起業したのを皮切りに、多彩な分野で活躍。現在はスマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュースから宇宙ロケット開発まで幅広く手掛けている。有料メルマガ「堀江貴文のブログでは言えない話」は読者1万数千人規模。2014年8月には会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校」をスタート。
http://horiemon.com/
ひとつのことが出来なかったら、他のことをやっちゃダメなの?
日頃接している美容業界の方に「異業種の方でお話を聞いてみたいのは?」という問いに、最も多くの名前があがったのが堀江さんです。2017年5月に『多動力』を出版されました。美容業界でも『多動力』を活かすために、堀江さんからお話をうかがえたらと考えオファーさせていただきました。
最初に・・・本題とはそれますが、堀江さんはヘアサロンを選ぶ際にこだわりはありますか?特にこだわりはないけど、しいて言うと「腕」ですかね。僕は直毛で扱いが難しいんだけど、いま行っているサロンは、きちんと整えてくれるから。
接客については特に求めるものはないかな。切ってもらっている間はスマホをいじっているので、会話を強いてきたり、うっとおしい人だったりすると嫌ですけどね。
なるほど。いまスマホの話題が出ましたが、『多動力』では会議中にスマホを触ることをとがめる上司を例にあげ、「他人の目を気にしすぎるより、“自分の時間”を生きることが大切」といった主旨のお話がありました。
美容サロンでも、「お客さまのいない空き時間にスマホで店舗ブログなどの更新が出来たら…と考えるものの、仕事中にスマホをさわることに対して否定的な風潮があって実行出来ない」なんて声もあります。「風潮」なんて言い始めたら何も出来なくなってしまう。風潮っていうのはフィクションなんですよ。「相手はこう感じるだろう」と思い込んでスマホが使いづらいと感じるのは、自分自身の気持ちの問題。それに怒られたって気にしなければいい。
風潮に逃げるのではなく、自分自身の問題だと・・・。もうひとつ、貴著『多動力』について。複数のことを同時にこなす「多動力」がこれからの時代は必要であり、ひとつの仕事にこだわらず、いろんな肩書を手に入れることが自分の価値を高める、と説かれています。しかし、ひとつの仕事も極めていない状況で、ほかのやりたいことに目を向けるなんて中途半端なことをしていいのか?周囲に受け入れられるのか?…とも思います。
まず、中途半端だと何でダメなんですか?ひとつのことが出来なかったら、他のことをやっちゃダメなの?
確かに。決めつけた考え方をしていたかもしれません。
いまやっている仕事が、自分には合わなかっただけかもしれない。
周りから受け入れてもらえないかもとか言うけど、受け入れられる必要すらない。
「やりたいことをして、生きたいように生きる」「ストレスをためない」というのは『多動力』にもありましたね。でも、美容サロンのような接客業は、ときに理不尽なお客さまにストレスをためることもあって、難しいと感じます。
理不尽な文句を言う人なんて、お客じゃないと思えばいい。「接客業だし」なんて言い訳をしていたら、前には進まない。
結局は「嫌われたくない」という自分の気持ちのせいでストレスをためているだけです。心理学のアドラーも「すべての悩みは人間関係の悩みである」と言ってますよね。このあたりは岸見一郎さん・古賀史健さんの著書『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)を読めば、全部解決する。ちなみに自分がいる環境に対して「理不尽」と言う人も、「私バカなんです」って自ら言っているようなものです。僕はそういう人に「あなたバカですね」と一度は指摘するけど、それ以上は言わない。時間のムダだから。
嫌なら辞める。好きならやる。
堀江さんがもし、美容サロンを経営するとしたら…。
美容室って面倒だしキツい仕事ですよね。知り合いのサロン経営者からは、「どうしたらホットペッパービューティーを使わないで済むか」なんてよく訊ねられる(笑)。「堀江さんならどうする?」なんて聞かれても、僕がやりたい仕事ではないから、答えようがないよね。
ちなみに美容サロンで働いている人たちは、なぜその仕事を選んだんですか?
「人と話すのが好き」「お客さまに喜んでもらうことが嬉しい」という声は、よく聞きますね。
だったらいいじゃないですか。自分がやりたいことを、やれているんだから。
職業としては好きだけど、美容業は職人のような世界なので修業時代がつらかったり、サロンの上司が厳しかったりといった悩みをもつ方も少なからずいるようです。
その上司やサロンがクソだと思うなら、辞めればいいんじゃない?その人じゃなきゃ、そのサロンじゃなきゃ、ダメですか?
いまどき技術を学ぶ方法はいくらでもあるでしょう。オンラインでもありますよね?
嫌だと思いながら続けるなんて、僕には理解出来ない。
堀江さんだから出来る気がするのですが、自分に自信のない人は…。
「自分に自信がない」は言い訳。「簡単には辞められない」「変えるのは難しい」なんて、みんな結局は言い訳が多いんです。今日の質問も、「でも」「だけど」・・・って、全部言い訳になっているでしょう?
嫌なことをやる必要はない。ただ、「そんなわけにいかない」「自分には無理」「出来ない」は言い訳。言い訳は、もうやめましょう。だって、誰だって、出来るはずだから。
そんな言い訳がましい質問に、禅問答のように繰り返し付き合ってくれた堀江さん。
そして最後に、ストンと腑に落ちました。
この道を選んだのは自分。やるべきこと、この先のことを、決めるのもまた自分であると。
とにかく、ぶれない。とことん、ぶれない。
そんな堀江さんの言葉の力で、視界が開けた思いです。
みなさんは、いかがでしたか?
「やるか、やらないか」。
すべては今この瞬間の“自分”にかかっています。