学ぶ。つながる。発信する。美容の未来を創る場所。
先輩女性インタビュー
長く活躍しているさまざまな女性スタッフに、どんなキャリアを歩んできたのかインタビューしていきます。
自分なりの「なりたい私」を見つけてください!
vol.103
高松市の中心部に位置する「r.e BY KOKOMO」は、大人の女性をターゲットにした癒やしのサロン。アンティーク家具が並ぶ上質な空間でお客さまを迎えるのは、3名の女性スタッフです。そのうちの1名、スタイリストの山地キリコさんは小学1年生の女の子のママ。KOKOMOグループ初のママスタッフで、アシスタント時代に妊娠・出産を経験しました。復帰後は育児をしながら練習に励み、スタイリストデビューを果たしたガッツのある女性です。その山地さんが、お子さんの小学校入学を機に「働き方改革」を実行。パートから業務委託に契約変更することに。決断の背景と、これまでの道のりを取材しました。
Staff Data
山地キリコさん 30歳
スタイリスト。r.e BY KOKOMO(香川県高松市)勤務。
スタイリスト歴3年。既婚。6歳の女の子のママ。
業務委託契約で、定休日と日曜は休み。平日は8:30~14:30、土曜は~16:00の出勤。
★…ターニングポイント
美容師とネイリストの両方に興味を持ち、美容学校へ入学する。先生に「カットが向いている」と褒められ、美容師の道を志すことに。
学生時代からアルバイトをしていた近所の美容室に就職。同年夏に「KOKOMO」へ転職する。個性を尊重してもらえる職場でモチベーションも上がり、アシスタント時代は毎晩2:00頃まで練習に励んだ。
★小学校の同級生で、美容師を目指す同志でもある彼と結婚。2カ月後に妊娠し、つわりで3カ月ほど休職する。体調回復後は雇用形態をパートに変更し、繁忙日限定で出勤。妊娠8カ月目で産休に入る。
出産。夫が「KOKOMO」へ転職する。その話し合いの席で、「子どもを預けられるなら店に出てみたら」とオーナーに声を掛けられ、復帰を具体的に考えるようになる。
1歳2カ月になった子どもが保育所へ入ったタイミングで職場復帰。週5日、10:00~19:00のパート勤務だったが、毎朝8:00に出社して練習に勤しんだ。
スタイリストデビュー。その2週間後に、美容師になることを応援してくれていた伯父が他界。美容師を続けていくことを改めて心に誓う。
小学生になった子どもの帰宅時間に合わせるため、勤務時間を14:30までに変更。「r.e BY KOKOMO」へ移り、自分で開店時間を調整しながら働くように。
より自由に働けるように、パートから業務委託へ契約変更した。
2013年、長女の香詩亜(かしあ)ちゃんが2歳の時に結婚式を挙げた
香詩亜ちゃんが保育園の文集に載せるために書いた「将来の夢」は、美容師。「報われた気持ちになった」と山地さん
毎年恒例の「海の日バーベキュー」には、スタッフの家族も参加している
心身共に追い込まれながらスタイリストを目指していた頃。後になって写真を見返し、自分のやつれた表情に驚いたという
A. 「自分で決めたことだから」と、必死の思いで日々を走っていました。
復帰してからスタイリストになるまでが、美容師人生で一番辛い時期でした。朝7:30に娘を預けて店へ急ぎ、そこから出勤時間である10:00までレッスン。退勤は19:00なので、母に娘を迎えに行ってもらい、朝のうちに作っておいた晩御飯を食べさせてもらっていました。レッスンや家のこと、早くスタイリストにならなければというプレッシャーで、心身ともに余裕はゼロ。夜になっても娘が寝てくれない時は、自分自身の疲れもあって、イライラを爆発させてしまったり…。
でも、「自分で決めたことは責任を持ってやる」というのが会社のスタンスだったので、ここにいる限りは「スタイリストになる」という目標をあきらめたくなかったんです。「やるしかない」という思いで頑張りました。
「『スタイリストになれた』というより、『ならせてもらった』という気持ちが大きかったです」と山地さん
A. 「自分の代わりはいない」という責任感が芽生えました。
新たなスタート地点に立ったことで、身の引き締まる思いがしました。アシスタント時代は私が休んでも、人手があれば誰かに代わってもらうことができたけれど、スタイリストになると自分の代わりはいない。仕事における責任の重さを、一層感じるようになったと思います。
働き方はそれまでとあまり変わっていません。退勤時間は1時間早めましたが、娘のお迎えに間に合わなさそうな日は、母にお願いしていました。娘が急に熱を出した時には、同じ店舗で働いていた夫にお客さまを託すことも。施術中に保育園から呼び出しがあった場合、担当しているお客さまが終わるまで、保育園側が待っていてくれたこともありました。今は別々の店舗に通っていますが、当時、夫が同じ店にいるのは心強かったですね。
妊娠判明時には、店舗に迷惑をかけまいと退職を考えたが、「会いに来てくれるお客さまがいる限りは続けて」と、オーナーの一言で救われた
A. ずっと応援してくれている伯父や伯母、母への感謝の思いです。
高校生の時に父親が他界し、母に負担をかけたくないという思いから、進路に迷った時期があったんです。その時、伯母夫婦が「やりたいことがあるなら、お金のことは気にせずにやったらいいよ」と、美容学校に通わせてくれました。ずっと応援してくれている伯母や伯父、母への感謝があるから、辞めたいと思ったことは一度もないです。
その伯父は、私がスタイリストデビューして2週間も経たない頃に、急に他界してしまいました。当時も仕事と育児の両立で辛い時期でしたが、この出来事を受けて「美容師を続けなければ」と改めて胸に刻んだことを覚えています。
伯父も伯母も、見返りを求めずに助けてくれる人。だから私も、誰かの力になりたい。「出会えてよかった」とか「絶対に辞めないで」と言ってくださるお客さまもいるので、そういう方がひとりでもいる限り、美容師を続けていきたいです。
「r.e BY KOKOMO」のスタイリストは、山地さんと平澤さんの2名。少人数制サロンだからこそ、自由な働き方が叶っている
A. 仕事と育児を両立するのに、丁度よい働き方だと思います。
業務委託契約のきっかけは、オーナーに「娘の学校が終わる時間に仕事を上がらせてほしい」と相談したことです。当時配属されていた「KOKOMO本店」は11:00開店だったので、私が希望する14:30退勤では超時短勤務に。そこでお客さまを受け付ける時間を自分で調整できるようにと、少人数制の「r.e BY KOKOMO」へ異動させてもらいました。開店は10:00ですが、予約がとれればそれ以前から業務開始できるので、1日を有効活用できます。格段に働きやすくなりましたが、娘の学校の用事などでレッスンやミーティングに出られない時もあり、それが負い目に感じられることも。そこでオーナーから、業務委託契約を提案されました。社員とは異なる立場なので、レッスンやミーティングへの出席義務はなく、働く時間もさらに自由になります。娘といる時間を増やせるいい機会だと思い、提案を受け入れました。
まだ業務委託契約になって間もないですが、仕事と育児の両立のためには、いい選択だったと思っています。これまでずっと仕事を優先してきて、娘に対して申し訳ないという気持ちがつきまとっていました。現在の働き方に変えたことで、やっとその罪悪感から解放された気がしています。
アシスタント時代はレッスンが長くて、体力的にも精神的にもしんどいことが多いですよね。途中で辞めてしまうスタッフも多く見てきましたが、それはとてももったいないことだと思います。辛い時には、美容学生時代に頑張ったことや、応援してくれている人たちのこと、これまでの道のりを思い出してほしい。時間もお金もかけてここまでやってきたのだから、今さらスタイリストになれる可能性をゼロにしてしまうのはもったいない。例えば私のように、アシスタントで妊娠したとしても。あきらめなければ、道はあるのではないかと思います。自分に合った道を探し出して、時間がかかっても歩き抜いて、スタイリストになる夢を叶えてほしいです。
Salon Data
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