女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.103ママの働きやすさは人員配置で作る!
個性を生かして活躍できる環境とは?
株式会社KOKOMO
香川県高松市
アンティークな雰囲気が魅力の「r.e BY KOKOMO」やショップとカフェを併設した「KOKOMO」など、個性豊かなヘアサロンを展開する株式会社KOKOMO。磨き上げられた技術と洗練された空間で、高松トップクラスの人気を誇ります。東京にまつげエクステサロンも展開しており、スタッフ約40名のうち7割が女性。6年前にママスタッフ第1号が誕生し、現在はママ2名、妊娠中のスタッフ2名が在籍しています。「女性の多様な働き方を応援していきたい」と話す代表取締役の多田さんに、女性活躍のための工夫を伺いました。
1取り組み
シフトも雇用形態も、スタッフのライフスタイルを尊重して柔軟に対応。
どんな取り組み?
時短勤務の場合、アシスタントは週4~5日出勤を条件としているものの、スタイリストに関しては特に最低基準はない。雇用形態は正社員、パート、業務委託の3タイプがあり、スタッフが自身のライフスタイルに合わせた契約を選べる。ママスタッフ第1号の山地キリコさんは正社員で働いていたが、一時つわりで休職。体調回復後は、繁忙日限定で出勤するパート契約に変更した。産休復帰後もパート勤務を継続し、子どもが小学校に入学すると、子どもの帰宅時間に合わせるために14:30退勤を希望。多田さんの提案で、より自由に働ける業務委託に転向した。
背景とメリットは?
「スタイリストは勤務時間が短くても、その間にしっかり売上を上げてもらえれば、会社として何ら問題はありません」と多田さん。スタッフの希望に合わせていくうちに、雇用形態も拡大。東京以外の店舗では、山地さんが初めて業務委託を選択した。というのも、高松エリアの「KOKOMOグループ」では、アシスタントスタッフを複数サロンで共有しており、繁忙日にはスタイリスト間でアシスタントの取り合いになることも。「フルタイム勤務でも超時短勤務でも同様にアシスタントがつくことに、不公平感を抱くスタッフが出てくるかも知れない。そこで自由が利く分、会社の保護下にはない業務委託という契約にして、社員との間に一線を引いてはどうかと考えました」(多田さん)。時短勤務によりミーティングやレッスンに出られないことに負い目を感じていた山地さんだが、業務委託という立場を得たことで、気持ちも楽になったという。
2取り組み
スタッフの希望条件を受け止め、働きやすい環境へ配属する。
どんな取り組み?
グループ内にはスタッフの協力体制が整った大人数サロンや、シャンプーから仕上げまでを1人のスタイリストが担当する少人数制サロンなど、個性豊かな店舗がそろう。スタッフをどこへ配置するかは、本人の求める働き方に合わせて、多田さんが判断している。例えば山地さんの場合、スタイリストデビューした直後は、人数の多い「KOKOMO」へ配属されていた。パート勤務の限られた時間の中で、髪を切ることに集中できる環境を考慮してのことだ。山地さんが14:30退勤を希望すると、今度は少人数制の「r.e BY KOKOMO」へ。「開店時間は自由にしていい」と伝え、勤務時間は山地さんの裁量次第に。他にも、大人数店舗で他スタッフに気兼ねしていた時短のベテランスタッフを、少人数制の新規店舗へ移してマネージャーにあてがうなど、働きやすい環境を各人に合わせて提供している。
背景とメリットは?
「ただの不満なら聞く耳を持たないが、前向きな希望なら基本的に受け入れる」というのが多田さんのスタンス。スタッフに「自分はこういう働き方がしたい」と言われれば、それを叶えられる環境を用意するのは会社側の仕事だ。「どんな条件を挙げてきたとしても、前向きな希望ならなるべく対応していきたい。スタッフのモチベーションが上がって、店の利益が上がるなら、それに越したことはありませんから。ただし希望を通したからには、責任はもってもらいます」と多田さん。その思いを受けとめたスタッフたちは、「言ったからにはやるべきことをやる」という覚悟を抱いて、自らの仕事に邁進している。
3取り組み
頑張るほどに収入が増える歩合制で
時短スタッフのモチベーションを上げる。
どんな取り組み?
正社員もパートも、給料に歩合制を取り入れている。割合は勤務形態により異なり、基本給プラス売上の10%がつく場合と、基本給なしで売上の28%~が歩合給となる場合の2通り。この制度により、限られた時間しか働けないパートスタッフでも、頑張りに見合った分をしっかり稼ぐことができる。正社員スタッフの中には、月に20~30万円ぐらいを歩合給で稼ぐケースも。
背景とメリットは?
頑張れば頑張るほど稼げる歩合給は、スタッフのモチベーションを維持するために欠かせない制度。特に時給で働くパートスタッフの場合、やりがいへの影響は大きい。「うちはボーナスはほとんどないのですが、歩合給で毎月30万円ぐらい得られれば、1年でなかなかいい金額になります。ボーナスで一挙に支給されるのもいいけれど、月々のやりがいを考えると、毎月入る歩合給がベストではないでしょうか」(多田さん)。
代表取締役インタビュー
- Q. スタッフの意見を尊重する、とても自由な社風を感じました。そうなったのはなぜですか?
-
A. 僕自身が自由な環境で働いてきたからです。
僕は16歳から美容師をやっているのですが、20歳の時、当時勤めていた店が2号店を出すことになり、その店長に任命されました。スタッフは自分とアシスタント2人のみ。20歳という若さで上司がいなくなってしまったんです。それから独立するまでの3年間、一度もオーナーは店に来ませんでした。「売上を上げていればそれでOK」というのが、オーナーの方針だったので。そういう自由な環境で育ってきたため、規定づくりやきっちりした教育が得意ではないのです。
スタッフをマネジメントする上で大事にしているのは、「一人ひとりの個性を消さない」こと。お客さまに対しても、それぞれのスタッフの売りを明確にしていきたい。その子なりの正解を認めて、成功の手助けができる会社でありたいと思います。
- Q. これまでヘアサロン部門にはなかった、業務委託契約を取り入れた理由は?
-
A. 「KOKOMO」ブランドが定着し、多様な働き方を考えられるようになったからです。
「KOKOMO本店」をオープンしてから14年ほど経ちます。これまで一貫してブランドの確立にこだわってきたので、スタッフは全員、アシスタントから教育していました。契約形態は正社員とパートのみ。「一体感を出したい」という思いから、働き方も多様にはしたくなかったのです。2015年に高松屈指のオフィス街に自社ビルを構えることが叶い、「KOKOMO」ブランドもついに定着。店舗数も増えたので、それぞれの色分けができるようになりました。そうなると、働き方についても視野が広がるように。東京のまつげエクステサロンで業務委託を取り入れたところ、希望するスタッフがかなり多かったんです。完全歩合制のようなものなので、みんな売上を上げることに熱心で、それは会社にとってもメリットだと思いました。
その学びから、ヘアサロン部門でも実力のあるスタッフに声を掛けて、現在2名が業務委託で働いています。彼女たちの働き方に共感できたなら、他のスタッフもそれに続けばいい。美容師は自立していないとできない仕事だと思うので、彼女たちを守るというよりは、自立する環境をつくってあげたいと考えています。
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